近未来を見通す着眼点~時代に乗るために大切なこと~
コロナウィルスの影響もさることながら、数年前と比べて明らかにVUCA(ブーカ)の度合いが加速しています。
あらゆるものが複雑化して、将来の予測が困難な状態をVUCAといいます。Volatility(変動性・不安定さ)、Uncer-tainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の4つの頭文字を取ったものです。
そこで、これらの急速な変化に備えるために必要な視点をまとめました。
(本編には、有益な情報を適宜加筆していきます。)
1.デジタル化する世界
(1)すべてが数字に置き換わる
デジタル化とは、連続的な量を段階的に区切って数字で表すことをいいます。たとえば、アナログの世界では「あの人は喜んでいた」「あの人は怒っていた」などと表現しますが、
デジタルの世界では、「あの人は喜びが90、怒りが18、哀しみが40、楽しさが60」のように表現されるようになると考えればイメージしやすいのではないでしょうか。
同じように、食べ物のおいしさも、単においしい、まずいではなく、「甘さが50、歯ごたえが30、粘りが60、....」などと表現されます。
見た目の色なども数字で表されるようになるでしょう。これによって、感覚的であいまいな表現がなくなり、客観的に数字で表されるようになります。
(2)見えるものが細かくなる
数字で表されるということは、モノの見える細かさも変わっていきます。数字によって、違いを細かく見ることができるようになるからです。
たとえば、「甘さ60」と「甘さ62」では、客観的に62のほうが甘いのは間違いありません。これまでだと、おそらく人間の味覚では判別することが難しかったことでしょう。しかし、数字で表すことで、確実に違いがあることがわかります。
さらに、数字に置き換わることで、これまで測ることのできなかったものも測れるようになるでしょう。たとえば、消費者の趣味・嗜好や満足感なども数字で表すことができるようになると思われます。
2.デジタル化によってビジネスが変わる
(1)ビジネスのスタイルが変わる
デジタル化した世界では、消費者のことも数字で理解できるようになります。そのため、消費者の望むものも、あらかじめ数字で把握することができるようになります。消費者の求める価値を提供することを、事前にコミットすることもできるようになるはずです。
たとえば、「満足度60を提供する」と、事前にコミットすることができるようになるのです。
モノやサービスを提供するというビジネススタイルから、顧客の求める満足や成果そのものを提供するというビジネススタイルに変わるとイメージするとわかりやすいかもしれません。
(2)IoTでビジネスが変わる
IoT とは、Internet of Things のことで、モノのインターネットと呼ばれています。あらゆるモノがインターネットのようにつながることを指しています。
インターネットのようにつながるとは、どういうことでしょうか。
たとえば、照明がインターネットのようにつながるとは、周囲の明るさを感知して、自動的に明るさや色を変えることができるということです。
ここにその家で暮らす人がつながるとすれば、その人の血圧や呼吸数などに応じて、一番心地のよい明るさや色合いに調節ができるようになるイメージです。
IoTが普及すると、このような傾向はますます広がっていくことになるはずです。
3.消費者行動や価値基準が変わる
(1)いつでもどこでもつながるようになる
インターネットやクラウド技術が発達することで、企業と消費者とが、いつでもどこでもつながるようになっていきます。
これは消費者が求めるかどうかにかかわらず、社会全体の変化として表れてくるのではないでしょうか。
たとえ消費者が24時間365日もつながっていたくはないと思ったとしても、この変化の波に逆らうことはできないでしょう。否応なく「つながる」社会へと変わっていくことになります。
もしかしたら、住む家とあなたがつながることもあるかもしれません。もしそうなれば、家があなたのデータを自動的にとることで、あなたにとって快適な住居環境を用意してくれるようになるかもしれません。取得したデータを蓄積することで、あなたが思いつくよりも前に、家が先回りして準備しておいてくれるようになるかもしれません。
