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二十歳の夜。22

気がついたらもう、二十歳になっていた。
そう。もう二年間も遊び呆けたことになる。

家が金持ちだから生きれていたし、働くことを強制してこない家庭だから、大いに甘えて過ごした。

いつものように暇つぶし。

愛子から連絡。
「阿波踊りに行きましょう!」
「ああ、いいよ」


向かったのは一度もその地に足をつけたことのない高円寺。


高円寺というのは、銀杏BOYZってアーティストの聖地らしく、愛子と出会った頃に聴いていた記憶が蘇ってきて、今日この逃避行で、ケジメをつけて、絵に専念しよう。絵じゃなくてもいい。もう、だらけるのはやめようと心の中で誓った後に、阿波踊りに参加して、音楽のリズムに合わせて身体を動かした。

そこのお兄さん、ちょっと寄ってかない?

誘われるがままに、僕はスタスタとお姉さんのもとへついて行くと、そこは誰かの部屋のような一室。

「はーい、では今回の命題は港区女子になったつもりで読む俳句!」
聞こえてきた内容で、何だか俳句を読む教室みたいな場所に誘われたらしい。

古池や蛙飛び込む水の音

松尾芭蕉の俳句を思い出した。
どんな意味か、どんな季節か、どんな風景か、そんなことを学校の授業でやったのは覚えているが俳句を詠むこと自体はやったことがない。

「おい、君、酒は飲めるかい、飲み放題だからたくさん飲めな。」

教室にいたおじさんが酒を酌んでくれる。
飲む。俳句を詠む。飲む。詠む。飲む。気がつくと外は明るみ、何だかわからない世界に踏み入れたことに気がついて、目が覚めると、自分の部屋に居る。

ん?あれは夢か、現実か?

愛子に連絡してみると、急に僕がどこかに消えたとだけ答えてくれて、僕は不安になり、再び、高円寺へ向かうことに決めた。


よろぴく!