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オーストリアから学ぶ生き方|後編

オーストリア旅行で気づいた文化の違いなどをまとめた本シリーズ。今回は哲学編をお送りする。島国で独自の文化を築き上げてきた日本とさまざまな国が隣接するオーストリアでは、生き方が随分と違うように見えた。

もう少し肩の力を抜いて生きられたら…そんな方へのエッセンスになればと思う。


1) 休む時はきちんと休む

オーストリアにコンビニはない。そのため、スーパーがコンビニのように街中にある。
しかし、24時間も営業していない。サマータイムだと7時ごろに開店し、19時には閉まってしまう。他にもレストランやショッピングセンターは日曜、祝日がお休みのところがある。
宿泊先のホテルでは11時までに部屋を出れば清掃してくれるシステムだったが、清掃員が9時に「掃除してもいい?」と部屋を尋ねてきた。いささか早すぎる。
ホテルの向かいがオフィスになっていたので、宿泊中に観察していると朝の6時半には電気が点いていた。「朝から頑張るなぁ」と感心していたら、夕方には消えていた。
さっさと働いて、とっとと帰るのがウィーンスタイルのようだ。そして、日曜や祝日は街全体がお休みだ。みんなきちんと休みましょうね、というメッセージが日本人のわたしには刺さった。

2) 言われたら直せばよい精神

日本に比べるといい意味で少々ガサツだ。
機内食が配膳され、CAさんにコップが足りないことを伝えると「分かってるよ!」と強めの口調で返事をされる。スーパーのレジでは、スキャンした商品を店員さんがポイポイと投げていく。悪気は一切ない。
なんなら、暇そうなレジに商品を持っていくと「wait」と言われ、暇つぶしに触っていたであろうスマホの操作が終わるまで待たされた。
他にも、部屋の掃除がされていない日があり、フロントに伝えると「I’m sorry」ではなく「そういうこともあるよね」という感じだった。
(仕方ないので、この日はタオル交換をお願いした。すぐ部屋まで持ってきてくれた)
この国では任された仕事はきちんとやるから、あとは自由に働くというスタイルのようだ。
日本は、なにかとサービス精神で働きすぎる。そして、高クオリティを標準にしてどんどん首を絞めていく。おまけに、お互いの様子を伺いすぎる。
わたしは、ウィーンスタイルのドライな接客やサービスでも嫌な感じは受けなかった。日本ももっとドライに働いた方がいいと感じた。

3) レストランの接客が丁寧

意外なことに日本よりも接客がとても丁寧だった。
基本的にはノーセルフサービスだ。つまり、店員さんが客席に気を配っていろいろと面倒を見てくれる。
入店時に元気よく「Hello」と挨拶し、気に入った席に座る。日本のように席まで案内してくれるのは稀だった。待っているとメニューを持ってきてくれる。注文が決まったら、店員さんがくるのをひたすら待つ。
日本と違って店員さんを呼ぶベルもなければ、「すみませーん!」と大声で手を挙げて呼ぶ人もいない。日本の飲食店だと、お店が忙しそうで声をかけるタイミングを計るのに気疲れしてしまうが、その心配がなかった。急いで食事をするというよりは、ゆっくりと時間をかけて楽しむ文化のようだ。
食事中は店員さんが「Everything is OK?(他に注文ある?大丈夫?)」や日本語で「オイシイ?」とつねにコミュニケーションを取って気にかけてくれる。
食べ終わったら、「ツァーレン・ビッテ(お会計をお願いします)」と現地の言葉で伝えると「Perfect!(ドイツ語上手)」と笑顔で褒めてくれる方もいた。
量が多すぎて食べきれない時は「ごめんなさい。お持ち帰りできますか?」と伝えると、「気にしないで」と弁当箱と紙袋を持ってきてくれるくらい丁寧だった。
逆に現地で日本文化を紹介する本を見ていたら、日本の接客はロボットだと書かれていた。笑