たとえば、あなたが洗濯をしたいと思うよりも前に洗濯の準備をしてくれたり、あなたが寝たいと思うより前に就寝のための準備をしてくれるようになるかもしれません。これらも24時間つながっている世界といえます。
(2)消費者の嗜好も変わる
消費者にとっては、選択肢が無限と思えるほどに増えていくことになるのではないでしょうか。なぜならば、あらゆるものが個人にとって最適なサービスへと変わっていくからです。そのため、「サービス数×人口」の数だけサービスが存在することになります。これに加えて、さらに社会そのものが激しく変化していくことが予想されますから、より複雑な社会へと向かっていくことになるのかもしれません。
しかし一方では、このような社会の変化とは逆行するように、社会がより複雑になればなるほど、消費者はよりシンプルなものを望むようになるのではないでしょうか。
それゆえに、シンプルなサービスこそ喜ばれる世の中になるのではないかと思っています。
(3)パーソナライズされる
企業と消費者がいつでもどこでもつながっている社会とは、企業と消費者とが何か漠然とつながっているという世界ではありません。
つまり、企業が「消費者」という集合体とゆるく結びついているという状態ではありません。企業が、消費者一人ひとりと文字どおり24時間365 日つながっているということです。
そのため、商品やサービスを提供する企業側は、これらの消費者一人ひとりに対して、個別にパーソナライズした商品やサービスを提供できるようになっていかなければならないということでもあります。
大衆に平均化されたサービスではなく、その個人にとって最適なサービスを用意する必要があるということです。
だからこそ、世の中には「サービス数×人口」だけのサービスが存在することになると考えられるのです。
(4)よりシンプルになる
消費者も、自分に合ったパーソナルなサービスを求めるようになっていくのではないでしょうか。
近年は、ショッピングサイトのリコメンド機能なども活発ですが、これらのサービスに慣れた顧客は、いかなる業界の企業に対しても同様のサービスを求めるようになると思われます。
ここで、リコメンド機能とは、ある顧客の購買履歴などからオススメの商品を提案したり、季節ごとのイベントに合わせた商品を自動的におすすめしてくれる機能のことをいいます。
先ほどの「サービス数×人口」のような膨大な数のサービスの中から自分に合った最適なサービスを探し出すことは膨大な労力を要します。ほとんどの個人にとっては不可能といえるでしょう。
だからこそ、その個人に対してパーソナルで最適なサービスを、提供者の側からリコメンドしていくことがきわめて大切になっていくと思われます。
(5)PRもピンポイントになる
広告などのPRも、これまでのテレビCMのように万人に向けてというよりは、ネット広告などのように、顧客の嗜好に合ったPRをピンポイントで流す世界に変わっていくのではないでしょうか。すでにこの傾向は顕著に表れています。
YouTubeのような動画サイトでも、選択した動画の最初にCMが流れるようになっています。当然、選択する動画によっても流れるCMの内容が変わります。このようにすることで、ある特定の興味や志向を持った視聴者に対して、選択的に効果的なCMを流すことができるからです。
これまでのCMのように、誰にでも当てはまるマクロな情報では消費者に突き刺さりにくくなっています。消費者はあくまでもパーソナライズされた情報を求めるように変わってきているといえるでしょう。
(6)「体験のシェア」が判断基準になる
いつでもどこでも「つながる世界」では、消費者と企業が1対1でつながるというだけに留まりません。消費者同士も自然につながっていくことになります。
つまり、消費者が消費者に対して、商品情報やサービスに関する情報を提供するようになります。消費者が満足のいく体験をすれば、それが他の消費者にもシェアされますが、不満足な体験も、同じように他の消費者にシェアされることになります。
このような世界では、自己の体験そのものよりも、他人にシェアすることを目的とした体験を重視する変化も起きてくることでしょう。
FacebookやLINEなどの投稿にも、この変化は如実に表れてきています。
