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第5章<成長する>実践と優れた模範によりコンピテンシーおよびキーアクションを開発する

1.能力開発計画について

多くの(おそらくほとんどの)組織が見落としているキーポイントがある。リーダーのスキルを開発するときは、それが現在も将来もビジネスに必要なスキルでなければならないということだ。第2章にて、サクセス・プロフィールによってそれらを明確にし、ビジネスと整合させる方法を論じた。ビジネス・ドライバーは、組織の独自の状況における幅広いリーダーシップの優先順位を定義している。そしてビジネス・ドライバーにつながるコンピテンシーは、適切なスキルの組み合わせに重点を置いている。

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2.コンピテンシーとキーアクションの開発について

さらに難しいコンピテンシーにステップアップする際には、いかなる階層のリーダーも、その知識や経験に関係なく、実践が必要だ。リーダーはトレーニングを通じてどのように実践するかを学ぶ。新任管理者を対象にクラスルーム形式で研修を行うにしても、経営幹部を対象に1対1のコーチング形式で研修を行うにしても、以下の2点が、真の変化をもたらす学習と、そうでない学習を区別する。

1点目は、実践を省略したトレーニング(あるいはその他の学習の取り組み)は避けることだ。リーダーシップのコンピテンシーを概念的に理解するのは難しいことではないが、リーダーシップは頭の中で考えて生み出すものではない。他者の態度や行動を変えるようなキーアクションを実践することで身につくのだ。これはどんなリーダーにとっても難しいものである。最初の公式学習(教室で、あるいはバーチャルでなど)の瞬間から、職場で繰り返し適用するときまで、練習は常に重要である。良いトレーニングは、まず成功に必要なコンピテンシーとキーアクションを明確にするところから始まる。ついで、学習者が新しい行動を試し、改善のためのフィードバックを受けられる環境を提供する。その後、職場で上司やコーチなど(あとで詳しく説明する)の支援を受けながら、取り組みを繰り返していく。この方法はスキルと自信を育み、「さらに成長したい」という思いを強くさせる。

2点目は、コンピテンシーやキーアクションを開発するうえで、優れた模範となる人に代わるものはないということだ。一枚の絵が千の言葉よりも分かりやすいように、効率的な行動を見せてくれる良いモデルが一人いれば、そこから多くのことを学べる。1971年に、アルバート・バンデューラが行動モデルの効果を示して、それを証明した。DDIは1975年から、大部分のリーダーシップ能力開発モデルの重要な要素として、行動モデルを使い始めた。それ以来多くの顧客企業が活用し続ける中、手法は大きく進化している。何百という研究によって、学習者にとってスキルのモデルを作ることが、成長の加速化に最も効果的な方法のひとつであることが判明している。しかし効率とスピードを重視するあまり、この取り組みを止めたり、怠ったりする組織もある。そのような組織は、裏目に出て、逆に成長速度を落とすことになるのだ。

以上の2つのポイントを説明するために、カルロの例に話を戻そう。カルロには戦略的影響力を開発する必要があるという前提で、a)キーアクションの明確化、b)良いモデル、c)フィードバックつきのスキルの実践が、どのように展開するか詳しく見ていこう。

3.スキルを実践し、磨く能力を築く

カルロが戦略的影響力に重点を置いたバーチャルのコースに参加したとしよう。コースの中で、彼はコンピテンシーに関連するキーアクションを学び、優れたモデルをビデオで観て、バーチャル・クラスルーム(ウェブベース)で実習相手に影響を与える練習をした。その後職場に戻ると、上司は会議を通じてカルロを観察した。その結果、説得力のある根拠を示して主張する(戦略的影響力の中の特定のキーアクション)ことが、彼にとって一番の課題であると考えた。上司はカルロと模範例を共有し、もっと断定的にはっきりと見解を述べるには、どうすれば良かったのかを彼に理解させた。

それからカルロに自分と社内パートナーとの電話でのやりとりを聞かせた。上司は、2つのグループの間でリソースをどう割り当てるかについて社内パートナーと交渉して同意を得ようとしていた。上司は、強くて駆け引きのうまい、組織内で影響力を持つリーダーだと思われている。事前に問題に対する自分の見解と、どのような結果を望むかをカルロと共有し、カルロに観察をさせて、交渉の内容を評価させた(カルロは、スコアカードを持ったオリンピックの審査員になったわけだ)。会話を聞きながら、カルロはメモをとって、上司のスキルについて洞察をまとめた。電話の後、二人は上司のアプローチについて話し合い、上司の影響を与える行動――特に、会話の最も重要な部分で、どのように言い分を伝えたか――について観察結果を共有した。

こうした経験は、誇張してもしきれないほど大きい。当初は「影響力を改善したい」という漠然としたニーズだったが、実際の状況で機能する(あるいはしない)特定の行動に絞った会話となり、それがさらに継続的な練習や、フィードバック、会話へと花開いた。カルロが進歩するにつれ、上司は影響力に関わるさらに難しい取り組みをさせるだろう。その取り組みは、戦略的影響力に必要なすべてのキーアクションに関わるものだ。これは熟練するまで続く計画的訓練である。熟練すると、カルロと上司は次の能力開発の課題に取り組む。

大事なのは、戦略的影響力というスキルを完璧に身につけることが目標ではない点だ。スキルを実践して、磨いていくという能力を強化することが目標だ(図5.1参照)。キーアクションを理解し、優れたモデルから学び、フィードバックを得ながら練習する。これは能力開発にロケットブースターをとりつけるようなものである。またこれはコンピテンシーの重要性を明らかにするし、すべてのキーアクションの実践を始めるべき明確な起点ともなる。そして、フィードバックを与えたり受けたりすることの価値を高め、学習経験の振り返りの大きな役割――将来とるべき行動へのコミットメントと理解を堅固なものにすること――が強調される。

スキルを完璧に身につけることが目標ではない。スキルを実践し、磨く能力を築くことが目標だ。

われわれは顧客企業とともにこのような実践を通じて、世界中で1000万人を超えるリーダーの能力開発を、多くはアルバート・バンデューラが知らなかった方法で成功させてきた。ゲーム、バーチャル・クラスルーム、オンラインでのシミュレーション、カスタマイズされた1対1のコーチングコース、その他多くの方法をうまく応用してこれらの取り組みを推進し、実際、リーダーシップのあらゆる階層で成功した。161の調査を含むメタ分析が、職場での行動を変えるのに効果的だったことを証明している。

4.おすすめ人材アセスメントソリューション

5.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

6.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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