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story 招福万来


何をされているんですか?

あ、いやね、笑う練習ですよ

はあ・・・

おかしいですか?

え、いや・・・その・・・


仕事でして
職業柄笑ってないといけないもんで
暇さえあれば
こうして笑っているんですよ

御職業ですか・・・

ええ
どうです、ご一緒に

え・・・

騙されたと思って、ほら
あははははははははは

ほら、あなたも
あははははははははは

あ、あは、あはは・・あははは・・・

そうそう
あははははははははは

どうです?
悪く無いでしょう!
あははははははははは

あははははははははは!

これはこれは!

なんだか楽しくなって来ましたよ
あははははははははは!

その調子、その調子

あははははははははは!

いやぁ、
実に良い笑いをされる!

そうですか・・・
いや、久しぶりに笑いましたよ
体までポカポカしてきました
実はさっきまで
ひどく落ち込んでいたんですが
何に悩んでいたのか
もう忘れてしまいました
ありがとうございます!

あ、ところで
あなたは・・・

あれ・・・・・あ!

いやはや、まいったな
神様だったか・・・


気づけばそこは門前町
男が立っていたのは
招福万来と書かれた
札の前だった





ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。