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story なんてことないこと

目の前のことに一生懸命になって
あれこれ忙しくしているボクを見て
君はただ鼻歌を歌ってる

それで熱っぽくボクが語ると
なんてことないことだよ
と、君は言う

ボクはそのなんてことないことに
今日も一生懸命になって
あっちへ走り
こっちへ走り
あげく振り出しへ戻るなんてことも

そんなこんなで
汗をかいてはホッとして
また同じように繰り返す

君はねこじゃらしをクルクルしながら
ひとりごとみたいに
虫眼鏡を持って
もう見つけているのに
まだ見つけていないと思って
歩き回っているようなもんだ
灯台下暗しっていうだろ
って言う

だけどボクは
その虫眼鏡で探しているものの中に
時々キラキラした
宝石の粒みたいなものを
感じる時があるんだ

あったかい何か

はっきり分からなくても
そういうことがあるから
ボクは今日も
あっちへ走り
こっちへ走り
しているのかもしれない

そういうと君は
また鼻歌を歌って
まるで日向ぼっこしている
ネコみたいに細い目で
ボクを見ながら
何にも言わずに
ニンヤリと笑うんだ


ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。