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日南本倶生(みゅんひはうぜん)
2019年1月3日 10:11
39日目か? もういやだ。まだ階段が続いている。 最後の圧縮水分は昨日平らげてしまった。渇きと空腹に勝てなかった。 一体いつまで続くんだ。コムログもゲインに切り替えてしまって、表示が見えないから時間も計れない。ケミカルライトもケチりケチり使っているが、これが最後の一本だ。 明かりが無くなったらどうすればいいんだ・・・今から上に戻ったって、もう遅い。それに、上がったところで、待ってい
2019年1月7日 09:41
何日目かはもう分からないし、どうでもいい。そんなことより、記録だ。最後の記録を。底は、あった。今私は底にいる。 死の淵に立つ私には、この驚くべき光景に感動している余裕などあまり無い。だが、この場所がちっぽけな私の最期を飾るには、身に余る絶景であることは、おそらく間違いあるまい。 その時が来る前に、ここにたどり着くまでの経緯を記録しておこう。先の激しい地震の最中、私は激しく壁に叩きつ
2019年1月10日 09:56
49日目 昨日コムログを見つけた。電池は満タンになっており、ゲインからフルに切り替えても問題なさそうだった。早速タイマーを確認すると、どうやら48日目のようだったから、あの時が何日目だったかは正確には分からないが、おそらく意識が戻ってから1週間ほど経過しているのだろう。 最初に目覚めた時、私を心配そうに覗き込んでいたノーラの表情を、私は今でも鮮明に覚えている。昔と同じ、普段顔でもなんだか
2019年1月14日 21:07
60日目 久々の記録だ。だが、これと言って記録することも思いつかないのだが。今回記録をする気になったのは、ベッドの下にあった私の薄汚れたしみだらけのバックパック(これでもかなり頑張って洗ったのだが)の中から、ごろんとこの古き悪しき相棒が転がり出てきたとき、退屈しのぎにと何となく手を伸ばしたのがきっかけだった。ただそれだけのことだ。 前回記録してからの生活は、それほど驚きに値する出来事もなく
2019年1月17日 09:28
68日目 考えたくはないことなのだが、私が今体験しているこの世界とは、一体何なのだろうか。この素朴な疑問について、私はノーラに直接尋ねてみたことがある。だが、彼女もこの件については全く知らない様子で、私が目覚める以前のことも、全く分からないようだった。ただ彼女には、自分が一度死んでしまったという認識はあるようで、だから彼女いわく、ここは死後の世界なのではないか、とのことだった。なんとも
2019年1月21日 09:45
《外部からの干渉検出:最優先》 ・・・【自動記録開始】「そうかあんたが。」 「前任者って呼ばれてるんだろ俺? ハハ、何を任されたのやらね。」 「ああ、ポトロってやつだ。・・・大役だったろ?」 「いやいや、そうでもないさ。ただ横になってただけだ。」 「で、何であんたがここにいるんだ?」 「まあ、せっつくなよ。順番に話そう。」 「待ってくれ。コムログに会話を記録させてもらう。」
2019年1月24日 11:32
75日目 あと1週間しかない。あと1カーマ以内に、私がその身の振り方を決めてしまわなければ、この楽園はノーラともども、跡形もなく消滅してしまう。 もう完全にチェックメイトといえる。これだけの条件を揃えられたら、私の取り得る選択肢など、実質一つしかないではないか。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆やがて起こる小惑星の衝突により、この海の惑星に新しく大陸が生まれたタイミングで、冷凍保存
2019年1月29日 02:26
83日目(回収予定日) 記録には『回収予定日』と残るだろうが、私が回収されることはない。 当初の予定では、この星に到着後すぐに、私は地球からの特使としてロヌーヌとの謁見を済ませ、地球圏との交流開始について会談した後、地球との相互ゲートを開くようサバラバ側に要請し、地球時間で3ヶ月間(サバラバでの1ロイロ4カーマ5ガインと半分)の実地調査を経て、私は無事帰還し、今度はその3ヶ月間で用意された
2019年1月31日 17:25
1702626262505日目 日没から2時間余りが経過した。黄色の月「ポソポ」は新月なのだが、残りの2つの月が両方とも満月、という珍しい暦の為に、今夜はかなり明るくなるはずであった。やがて、地平線の向こう側から、ゆっくりと赤色の月「クリナリ」が昇り、はるか衛星から放たれるその緋色の光が、すでに天頂にある銀色の月「コントロ」の白銀色の光と混ざり合い融合し、街を薫り高い葡萄酒のような色合いに染