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【連載終了】聖ポトロの彷徨

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『前任者の書』に記されし楽園「サバラバ」にやってきた一人の科学者が、なぜか無人の荒野と化したサバラバの謎に迫ります。容赦なく照り付ける灼熱の太陽、じわじわと迫る飢えの危機を超えた… もっと読む
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2018年12月の記事一覧

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第7回)

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第7回)

17日目

果てしない荒野を、とぼとぼとひたすら歩いた。

どこまで行っても全く同じ景色が広がっている・・・地球よりも少し濃い青の空、ぎらぎらと照りつける太陽、赤茶色の乾燥した大地。

だが、夜になってしまえば、昼の暑さは少しずつ和らぎ、そして美しい星空が見えてくる。
星座については残念ながら門外漢なので、どのあたりが地球なのかとか、どの星が地球から見た何座のどれだとかいうことは全く分からないが

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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第8回)

26日目

どうにか平静を保ててはいるが、以前から薄々感づいていた問題がついに表面化しつつある。それは、ずばり食糧問題である。

圧縮水分が圧倒的に足りない。
そもそも、起こらないはずの「いざという時」の為の装備であった為、任務完了までの3ヶ月間まるまるの分は、携行しなかった。まず使うこともあるまいと誰もが思っていたのだろう。私も出発前にはざっとしか数を数えなかったし、そもそも1個も必要ないと

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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第9回)

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第9回)

27日目

ここのところ、発見する集落の跡に建造物が残っている場所はまれだ。井戸の跡すらないような場所ばかりに出会う。

しかし集落の跡が点在する数を考えると、やはりかつてこの土地に、たくさんの人が暮らしていたことだけは、確かなようだ。

だが、彼らは死体一つ残さずに、一体何処へ消えてしまったのか。これだけ崩壊が進んでいるということは、人がいなくなった後に、相当の時間が経

うわあああぁぁぁ!

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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第10回)

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第10回)

27日目(再)

夜になって、ようやく地震はひと段落したようだが、たびたび起こる余震に未だ予断を許さない状態が続いている。

地震というものは、地球ではせいぜい数分間程度のものであるはずだ。しかし、今日体験した地震は私が知りうる限り最大の地震であった。

最初に激しく地面が縦揺れし、それからしばらく後に大きな横揺れが起こるのが地震というものの特徴なのだが、今回の地震は一体なんだったのか。いき

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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第11回)

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第11回)

28日目

地震に警戒しながら探索を進めることにする。

ここから先、山がちな地形が多いようだが、前任者の本にある記述と照らし合わせると、もしかするとこれは人工知能ロヌーヌのある、山奥の場所が近いことを示しているのかもしれない。
山がちと言っても、もちろん植物の生い茂った緑濃き山並みではなく、土と砂と石のハゲ山ばかりなのだが。

そういったハゲ山をいくつか越えることができたところで、もうあたり

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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第12回)

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第12回)

32日目

なんということだ・・・ああ、なんということだ。

この光景を初めて目にした時の私の気持ちを、どうやって説明しよう。
映画などであれば、激しく泣き叫んだり、ひざを折って地面に倒れ伏したりすれば観客に伝わるのかもしれないが、あいにくこれは現実に起こっている事態であるし、また私がそういった醜態を実行したところで、誰も見てはくれないし、記録にも残らない。
この時の気持ちを巧く言葉に変換する

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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第13回)

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第13回)

33日目

ようやく「ロヌーヌ遺構」の袂まで辿り着いた。この距離からだと、遠くから見た時よりもずっと大きく感じられる。

この感覚を他の何かに例えるのは難しいが、世界最大級と名高いマカロニ型の半海上人工都市「タウファアハウ」の外観を初めて目にしたときの驚きに似ているかもしれない。いや、眼前のこれは、もちろんあれほど壮大なものでも広大なものでもないのだが、一つの巨大な人工物、という点において両者の

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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第14回)

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第14回)

34日目

大きな揺れを感じて飛び起きた。
前回よりもさらに激しい揺れの中、半分しか目覚めていない脳を頼りに、必至に何か(何だったのかはもう分からない)にしがみついた。
今回のは地震というよりは、むしろ乗り物から振り落とされようとしているかのような激しさで、一度ならず地面ががくがくと傾くのを見たような気がした。強烈に隆起したり、陥没したりを繰り返していたかのようだった。
揺れ始めから程なくして、

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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第15回)

【連載小説】聖ポトロの彷徨(第15回)

36日目

階段を降り始めてから、まるまる二日ほど経過している。そして私はまだ階段を下り続けている。

距離にしてどのくらい降りたのかは、もう分からない。とにかくどんどん下へ向かって階段を降り続けている。途中に踊り場や休憩所などはない。ましてや、何かの部屋の入り口や外への出口などもない。ただ延々と階段が続いているのだ。しかも、全く明かりのない階段が。
入り口はすでにはるか上のほうになってしまい

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