見出し画像

【読書】私とは何か:唯一の本当の自分は存在しない

「多様性」が声高に主張される世の中で、自分のアイデンティティって何だっけ…?と漠然とした不安感に包まれる。自分探しの旅とか言ってインドに旅立つ…

そんな悩みを持つ人へ「分人」という視点を提案するのが『私とは何かー「個人」から「分人」へ 』。

小説家 平野啓一郎さん(京都大学在学中に芥川賞受賞)の著書。

10年前の本なんですが、直近1年間でも公式サイトやYouTubeの解説動画が更新されています(本記事末尾にリンクあり)。「分人」は現代人の悩みにとてもマッチした概念。

「個人」という単位を「分人」の視点で細分化することで、現状を見つめ直し、人間関係の悩みを整理できるかもしれません。


1.唯一の「本当の自分」は存在しない

「自分は何者なんだろう?」と自問した経験はないでしょうか。

多くの人は環境に応じて口調や表情、態度が変わると思います。職場、家庭、学校、趣味の集まりなど。

じゃあ、特定の環境下ではニセモノの自分を演じてるのか?意識的にキャラを演じ分けてるのか?というと、必ずしもそうではない。

一人の人間にはいくつもの顔がある。まずはこれを肯定する。相手次第で、自然と様々な自分になる。いわゆるこれが「分人」。

不可分と思われている「個人」を 分けて、その下に更に小さな単位を考える。そのために、本書では、「分人」(dividual) という造語を導入した。「分けられる」 という意味だ。

上掲著』より

多重人格とか八方美人だとか、そう意味ではなく、全てが「本当の自分」と認識する。そして、本書ではこの分人の構成比率が「個性」になると主張しています。

言い換えれば、誰とどう付き合うかによって、自分の中の分人の構成比率が変化する。

こう考えると「職場での自分は嫌いだけど、家族の前での自分は好き」のように、自分の中のどの分人が好きか?嫌いか?がわかってきます。

2.「分人」の構成比率が悩み解決のカギ

もし現状置かれている環境が自分に合ってないと思うなら、自分の好きな分人の構成比率を増やすアクションをする、というのは一つのカギと思います。

以下引用文の「複数の分人の同時進行のプロジェクト」という表現がしっくりきます。

貴重な資産を分散投資して、リスクヘッジするように、私たちは、自分という人間を、 複数の分人の同時進行のプロジェクト のように考えるべきだ。学校での分人がイヤになっても、放課後の自分はうまくいっている。それならば、その放課後の自分を足場にすべきだ。

『上掲著』より

こうやって「個人」という単位を「分人」の視点で細分化することで、現状を見つめ直し、問題を整理できるかもしれません。

そういえば、「“誰を好きか”より“誰といるときの自分が好きか”」ということを女優の蒼井優さんも言ってたようです(2019年に南海キャンディーズ・山ちゃんと結婚発表)。

同著にも似たようなことが書かれていました。分人の概念を踏まえると、納得感あります。

なぜ人は、ある人とは長く一緒にいたいと願い、別の人とはあまり会いたくないと思うのだろう?相手が好きだったり、嫌いだったりするからか?それもあるだろう。しかし、実際は、その相手といる時の自分(=分人) が好きか、嫌いか、ということが大きい。

『上掲著』より

3.ネット社会では分人が蔓延している

SNSで他人の生き様が可視化されていますが、あれは典型的な分人と思います。インスタでは一見キラキラしてそうな人でも、それは個人の中の一つの分人にすぎず、闇深い別の分人と共存してるかもしれません。

近年はメタバースが話題ですが、Vtuberのように、別次元でリアルな自分とは年齢も性別も動物種も異なるアバターを創造できるようになっています。ますます個人の分人化が進むと言われてるようです。

最近メディアにも取り上げられているVtuberバーチャル美少女ねむ さんも、著書『メタバース進化論(技術評論社)』の中で「分人主義」について触れられています。

メタバース関連の本として話題で、翔泳社主催の「ITエンジニア本大賞2023」に選ばれています(下記記事)。Vtuberの世界を熱く分析されており非常に面白いです↓↓

その他、「分人」の詳しい内容に興味あれば下記の公式サイトや動画、書籍をご覧ください。自分の個性についてや、漠然としてた人間関係の悩みがスッキリしてくると思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

記事一覧へ戻る

このnoteをフォローする

この記事が参加している募集

読書感想文

多様性を考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?