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これでは「採用ミス」が続発する~「第一印象」が90%?そして最後は面接官の「好き嫌い」Vol.2(1/3)

1.面接官の好みや傾向が合否に影響

私が、ある会社の新人研修にうかがったときのことです。

そのクライアントとは長年のおっき合いで、毎年研修を通して新人さんを見てきました。その年は、部屋に入った瞬間から、例年の新人さんと雰囲気が違っていました。

まず見た目 (それまでどちらかというつと小柄な人が多い印象でしたが、 今年は全体的に背が高い)、 そして、研修でのようすは例年に比べて、 みんながよく話し行動的だったのです。


研修か終わってから、人事のご担当者にお尋ねしました。

「採用担当者が変わられましたか?」と。ご担当者は、
「はい、変わりましたが、どうしてわかったんですか?」と、 少し驚いたふうな顔でお答えになりました。
「今年の新入社員のみなさんは、今までとはまったく違いましたので、 そうかなと思ったんです」
と感想を述べたところ、 ご担当者は苦笑しながら、「きっと、新しい採用担当者の好みだと思います」

と、恥ずかしそうににおっしゃいました。

面接官によって採用する人材の傾向がガラっと変わる。じつは多くの企業で起きていることです。

ある会社の採用担当者から、聞いた話ではこうです。
A部長は「頭がよくて、洗練された雰囲気の学生」を好み、 B部長は「元気で、活力にあふれ、いわゆる体育会系の学生」を好むという顕著な傾向があって、それが採用選考のときにも、あきらかに反映される。採用された学生を見れば、どちらの部長が「◎」評価した人かが一目瞭然、というわけです。

採用面接を担当する面接官には、さほど明確でなくても多かれ少なかれ好みや応募者との相性があり、それが何らかのカタチで合否判定に影響を及ばしています。

人が人を観るわけですから、第一印象や好みが影響することは否めません。しかしながら、こと採用面接において、その選考評価プロセスにあらわれる面接官の好み・相性などの中には、改善を要するものが少なからずあるのは確かです。

というのも、その好みや人の見方の傾向が前面に出ることによって、応募者の能力や人物像を見誤るリスクがあり、その結果起こる「採用ミス」は、応募者本人にとっても会社にとっても大きな不幸となるからにほかなりません。にもかかわらず、多くの面接官は、人物評価にかかわる自らのクセや傾向を自覚していないのが実情といえるでしょう。

2.面接官としての「自分の傾向やクセ」をチェックする

次のコラムからご案内するチェックリストは、みなさんが採用面接の面接官として面接に臨んでいるとき、自分の質問の傾向や人を評価するときの傾向をセルフチェックするものです。

面接官を経験された方はその場面を思い出しながら、実際に面接を経験されたことがない方は、「もし自分が面接官にな0て応募者に質問をしたり評価をするならどうするか」を想定しながら、チェックしてみてください。

あてはまると思う質問には Y(YES)に〇を、そうではないと思う質問にはN(NO)に〇をつけます。

面接の傾向セルフチェック

①面接の経験は豊富で、職場でも多くの部下を見ているので、 自分はヒ トを見る目には自信がある。(Y/N )

②学生生活でクラブ活動やセミの部長などを務めたという学生は、「責任感が強く、統率力がある」と思いリーダーシップが強いと評価する。 (Y/N )

③自分との共通点 (出身大学・ クラブ・趣味など) があると面接でも話題が盛りあがり、 いろいろな話題で会話が弾めば、その学生のことがよくわかり、評価しやすい。(Y/N )

④部屋に入ってきたときの全体の雰囲気や印象でおおよそのことはわかり、その印象は面接が終わるころと大きく変わることはない。(Y/N )

⑤面接がスタートして5分くらい過ぎると、応募者が良いか悪いかは、だいたい評価できる。 (Y/N)

⑥自分の価値観と合う学生かどうかを重視して評価している。(Y/N )