たとえば、ある食事の投稿があったとします。この食事の体験は、本人にとって本当にしたかった体験であるかどうかよりも、見栄えのする料理であったり、他人から共感してもらえる料理を優先していることがよくあるからです。つまり、自分への満足よりも、他人にシェアしたいというウエートのほうが勝っているのです。
そのため、写真の撮り方にも変化が起きています。以前のように記念撮影や自身の思い出という視点ではなく、他人に共感してもらえるように撮りたいというニーズのほうが勝っているからです。自分が撮影してうれしいかどうかではなく、あくまでも他人が喜んでくれるかどうかが写真を撮影する基準になってきています。このように、体験をシェアするという行動と、他人から共感を得るという行動は、今後ますます活発になっていくことでしょう。
4.デジタル化によって、あなたも変わらなければならない
(1)消費者とのコミュニケーションを変える
消費者とのコミュニケーションの仕方も多様化すると予想されます。なかでも、SNSのようなソーシャルメディアの活用が活発化していくことでしょう。SNS を使うことで、消費者の特性に応じて、パーソナルなメッセージを個別に送ることもできるようになります。消費者の同意が前提となるでしょうが、消費者の位置情報の活用もできるようになるのではないでしょうか。
たとえば、位置情報を把握できる端末(スマートフォンなど)を持ってある店の前を通りかかると、その店の広告が自動で流れるようになるかもしれません。ある公園へ出かければ、その日の気分に応じたオススメのランチが紹介されるかもしれません。
IoTの進展によってあらゆるものにセンサーが内蔵されてデータが収集されるようになれば、食事をしているあなたの脈拍や血圧も収集されるようになるかもしれません。さらには、脳の活性度合いなども計測される時代が来るかもしれません。
そうなれば、あなたが何に喜びを感じ、何に反応するのかの情報が自動的に蓄積されるようになります。このような情報が蓄積されれば、あなたが今この瞬間に何を欲しているのかが、あなたの意識に上るよりも前にわかるようになります。あなた好みの最適な娯楽が自動的に提案され、簡単に選ぶことができるようになるでしょう。
さらには、このようなデータがネットワークで結ばれた医療機関などとも共有されるようになれば、あなたの健康状態がリアルタイムでわかるようになります。多くの病気の予知や予防も可能になるかもしれません。
これらのデータは、ビッグデータ分析にも活用することができるようになることでしょう。ビッグデータを分析すれば、世の中の流行りや廃りをより早く検知できるようになるはずです。そうなれば、年代別や地域別などでのマクロな趣味嗜好の変化などもビジネスに織り込むことができるようになります。
このような消費者とのコミュニケーションの仕方の変化は、単に有用なだけでなく、企業経営に与えるインパクトも計り知れないほど大きなものになるのではないでしょうか。すぐにこれらのすべてが実現するわけではないと思いますが、企業もビジネスパーソンも、これらの変化に対応し、自らも変化していくことがきわめて重要になっていくと思います。
(2)コミュニケーションで大切なものが変わる
消費者とのコミュニケーションの仕方で大切なことは、以下の3つに集約されます。つまり、「一貫性があること」「簡単であること」「わかりやすいこと」です。
①一貫性があること
一貫性があることとは、たとえば別々の店舗でサービスを受けたとしても、どこで受けても同じ体験が味わえるようになっているというようなことです。
今後は、消費者同士がお互いの体験を共有し合う世界が予想されますが、たとえ遠く離れた地域の人であったとしても、同じサービスである以上は、同じ品質で提供されることが求められるでしょう。そうでなければ、互いに体験を共有することができないからです。
②簡単であること
簡単であることとは、誰がやっても負担なくできるというようなことです。
たとえば、お年寄りにはできないというようなサービスではいけません。また、ある程度習熟していなければできないというようなサービスもうまくはないでしょう。
このことは、突き詰めれば、誰でも受けたいときにすぐに受けられるサービスでなければ、消費者には受け入れられないことを意味しています。ネット決済なども操作の手間がかかったり、必要な情報の入力に時間がかかってしまうようでは、受け入れられなくなっていくことでしょう。
