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ささかわの読書感想文(その2)

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「超おもしろかった」本の読書感想文、その2。
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#読書感想文

【書き直し再掲】昔ながらの「洗濯おけ」も良いよね。 小野美由紀『メゾン刻の湯』感想文

【書き直し再掲】昔ながらの「洗濯おけ」も良いよね。 小野美由紀『メゾン刻の湯』感想文

最近、人生を“洗濯”にたとえるのが気に入っている。
一昨年まで激務な部署にいたときは、全自動洗濯機でぐるぐる振り回されていたような感じで、周りを見る余裕がなく、とにかく疲れていた。
この部署には合わないと思って異動願いを出し続けて、一昨年の夏に東京に異動になった。

移動先の部署はクリーニング店みたいで、いつでも回せる洗濯機とは違って“営業時間”が決まっていて、丁寧な対応をしてくれる部署だった

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吉本ばなな『スナックちどり』

吉本ばなな『スナックちどり』

吉本ばなな『スナックちどり』(文春文庫)

何のために本を読む?

そんなことを"考えなくて良い"本に久しぶりに出会ったなぁ、というのが読了後の感想だった。

夫と上手くいかず離婚し、さらに無職になった主人公の「私」と
両親の代わりに小さいころから面倒を見てくれた祖父母を亡くしたいとこの「ちどり」の海外二人旅。

それぞれの理由で傷付いた二人が、イギリスの孤独な街でゆっくり過ごし、飲み

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小川洋子『いつも彼らはどこかに』(新潮文庫)
動物たちと人間に共通する「生きている」ということを軸に、「彼ら」とわたしたちをつなぐ、すこし不思議な八編の物語集。
読みながら自分の想像力を試され、そして拡張されていくような感覚があって、それがとても心地よかった。 #読書感想文

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』(文春文庫)

作家であり、ランナーでもある著者が「走る」という行為を通じて自分自身を見つめ、それを「正直に」言葉にした一冊。
本書を手に取ったきっかけは、わたし自身も走ることを習慣にしようと思ったからだった。

著者は1982年の秋に走り始め、それから毎年必ずどこかのフル・マラソンの大会に出るほどのベテランランナーだ。週に60キロ、一ヵ月に260

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女がそれを食べるとき

女がそれを食べるとき

楊逸・選/日本ペンクラブ編『女がそれを食べるとき』(幻冬舎文庫)

芥川賞作家の楊逸が選んだ「食と恋」をテーマにした物語集。

ラインナップを見ただけで、即購入を決めた一冊だった。

井上荒野「サモワールの薔薇とオニオングラタン」
江國香織「晴れた空の下で」
岡本かの子「家霊」
小池真理子「贅肉」
幸田文「台所のおと」
河野多恵子「骨の肉」
田辺聖子「たこやき多情」
山田詠美「間食」
よしもとばな

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桐野夏生『ハピネス』

桐野夏生『ハピネス』

桐野夏生『ハピネス』(光文社文庫)

若々しくて、綺麗で、セレブで、おしゃれで、ハッピーなママライフ。

桐野夏生『ハピネス』は、女性誌に頻出しているこれらの言葉を体現するような人たちが暮らす、東京都・江東区の五十二階建てのタワーマンションが舞台の物語である。

このタワーマンションに暮らす専業主婦の有紗は、娘の花奈と二人でタワマン生活を謳歌している。夫は海外に単身赴任しており、有紗の実家は新潟と

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羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』は現代社会の現実と、皮肉と、ずるさを多分に感じられる物語である。

「もうじいちゃんなんて、早よう寝たきり病院にでもやってしまえばよか」(11頁)

二十八歳の孫・健斗は八十七歳の祖父のこの台詞を毎日のように聞いている。新卒で入った仕事を辞め、アルバイトで食いつなぐ健斗はフルタイムで働く母のサポートのた

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2015年7月~12月読書まとめ

2015年7月~12月読書まとめ

みなさま、新年明けましておめでとうございます!

本年もどうぞよろしくお願い申し上げますm(_ _)m

新年初テキストノートは、去年の振り返りですw

トークノートにも書きましたが、2015年は読書目標の100冊を達成しました~!!(^◇^)

長くなりますが、たけしまの読書記録にお付き合いくださいませ!

*****

2015年1月~6月の読書まとめはこちらです(^◇^)↓
https:

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綿矢りさ『ウォーク・イン・クローゼット』

綿矢りさ『ウォーク・イン・クローゼット』

こんばんは!
またまたおさぼりモードですみませんでしたm(_ _)m

実は、今月の頭から新しい試みをしていまして…

http://s.ameblo.jp/nrm321nrm

たけしま、アメブロはじめました。

今までnoteで書き溜めてきた読書感想文と通常のブログをセットにして更新しています。

どうしても商品画像を合法で使用したくて、悩んだ末にブログをはじめてみちゃいました。
今の所は毎日

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黒川伊保子『夫婦脳 夫心と妻心はなぜこうも相容れないのか』(新潮文庫)
独身だけど読む。感覚でものを言う"女性脳"と全体を俯瞰して合理的に考えようとする"男性脳"の違いを夫婦の関係性から解き明かす一冊。大いに納得!仕事においても役立つかもしれない。 #読書感想文 #本

小田雅久仁『本にだって雄と雌があります』(新潮文庫)
どっちが雄でどっちが雌かは分からないけれど、相性の良い二冊が本棚で隣り合うと、二冊が混ざった子供の"ようなもの"が産まれちゃう話。そしてそれに振り回される本好きの一族の話。
わたしは本書を「雄」だと思った。 #読書感想文 #本

桐野夏生『グロテスク』

桐野夏生『グロテスク(上)(下)』(文春文庫)

9月はだいぶんおさぼりモードで、お久しぶりのnoteになりましたm(_ _)m
シルバーウィークに伏見稲荷大社でおみくじをひいたら「焦らずにコツコツ努力しなさい」というお告げが出たので、引き続きコツコツゆるゆる更新していきます。

本書は「アメトーーク」の読書芸人で光浦靖子さんが紹介していた一冊。
都内の名門私立女子校が舞台で、とある少女(のちに成

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浅田次郎『終わらざる夏』

浅田次郎『終わらざる夏』

浅田次郎『終わらざる夏(上)(中)(下)』(集英社文庫)

一年ほど前にnoteで紹介したいわた書店
(https://note.mu/mrn_123_mrn/n/nac918ea47122)
の素敵なサービス「一万円選書」が先週届いた。

今年のお正月に申し込み(約7ヶ月待ち…!)、やっと届いた11冊!どれを読もうかな〜とうきうきしながら背表紙のあらすじを流し読み、浅田次郎『終わらざる夏』を手に

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フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』

フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』

フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』(新潮文庫)

もしもわたしが作者だったら…『アンヌごめんなさい』みたいな安易なネーミングしか思いつかないだろうと思う。「言葉が美しい」ということを体感させてくれる一冊だった。

フランス南部の海辺の別荘で気ままなヴァカンスを楽しむ主人公・セシルとその父・レイモンのひと夏の悲しい思い出の物語。

思春期は過ぎたが成人になる直前の生意気盛りの年頃のセシル

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