【リカレント教育】第1報 企業研究員のキャリア選択『社会人ドクター』

「学んできたことでお金を稼いでみたい」の、次が見つからない


夢中で学んできたことがお金になるのだろうか。

フラスコの中の合成物を解析しながら、これがお金になるのなら、それで稼いでみたいと思い、今の仕事を選んだ。

お金に厳しいといわれてきた性格も影響した。

時間とお金を費やして習得した学問を、世の中にとって良いと思う使い方をすることで、それまでにかかったお金を回収しようという魂胆もチラついていた。

それが、学生までの自分に賭けてくれた、大人たちに還元する方法なのかもしれないと、ほんの少しだけ、心の片隅に希望を持っていた。


しかし、入社から数年が経過した頃、現状に倦怠感を覚えるようになった。

その頃はというと、顧客要求に応じて製品を設計・改良する技術も知恵も身に付いており、関係部署との会議や、国内外の顧客訪問に技術担当者として呼ばれるようになっていた。

所謂、役職やリーダーの一歩手前の段階である。

実験で手を動かす時間が減り、担当者として論理的説明を求められる機会がグッと増え、その場その場で素早く、適切な判断が求められる状態が続いていた。

しかし、案件ごとに繰り返される状況や人間関係に"慣れ"が生まれ、同じようなロジックで対処してしまっている自分に「それでいいの?」と自問自答する日々でもあった。


次に何をしたいのか分からないのなら、いま取り組んでいることを突き詰めてみよう


そんな時、身近に、英語を猛勉強して退職後に私費で留学した先輩、週末に大学院に通ってMBAを取得した上司がいた。

彼らのように、次の目標を見つけて邁進したいと、羨ましくも悔しくも複雑な心境に陥っていたが、具体的に何をしたいのかが分からず、悶々と考えていた。

それでも、一つ解決したら、次の課題が湧いて出てくる日々を、なんとか、時には惰性で過ごしていた。

都度都度、仮説を立てて実験を組み、一気に取り組んでデータを取得し、何が原因でどうすればいいのかを論理立て、検証実験を繰り返し、解決策を打ち出す。

それを社内で議論し、顧客へ提案する。

顧客から、「上手くいったので、次のステップに進む」という返答があれば安堵し、ダメならまた始めから考える。

ある意味で、心身共に夢中になれる時間を過ごしていた。

私にとっての報酬は、その間に得られた知見や知識が実践経験として確実に身につくことであり、自分の成長を実感できた瞬間は、大変満たされた気持ちになった。

けれども、今の仕事はこの先ずっと携わっていきたいと思えるような、「好き」なことなのだろうか。

ふと、“それが分からないから次が見つからないと思い込んでいて、身動きが取れないのではないのだろうか”、という考えに至った。

それなら、いま取り組んでいることをとことん突き詰めて、振り返った時にどう思うか、それを検証してみよう。

これが、社会人博士課程に進学するキッカケになった。

以上

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