4) 友だちみたいに優しい

困っている人がいたら、率先して助けるという印象を受けた。日本人のわたしは、どことなく他人行儀で様子を伺いながら手を差し伸べてしまう。でも、オーストリアの方々は周りを気にせず、自身の善意で行動して助けているようだった。
レストランで困ったことがあれば「May I help you?」と言って説明してくれるし、公衆トイレの有料制度が分からない観光客の方へは、たまたま居合わせた現地の方が英語で説明してあげていた。
田舎の方まで行くと、目が合えば見ず知らずの方がフランクに「Hello」と挨拶してくれる。電車で向い合わせに座ったカップルに話しかけられたり、たまたまエレベーターで一緒になった方に声をかけられたり、かなりオープンな性格だ。
ホテルを出て、道がわからずキョロキョロしていると知らない人が地図をサッと差し出して「For you」とくれた。しかも、相手もヨーロッパ人の観光客だった。
ナチュラルに「Enjoy」「Have a nice day」と言ってくれるので、これは根暗のわたしも自然と明るくなっていった。ニコニコと笑顔でいる方が多く、目が合えば無償でニコッと笑顔を返してくれる人が多かった。

5) 犬は家族同然

オーストリアの方々は、とても大きい犬を連れている。小型犬は見なかった。
家族同然のように電車やスーパー、飲食店などに犬を連れてくる。ウィーン市内を走るトラム(路面電車)やスーパーには、リードをつけておく場所があるくらいだ。
公共の交通機関では、口輪やマナーパンツを履いて周りに配慮し、犬はおとなしくしていた。しつけがきちんとされているのか、吠えまくる犬は少なかった。
また、日本のように服を着させている人はおらず、のびのびと育てているようだった。
オーストリアは動物愛護先進国で、どこへいくにも犬と一緒に行動していた。
連れている犬が可愛くてわたしがニコニコとしていると、主人の方もニコッと笑顔を返してくれる街だ。

6) ホームレスが多い

7泊9日の旅で5人のホームレスを見た。紙コップを持って歩いていたり、道や駅に座り込んだりしていた。目が合うと「お金をちょうだい」を笑顔で話しかけてくる。
ただ、中には綺麗な服装で清潔な方もいた。調べてみるとホームレスのふりをしてお金を集めている人がいること分かり、注意が必要だと知った。
オーストリアの失業率は5.6%、一方で日本は2.7%だ。また、合法で薬物が認められていることがあり、薬物依存に陥りやすいのかもと思った。
少し哲学的な話とは逸れてしまったが、わたしたち観光客にできるのは、サービスがすばらしいお店にはチップを支払って支援することだ。あとは日本に帰ったら、ビッグイシューを買ってみようかなと思った。

日本に帰国してから、わたしたち日本人は生き急ぎすぎだと感じた。食事や睡眠の時間を削って働くことが、人生でよいのだろうか。
人生の意味を調べると”人がこの世で生きていくということ”と書かれていた。そんな他人事のような言葉ではなく、たったひとつの物語として日々を紡いでいくことが、人生の本当の意味だと思った。

もっと肩の力を抜いてこれからの物語を謳歌しようではないか。
そして、オーストリアの方々のように目が合えば、ニコッと笑顔を返せる素敵な人になりたい。


番外編

先日、渋谷駅を歩いていたら外国人の男性と女性がなにやら困っている様子だった。どうやら道が分からないらしい。
英語が話せないわたしに、ウィーンの方々はあの手この手でコミュニケーションを取って色々と助けてくれた。だから、わたしも日本で困っている海外の観光客の方を見つけたら声をかけると決めていた。

勇気を振り絞って「May I help you?」と声をかけた。緊張したけれど、案外大丈夫だった。つたない英語で色々とお話しながら、ハチ公口まで案内した。帰りには何度も「Thank you」と言われた。

“助けたい”という気持ちがあれば、言葉は必要ないんだと思った。

わたしが「Japanese people are very shy(日本人はとてもシャイです)」と伝えると、彼らが元気よく「Yes」と答えるものだから可笑しくて笑ってしまった。
You think so?


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