何かに手こずってしまうようなサービスでは消費者が敬遠し、簡単に受けられるサービスのほうに消費者が移っていくことになります。
③わかりやすいこと
わかりやすいこととは、そのサービスから得られる効用がはっきりとわかることです。さらに、誰が見ても他のサービスとの違いがはっきりとわかることでもあります。他のサービスと比べてどこがどのようによいのか(または悪いのか)が一目でわかるサービスでなければならなくなるでしょう。
情報が氾濫する世の中では、情報の1つ1つについて自分で情報を集めて判断するということができなくなっていきます。その中でも選ばれる商品・サービスとなるためには、誰の目から見てもわかりやすいことが必須条件となるでしょう。
もし、オンライン(ネット店舗など)とオフライン(実店舗など)の両方を持っているならば、その両者をうまく使ってもらう仕組みづくりも大切になります。
たとえば、衣服の販売であれば、実店舗で試着をし、自分に合ったサイズはネットでも注文ができるように連動するなどです。すでにこのようなビジネスモデルで成功を収めている企業もあります。しかし、これは消費者が自然にとる行動だと思ってはいけません。このような動線をあらかじめ用意しておくことが大切です。消費者の行動を先回りすることで、サービスの利便性を高めることが大切です。
(3)消費者一人ひとりと向き合わなければならない
消費者一人ひとりに対して、企業はパーソナルなサービスを提供しなければならなくなるはずです。顧客の側もそのようなサービスを望むように変化していくことでしょう。
これまではリアルタイムで消費者の行動データを把握することはきわめて困難でしたが、インターネットやクラウド技術が発達したことで、比較的容易にこれらのデータを収集できるようになりました。単に収集することができるだけでなく、コンピュータの計算能力が飛躍的に高くなったことで、これらの膨大なデータを即座に分析することもできるようになっています。
複雑で高度な分析もできるようになりましたが、むしろ簡単な統計処理だけでも、非常に多くのことがわかります。
たとえば、ビッグデータを分析することによって、世の中全体のトレンドやエリア特有の志向などもわかるようになっています。
これまでデータ量が膨大であるためにビッグデータを分析することは困難でしたが、これらが分析できるようになったことで、顧客一人ひとりの情報をリアルタイムに把握して、その人に合ったサービスをおすすめし、最適なサービスを提供することもできるようになってきているのです。
(4)消費者とはいつでもどこでもつながれるようにする
企業と消費者とは、いつでもどこでもつながるようになるでしょうし、企業の側からすればそのようにしなければならない時代がもうすぐそこまで来ています。これは単にLINEでつながっているというようなイメージとは違います。もっと多角的にあらゆる場面でつながることができるという意味です。
たとえば、消費者がつながりたいと思ったときには、いつでもどこでも即座につながることができるように、サービスを整えていなければならないということです。あるときは電話でつながり、あるときは店頭でもつながり、またあるときはメールやチャットでつながり、さらにスマホアプリでもつながるというように‥‥。
このように、顧客とのコミュニケーションがとれるプラットフォームをつくることで、消費者と常に「つながっている」状態をつくることができます。
店舗が複数ある場合には、顧客の位置情報から最寄りの店舗をリコメンドしたり、マップに表示したりすることも親切なサービスの1つといえるでしょう。さらに、あるサービスについて検討中の消費者に対しては、無料でバーチャル体験ができるサイトを設けることも顧客の背中を押すうえでは効果的かもしれません。それでも疑問が残るという消費者には、サポートサイト(Q&Aなど)や電話問い合わせ窓口を設置することも必要かもしれません。他の利用者による口コミや体験談の提供などは、今後ますます大きな効果を持つことになると思われます。
これらの体験での満足感を体験者自身に項目ごとに数字で評価してもらうことも、他の消費者に自社サービスをわかりやすく伝えるためには効果のある方法になると思われます。数字で評価をしてもらうことで、他人に伝えやすくなるのはもちろんですが、同時に自社サービスの改善点や課題も一目瞭然になります。サービスを改良したり、新たなサービスを考える際にも大変貴重なデータになります。
