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むるめ辞典

■爆発

[読]ばくはつ

爆ぜる発

[例文]
昔の手帳に書き込まれた古い約束が、果たされる見込みのないまま気掛かりにかわって心を刺し続けるので彼女のことをいつまでも忘れられないでいる。

一人暮らしを始めた私のところにやってきた彼女を、ほとんど騙すような形で終電をやり過ごさせて家に泊めた。

カーテンからわずかに漏れた明かりが彼女の起きている気配を浮かび上がらせた気がして、私は何も言わずに彼女の布団に潜り込み彼女の頭の下に腕を入れて細い身体を引き寄せた。

私はそれでも何も言わなかった。心臓は爆発寸前で、こんな重圧に耐えられるようにできていないのだ。口を開くとうまく呼吸ができずに声が震える気がした。衣擦れの音と心臓の音は布団の中で反響して鳴り止まなかった。

彼女は上を向いたまま「私のこと、どう思ってるの」と聞いた。友達の彼女だったあなたがほしくて私は5年待ったのだ、と言ってしまいたかったけど「たぶんこれから好きになっていくと思う」と言った。

爆発する恐れがあるから本当のことなんて言わないのだ。「なにそれ」と彼女は鼻で笑ってこっちに身体を預けるように布団の中で丸くなった。

それで付き合っている間もなにであれ彼女に本当のことを言わなかった。私が彼女の目の動きや白い肌の終わる指先がどんなに好きだったか伝えなかった。

サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。