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「思いこみ・決めつけ採用」がもたらす組織へのダメージ~<こんなはずじゃなかった>ではもう遅い Vol.3(3/3)

8.サプライズ社員は組織の活力を殺いでしまう

そして、 サプライズ社員のインパクトが大きいのが⑤(職場の士気)にある職場の士気の低下なのです。

サプライズ社員が配属された職場では、 「なんでこんな人を採用したの?」という、人事(ひいては会社) に対する疑念と不信感が募ることになります。 みなさんもたぶんそうであるように、社員は採用に敏感なものなのです。

しかも、 それだけではありません。業務を満足に遂行できない、あるいは職場の風土になじめない異質な社員の流入は、 それまで保たれていた職場での協力関係や信頼関係を徐々に浸蝕し、 職場の雰囲気を妙にぎくしゃくしたものに変えていく要因にもなります。


ことに中途採用でマネージャークラスの人が採用され、 その部下となった人たちが、新参の上司にマネジメント能力がないと見抜いたときはさらに悲惨です。私自身、 クライアント企業で実際に見聞したことですが、 「こんな上司の下では働けない」という思いが職場にし、それが士気や活力の衰退につながっていったのでした。

このことは職場における労働生産性の低下と同義であり、それによって会社として支払わねばならないコストは計りしれません。

9.採用は企業イメージを左右する

⑥に記した企業イメージの低下とは、採用プロセスを通して応募者がその企業に対してネガテイプなイメージをもっ危険性があるということです。

企業側にとって、忘れてはならないことは、応募者は、自分たちの商品やサービスを利用している顧客でもあるということです。不適切な面接官の態度や質問は、応募者からの信用や信頼の喪失、そして確実に企業イメージの低下につながっていきます。 マーケットでの悪い評判は、企業にとっていろいろな面で大きな損失を招くのです。

以上ご紹介してきた例のように、不適切な採用選考やその結果としてのサプライズ社員の流入は、かなり高いをもって組織や職場の活力を低減させ、 さらには会社が支払わねばならないコストとして跳ね返ってきます。

それを防ぐには、今まで繰り返し述べてきたように、採用選考のあり方・進め方を見直し、適切な採用基準・選考方法を策定して、 バラッキの発生を避けることーすなわち「採用はシステム化できる」という考え方に転換し、合否の精度を確保することが必要なのです。それとともに、面接官の意識改革も図らなくてはなりません。

この意識改革とは、端的にいえば、面接官が今まで行ってきた「応募者の見方」を大きく変えるということです。そのためには、冒頭の「チェックリスト」にあるような「思いこみ」や「決めつけ」を払拭し、「面接」をシステム的に実施する必要があるのです。

もちろん、採用をシステム化するには、単に面接だけではなく、 スクリーニングプロセス全般の実施基準を中心に、 一連の採用活動を見直し、戦略的に再構築することが大前提になります。これについてはVol7~8でご説明することにします。

10.採用基準は部下に仕事を任せるときの判断基準と同じ

面接官に選ばれる社員の方は、 一般に部下の評価や育成に秀でた管理職です。こうした管理職は、部下の行動をよく把握しています。ですから、面接官トレーニングで、私は「部下の適性を判断するのと同じ考え方で、採用面接においても応募者を評価してください」とお話ししています。たとえば、次のような例を挙げて。

「部下に、新しい仕事やプロジェクト、あるいは新規顧客を担当させるかどうか迷っているとき、何をその判断基準となさいますか。その部下が明るくて元気で、顔つきがキリッと引き締まっているかど、つかとい、つことでしようか。それとも、あなたと出身校、趣味・嗜好が同じかどうかでしょうか。あるいは、職場で、自分の将来の夢を熱く語れるかどうかでしようか。そうではないと思います」。

最初、この投げかけと面接とがいったいどういう関係があるのかと、けげんな顔をする方がたくさんいらっしゃいます。

「たぶんみなさんは、常日ごろ目にし耳にしている部下の仕事の進め方や問題解決の仕方、あるいは対人関係の構築の仕方などを思い起こし、そのいいところが新しい仕事に活かせるかどうか、あるいはよくないところが新しい仕事のネックにならないかどうか、そうしたことを総合的に判断して、その部下に仕事を任せるかどうかを決めていらっしゃるのではないでしょうか」

ここで、 みなさんは、 「もちろん、 そのとおり」とうなずいてくださいます。

「ということは、 みなさんは部下の人となりや醸しだす雰囲気、 自分との共通点、 あるいは思想や志などではなく、 彼の普段の仕事ぶりと、 そこから抽出できる部下固有の行動様式を判断材料にされているわけです。 これは、 部下の今までの行動から、新しい仕事を任せたときの将来の部下の仕事ぶりを予測しているということです」。

ここで、 勘のいい方は、「あ、 そういうことか」とピンと気づいてくださいます。

「”見た目が9割”といわれる第一印象や明るさ・元気さといったことで採用してみて、入社後、応募者にだまされた (サプライズ) と感じるのは、 面接のときの印象やすばらしい自己アピールカ、 面接で力強く語る夢や目標と、 入社後の仕事上での行動とがかけ離れているからです。

面接での印象は、 必ずしも入社後の仕事ぶりとは連動していません。思いあたることはたくさんあると思いますか、 いかがですか」

この投げかけに対して、 過去の採用の失敗を思い出しながら、 ご自分にもいくつか思いあたる節がある管理職の方たちは、 苦笑しながらも納得なさいます。 この納得の上に、 私はさらに言葉を重ねます。

「みなさんに理解していただきたいのは、部下を評価する基準も、面接で応募者を評価するときの基準も、基本的には同じだということにほかなりません。 つまり、採用面接で合否の精度を高め、サプライズを少なくするためには、初対面の人だからといって直感や感性をベースにするのではなく、応募者の今までの行動を明確に把握し、行動事実をベースに判断・評価することが大切なのです。

といっても、面接官であるみなさんは応募者の過去の行動を見ていませんし、面接の場で実際に目にすることはできません。ですから、応募者の見えない過去の行動を質問によって引きだし、見えるようにすることこそ、面接官としての重要な役割なのです」と。

以上でご理解いただいた内容をベ1スに、次のVol4では「コンピテンシー」という概念をつかって、適切な人物評価の方法論をもう少し体系的にご説明することにしましょう。

※「サプライズ社員」という言葉は、名がよく体をあらわしているので、私は講演や講義などでよくつかいます。本マガジンでもこれ以降多用することになりますが、 一般用語でもコンサルタントの専門用語でもありませんので、読者の方が使用する際は気をつけてください。

【著者プロフィール】 伊東 朋子
株式会社マネジメントサービスセンター 執行役員 DDI事業部事業部長。国内企業および国際企業の人材コンサルティングに従事。

お茶の水女子大学理学部卒業後、デュポンジャパン株式会社を経て、1988年より株式会社マネジメントサービスセンター(MSC)。

人材採用のためのシステム設計、コンピテンシーモデルの設計、アセスメントテクノロジーを用いたハイポテンシャル人材の特定およびリーダー人材の能力開発プログラムの設計を行い、リーダーシップパイプラインの強化に取り組む。
(※掲載されていたものは当時の情報です)

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会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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