(5)消費者からのフィードバックを受け取れるようにする
顧客からの苦情窓口を設けるなどして、消費者からのフィードバックを直接受け取れるようにすることは大切ですが、それ以上に、ソーシャルメディアなどによる口コミやカスタマー評価などを常に監視できる仕組みをつくっておくことが大切です。
うまく活用すれば、自社サービスがどこでどのように体験されているのか、どのようにシェアされているのか、評判や満足度はどうなっているのかをリアルタイムで把握することができるからです。これらのデータに目を配り、しっかりとウォッチすれば、自社サービスの評判や満足がどのように形成されていくのかをつかむことができるかもしれません。
さらに、その構成要素までもが数字で把握できるようになります。
つまり、前述したように「おいしい」「まずい」がその構成要素別に数値化できるのと同じように、「満足」や「不満」もその構成要素で数値化できるようになります。
5.ビジネスモデル自体を変える
(1)デジタル技術による新しいビジネススタイル
デジタルデバイスが進化することで、従来の仕事のやり方にも大きな変化が起きます。デジタル化が進めば、顧客情報なども特定の営業パーソンが個人的に管理するということは、もはや時代遅れとなりつつあります。同じように、各部門単位で蓄積していた情報なども、部門の垣根をなくして全社共通で管理していくことになることでしょう。
しかし、そのためには、これまでの社内の情報取得のプロセスや、情報のインプット方法、管理方法などを変えていかなければなりません。この変化には可能な限り早く対応したほうがいいでしょう。
デジタル技術を活用したサービス開発は、主に以下のプロセスで行うとわかりやすいと思います。
① 見えるようにする
② 予測できるようにする
③ 自動化する
④ 他のサービスへ横展開をする
① 見えるようにする
デジタル化がもたらす恩恵の1つは、これまで見えなかったものが見えるようになることです。
これまで収集することのできなかったデータも収集することができるようになり、これまで解析することのできなかった大量データもコンピュータの進歩によって解析することができるようになりました。これによって非常に細かい粒度での顧客動向の数値化などもできるようになります。
② 予測できるようにする
これらのデータを分析することで、単に現在を輪切りにするのではなく、将来の消費行動をも予測することができるようになります。
従来は不可能だった膨大なデータから因果関係を推測することができるようになるからです。これはあくまでも推測の域を出ることはありませんが、できないよりはできたほうがはるかにビジネスに活かせる幅が広がります。
それゆえに、これらの予測や推定を通じて、先手を打ったマーケティングや企業経営、さらにはサービス開発もできるようになります。
人は主体的でありたいですし、自分があるパターン化された行動をとっているとは思いたくないものです。しかし、現実には、あるパターン化されたレールの上を動いていることのほうが多いのではないでしょうか。このレールの上に、網を張って待ち構えることができるならば、マーケティング活動にとって大きな成果となります。
③ 自動化する
ここまでで見えるようになり、かつ予測できるようになったことを、さらに自動化することができれば、それだけでも立派な業務プロセスをつくりあげることができるようになります。自動的にデータを収集し、自動的にデータを解析し、業務プロセスを最適化していくことができるようになるからです。
さらに、データ解析結果の解釈なども、今は人手で行うことも多いですが、今後は人工知能の進歩などによって自動化できるようになるかもしれません。
④ 他のサービスへ横展開をする
ここまでの成功体験をもとに、この自動化までの業務プロセス改革を他のサービスにも適用していくことができます。
これまでに得られた全く別分野の知見が他の分野にも活かせることもあります。特に、顧客の消費動向や行動様式の変化などの把握は、商材が変わっても共通で使うことのできるものが多いといえます。
(2)「シェア」したくなるサービスをつくる
①顧客が求めるものを知る
