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2023年2月の記事一覧
story I am an Apartment
ここには幾人かの住人が住んでいる
少年だったり所在の知れぬ男だったり
長期間不在の旅人もいる
夕暮れになるとふらりと酒場へ
出かける女や
世間などまるで関係ないといった
ような老人
その他にも姿はなく気配だけのものが
いたりと
大そうおかしなApartmentである
それらの住人がいつから住み着いたものか
管理人の方は全く頓着せず
むしろ楽しんでいるようである
気になりますか?
このApartm
story この手紙を書いた人
知人の誘いで訪れた教会
婦人が席で聖書を読んでいる
私ね、この手紙は八十を過ぎた人間の言葉だと思うの
独り言のように私に語りかけた
若い頃は分からなかった
けれどこうして読み返してみて思ったの
これは年をとった者の言葉だって
年をとらなければ書けない手紙だって
婦人はどこか嬉しそうだった
大切な何かを見つけたのかもしれない
この日のことを私は何度も思い出す
いつか私もあの婦人のように
story 招福万来
何をされているんですか?
あ、いやね、笑う練習ですよ
はあ・・・
おかしいですか?
え、いや・・・その・・・
仕事でして
職業柄笑ってないといけないもんで
暇さえあれば
こうして笑っているんですよ
御職業ですか・・・
ええ
どうです、ご一緒に
え・・・
騙されたと思って、ほら
あははははははははは
ほら、あなたも
あははははははははは
あ、あは、あはは・・あははは・・・
そ
story モールスと彗星
モールスが途絶える
おい、軌道を外れるな
箒星が先陣を切って流れて行く
後続は荒くれ者の流星群
双子座のあたりを
いくつもの流線型が
先を競うように落ちていく
もう空がだいぶ回った
船首を上げろ
舵を取れ
モールスが激しく飛び交う
それらは大気に吸い込まれ
刹那の光を散らして消えゆく
儚いもんだ…
モールスはいつしか
弔いの音を響かせていた
story ホットケーキ
ばぁばがホットケーキを
焼いています
あーちゃんは台所の
テーブルに座って
足をぶらぶらさせながら
ホットケーキが焼けるのを
待っていました
それで、どうだった?
くらべっこ
ばぁばが背中を
向けたまま
ききました
うん…
さやちゃんの方が
足が早かった
そう
そう…
あーちゃんは少し
ほっぺをぷーっと
ふくらました
さやちゃんは足が早いの
たっくんは絵がじょうずだし
それからまい
story なんてことないこと
目の前のことに一生懸命になって
あれこれ忙しくしているボクを見て
君はただ鼻歌を歌ってる
それで熱っぽくボクが語ると
なんてことないことだよ
と、君は言う
ボクはそのなんてことないことに
今日も一生懸命になって
あっちへ走り
こっちへ走り
あげく振り出しへ戻るなんてことも
そんなこんなで
汗をかいてはホッとして
また同じように繰り返す
君はねこじゃらしをクルクルしながら
ひとりごとみたいに