マガジンのカバー画像

シュールな短編小説

337
ファンタジー、そして時にはシュールな短編集。
運営しているクリエイター

2020年11月の記事一覧

恐怖のピンク・ファッション

 わたしは膝を抱えて座っていた。カーテンを引き、テレビもラジオもない、がらんとした部屋で…

むぅにぃ
3年前
1

天気予定局でバイト

 友人の桑田孝夫とは、旅先の沖縄でいったん別れる。それぞれ、船で行きたい島へと渡ることに…

むぅにぃ
3年前
1

電車、電車、電車……

 黄色い電車の上りに乗らなくてはならなかった。 「ホームは反対側か。ちょっと、遠いなぁ」…

むぅにぃ
3年前

山の上の博物館

 えっちら、おっちら山を登っていくと、林の向こうにレンガ色をした大きな建物が見えてきた。…

むぅにぃ
3年前

紫の壷

「こんなものしかないけど」カップ入りケーキとサイダーを持って、部屋に戻る。桑田はクッショ…

むぅにぃ
3年前
1

おくのうら道

 防衛省が秘密裏に「水・爆弾」を開発した。炸裂すると、周囲数百キロ四方が湿度100%になっ…

むぅにぃ
3年前
1

夜の公園で

 昼のうち降った雨がまだ引かず、町中、どこもかしこも水浸しだ。歩道ですら、人のくるぶしまで溢れている。  おろしたてのレイン・ブーツを履いて、わたしは近くの公園まで行ってみた。  深夜の公園は人気もなく、ときおり吹く風に煽られ、枝葉のこすれる音だけが聞こえてくる。  碁盤の目のように作られた遊歩道を、ただひたすらに歩いた。ざぶざぶと水をかき分けて進むのは心地よい。真っ黒な水が、水銀燈の光を受けてぬらぬらと揺らめく。  屈んで、手を水に浸してみた。冷たくて、とても気持ちがい

通勤ハンバーグ

 新宿で乗り換えようとすると、どういうわけだか必ず迷子になる。埼京線乗り場を探し求め、さ…

むぅにぃ
3年前
1

干物男を発見する

 公園の木陰でソフトクリームを食べていると、ツーッと大きなクモが降りてきた。 「ふふっ、…

むぅにぃ
3年前
7

自販機として生きる

 兄も兄だ。何も、自分が飲むお金で買ってやることもないのに。第一、そのコーヒーを本当に飲…

むぅにぃ
3年前
2

蚤の楽団

 南極で世界最小の楽譜が発見された。サンプリングした氷分析していたところ、米粒大の印刷物…

むぅにぃ
3年前
1

ふうがわりなサイン会

 友達の志茂田ともるは、ああ見えてけっこうミーハーだ。 「どうか、お願いしますよ、むぅに…

むぅにぃ
3年前
1

天かける大橋

 日本道路公団とNASAが共同事業を始める、という大ニュースが世界中を駆け巡った。  道…

むぅにぃ
3年前
1

西部の酒場にて

 ここは荒野。閑散とした町の、とある小さな酒場だ。友人の桑田孝夫と並んで、止まり木に足を載せている。 「スコッチ」桑田がオーダーする。マスターは黙ってグラスに酒を注ぎ、カウンターにたんっと置いた。 「えーと、何にしようかな」メニューはないかと、わたしは店の中を見回す。そんな気の利いたものなどなかった。  カウンターの上を、ツーッとグラスが滑ってくる。 「こいつを飲んでみな、うまいぞ」離れた席に座っていた男からの奢りだ。「ワイルドターキーだ」 「ありがとう」わたしは礼を言って