⑦志望動機が明確で、入社後にやりたいことをはっきりといえる応募者は、入社への熱意が高く、何かをやり遂げてくれる人だと判断する。(Y/N )

⑧自社に合う人材かどうかは、面接官との波長や明るく感じの良いコミュニケーションができていれば、自社のカルチャーに適合できると判断する。(Y/N)

⑨面接でプレッシャーをかけ、 圧迫面接をすることで、ス トレスに強い人かどうかわかる。(Y/N)

⑩自社のことをよく研究し、 志望動機に納得できるプレゼンテーションをする学生は、 志望動機が高いと平価する。(Y/N)

⑪将来の夢を熱く語れる学生は、 やる気が高いと判断する。(Y/N)

⑫応募者の履歴書やエントリーシー トを見て、 面接官として興味を惹いたところや話を聞いて理解できそうだと思うところを中心に質問している。(Y/N)

⑬新卒採用では大学が一流校である場合、キャリア採用では前職が優良企業である場合、その大学や企業に入るだけの高い潜在能力があると考えてプラスの評価をしている。(Y/N)

⑭面接官とのコミュニケーションが上手な応募者は、職場でも人間関係をうまくつくることができると判断する。 (Y/N)

⑮面接での受け答えやしぐさなどから、応募者の心理面や性格が読みとれる。 (Y/N)

⑯合否決定では自分の勘を大切にしている(一緒に仕事をしたいタイプかどうかなど)。(Y/N)

⑰応募者が答えやすくなるように、自分の期待をこめた助け船やヒントを出して、面接をスムーズに進める。(Y/N)

すべての項目のチェックを終えたら、 Yにつけた〇の数を数えてみてください。その数が項目の半分以上ある方は、採用面接において、 かなり「思い込み」や「印象」に左右される傾向が強いといえるので注意が必要です。

3.面接官に共通する傾向は「思い込み」や「印象」

面接という初対面の場面で、 「人」が「人」を見て評価するとき、 注意すべきポイントをまとめると、次の4点に絞ることができます。

・自分の価値観や仕事観、 人生哲学などを判断・評価の基準としない

・見た目や第一印象、 あるいは親近感などの感情は、 いったん判断・評価の外側に置く

・応募者の考え方や意見、 あるいは志や夢などではなく、 具体的な行動事実を聞いて判断・評価の材料とする (人を評価するためには、 たくさんの情報と多面的に見ることが必要だということ)

・応募者の経歴やエントリーシ1トなど、 自己申告した内容や自己アピールだけではなく、具体的に何をどのようにしたかという行動事実を判断・評価の材料とする

ただし、「面接の傾向セルフチェック」でYESと答えた数が多いからといって、その人が面接官としての能力や適生に欠けているということではありません。チェック項目には少し「ひっかけ」を含んだ文章をちりばめたせいもあります。

何の事前説明もなくいきなり人事部門の採用担当者の方(いわゆる「採用のプロ」)にこのリストのチェックを依頼しても、多分かなりの人が多くの項目でYに〇をつける結果になるのではないでしょう。

面接という場数を踏んだかどうかにかかわりなく、こうした傾向は誰にでも多かれ少なかれあると考えてください。

4.おすすめソリューションズ

【著者プロフィール】 伊東 朋子
株式会社マネジメントサービスセンター 執行役員 DDI事業部事業部長。国内企業および国際企業の人材コンサルティングに従事。
お茶の水女子大学理学部卒業後、デュポンジャパン株式会社を経て、1988年より株式会社マネジメントサービスセンタ-(MSC)。
人材採用のためのシステム設計、コンピテンシーモデルの設計、アセスメントテクノロジーを用いたハイポテンシャル人材の特定および
リーダー人材の能力開発プログラムの設計を行い、リーダーシップパイプラインの強化に取り組む。(※掲載されていたものは当時の情報です)

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント


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