すでに顧客となっている人の顧客情報であれば、何とか収集できる手段はあるでしょう。しかし、まだ顧客ではない人の情報はどのように収集したらいいのでしょうか。まだ顧客になっていない人のことも知らなければ、効果的なマーケティング活動にすることはできません。
たとえば、自社のサイトを訪れた人の匿名情報を収集することなども1つの方法です。具体的には、訪問回数、訪問頻度、滞留時間、ページ階層の深さなどの情報を収集します。可能であれば、収集したこれらのデータを解析することで、自社商品に興味を持っている人の傾向や関心分野などを知ることができます。
本当の顧客はどこにいるのか、誰が顧客になり得るのか、そして、その人は何を求めているのか。これらのことを何とか知ろうとすることが、とても大切な出発点になります。
さらに、第三者機関が販売する情報(集計データなど)等を購入して消費者動向をつかむこともできます。広告やチラシなどに対する応答率や応答した顧客の属性などを調べれば、消費者の動向を知ることもできます。
②「体験」をデザインする
顧客が「体験」するプロセスをつくることが大切です。顧客はいつどこでどのようにそのサービスを知るのか。そして、いつどのような場面でそのサービスを利用するのか(または買うのか)。
さらに、どのようにその体験をシェアするのか。このようなプロセスを明らかにすれば、サービスをデザインしやすくなります。
ここから、顧客が自社と接触するきっかけやイベントなどを1つ1つ設計していきます。顧客がサービスを受けるにあたって何らかの決断が必要となる場合には、その決断の仕方やタイミングも1つ1つ丁寧に設計していきます。
ここで大切なことは、顧客がそのサービスを知ってから、実際にサービスを体験し、シェアするまでを一本の線でつながるようにデザインすることです。
Twitter の創業者でもあるジャック・ドーシー氏は、「摩擦を取り除け」といっています。摩擦とは余計なハードルのことですが、ある行動を起こすためのハードルであり、ある消費をするための心のハードルのことです。
たとえば、最近はスマートフォンからタクシーの配車依頼をできるようになりました。配車依頼をするときに、行き先も登録し、決済カードも登録しておけば、タクシーに乗ったときに、わざわざドライバーに行き先を告げる必要もありませんし、目印などを伝える必要もなくなります。目的地に着いてから財布を開けて小銭を探す必要もありません。このようなものが摩擦をなくすことであり、サービスを一本の線でつなぐということです。
(3)消費者が触れた情報を知る
消費者の触れた情報を知ることができれば、消費者の多くのことがわかります。購入時にどのような情報に注目したのか、どのような情報に触れた人が実際に購入しているのか、購入を後押ししたイベントは何かなどを読み解くことができるからです。
これらの知見を蓄積していけば、あらゆる商材について消費者の興味・関心や購買決定のプロセスを把握できるようになります。
ここで便利な指標の1つとしてNPSというものがあります。これは「あなたは家族や友人にこの製品(またはサービス)をすすめたいですか?」との質問に0 〜10の数字で答えてもらって数値化するものです。
家族や友人にすすめたくなるような製品やサービスであるならば、その満足感も高いことが推測できます。
これに加えて、従来から利用されているリピート率も大切な指標です。同じ製品やサービスをもう一度買ってくれるかどうかは顧客の満足度を知るうえでも大変重要な指標だからです。このリピート率は、他の利用者のレビュー内容やシェア行動によって大きく左右されることから、レビュー内容やシェア行動を把握する仕組みをつくることはとても大事なことです。
(4)マーケティングの大前提を変える
過去をいくら眺めてみたところで、未来をとらえることはできない時代になりました。今あるビジネスの延長線上で物事を考えていたのでは、未来のビジネスを創造することはできなくなっています。
未来のビジネスをつくるうえでもっとも大切なことは、「未来の社会では何が求められるのか」といった想像を膨らませていくことです。ただ想像を膨らませるのではなく、その想像の中で仮説を立て、その仮説を検証してみることです。
しっかりとした仮説を立てて、将来のビジネスに備えることは、世の中の変化をタイムリーにとらえることに他なりません。
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