見出し画像

第3回 リーダーの質に対する評価の低下と燃え尽きについて

本連載では、世界的な規模で展開された調査、「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト(GLF)」により導き出されたリーダーシップに関する未来予測の中から、特に重要な所見を取り上げて紹介する。

これは、株式会社マネジメントサービスセンター(MSC)と米国DDI社との協力で実施した大規模なリーダーシップ調査であり、世界50カ国以上、13,695名のリーダーと1,827名の人事担当者の回答を検証したものである。日本からは、2,158名のリーダーと161名の人事担当者が参加している。

 前回は、優れた人材供給体制をもつ企業が得られるメリットと、その人材供給体制の作り方を紹介した。今回は、リーダーの質に対する評価の低下と、リーダーの燃え尽きを防止する方法について解説する。


1.グローバルではリーダーの質に対する評価が低下する一方、日本では向上している

ビジネスリーダーによる、自社のリーダーの質に関する評価は以下のような結果になった。グローバル企業の数値は2020年までは右肩上がりであったが、今回の調査(2022年)では大きく低下している。一方、日本のリーダーは、前回に比べて2倍高い評価となった。しかし、高くなったとはいえ、日本のビジネスリーダーが自社のリーダーの質を「非常に高い」「最高」と評価した割合は依然として12%であり、グローバルの40%には大きく届いていない。

2.危機を乗り越えるリーダーシップ:日本の特異性と今後の課題

2020年、世界は未曾有の難題に直面したが、従業員はリーダーを信頼し、リーダーの質に対する評価は急上昇した。

しかし、危機が過ぎると、疲弊や不信感が生じることはよくある。2022年の調査では、グローバルで「我が社は質の高いリーダーを有している」と回答したリーダーはわずか40%で、2年前と比べて大幅に低下した。これは、2010年代初頭の経済危機後のレベルに近い数字である。一方、日本では、前回と比べて2倍の6ポイント上昇し、「自社のリーダーの質は非常に高い」という評価が12%まで上がっている。これは日本の文化がもつ協働・共感といった特徴に起因している可能性がある。

ジョブディスクリプションに基づいて、完全に個人で仕事を進める西洋のアプローチと異なり、日本のリーダーは、きめ細かなコミュニケーションを通して、タスクニーズのみならず、各メンバーのヒューマンニーズを満たし、相互の信頼関係を築いてきたことも要因に挙げられる。一方、意思決定に対してスキル開発が必要であるという、日本のリーダーの課題が本調査で明らかになっており、今後もさらにリーダーのスキルを向上させ、チームからの信頼を獲得することが求められている。

3.管理職が燃え尽きると、組織のリーダーへの信頼と確信が揺らぐ

リーダーは、チームからの信頼と信用の維持に苦労する一方で、社内の課題にも直面している。リーダーの間では燃え尽き症候群の兆候が強く見られ、グローバルでは、72%のリーダーが1日の終わりに疲れ果てたと感じることが多いと回答した。この数字は、2020年の60%から上昇している。さらに、リーダーはチームの燃え尽き症候群についても強い懸念を抱いており、従業員の燃え尽き症候群を防ぐ準備ができていると感じているのは、わずか15%にとどまっている。

その結果、リーダーは疲弊し、同時に従業員からの期待も高まるという最悪の状況に陥っている。組織は、従業員を惹きつけ、定着させながら、すでに負荷が高いリーダーに過度の負担をかけないような、質の高いリーダーシップ・モデルを構築する必要がある。

4.質の高いリーダーシップの文化を定義する

リーダーの質に対する評価は、組織文化と密接に関係している。その結果、質の高いリーダーシップの定義は組織によって異なることがある。リーダーの質に関する評価が最も高い組織には、人事部門が実践している以下の5つの重要な戦略がある。

 1.重要なリーダーシップ・スキルを備えたリーダーを育成する。
 2.能力開発やキャリアアップに焦点を当てた、「人を活かす」人材育成を実践している。
 3.組織全体で共通のリーダーシップ・モデルや戦略を導入している。
 4.リーダーシップ・パイプライン全体にわたり、質の高い能力開発を提供している。
 5.社外からの採用よりも、社内での登用に注力している。

これらの施策をすでに実施し、成功している組織は、同業他社に比べて42%も質の高いリーダーを擁している。また、リーダーが「働きやすい職場」と評価する確率も3.4倍にもなる。

組織文化によって、質の高いリーダーシップの定義は異なるかもしれないが、自社で優れたリーダーをどのように表現しているかには、共通点が見られた。あらゆる業種・文化において、優れたリーダーを表す言葉として認識されていたのは、「共感力」と「模範となる行動」であった。

5.関連ソリューション

6.おすすめコンテンツ

7.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

8.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?