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むるめ辞典
■蠱惑
[読]こわく
蠱う惑
[例文]
背の低い黒髪のショートカットの女の子と付き合うことになった。クセがついた髪の毛をいつも気にしている娘だった。
彼女はある日、鼻の脇にあるホクロが特徴的な友達をうちに連れて来た。リビングのソファに座って二人はヒソヒソと内緒話を始めた。私が何か話しかけても二人は顔を見合わせて笑うだけだった。
私は彼女たちの方に足を投げ出して椅子に座り、その様子をじっと見ていた。腹が立っていたわけではないけど、次第にからかわれているのが億劫になってきた。
それで台所から包丁を持ち出して、少し驚かせてやろうと思い立った。
リビングに戻ると二人はキスをしていた。目を閉じた彼女の、化粧を引いた瞼の黒い線が濃くはっきりと見えて、手の中の包丁がズシリと重くなった気がした。
キスをしながら髪の毛のクセをなおしている彼女の指の動きが、こっちにおいでと手招きしているようにみえた。
それで私はソファにゆっくりと近づいた。
サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。