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朗読エッセイ「富岡のコスモス」/さやのもゆ
さいきん、自作エッセイの朗読を少しずつ配信しております。お時間頂けましたら、ご視聴よろしくお願いします。さやのもゆ
浜松の象徴 松菱百貨店 さやのもゆ
松菱百貨店は、1937年(昭和12)6月1日に浜松の中心街(浜松市鍛冶町124番地)に開店した。実に今から(2023年)86年前、太平洋戦争(昭和16年)が勃発するより以前の事である。
ご承知のように旧浜松市民はもとより、遠州人なら知らぬ人とて無い、浜松市を象徴する老舗百貨店であったが、2001年(平成13)11月14日に突然の破産申告を以て倒産した。
戦前より戦中・戦後の激動の時代の中、壊滅的
蜜柑山の桜奇譚(朗読版) さやのもゆ
桜の花は身頃を迎えていた。あとは、花びらが散っていくのを惜しむばかり。
綿菓子の雲がふんわりと、空を包みこんだ日の夕方。浜名湖の西のはずれ、ゆるやかな丘の上に私は立っていた。見渡せば、北から南に、だんだん低くなっていく湖西連峰。今、新緑の淡い芽吹きと山桜のうす桃色が、まさに競演しているのだった。
こんな光景はきっと、今日だけのものだろう。だから、少しでもそばを通って帰りたい。
どことなく空の色が、
坂口安吾「桜の森の満開の下」
-四方の涯(はて)を虚空と象(かたど)るもの-
桜の美に堪能できる文学作品といえば真っ先に思い出されるのが「桜の森の満開の下」(坂口安吾)である。所属している読書会のテキストとして読んだのがきっかけであったが、読み終えて数年が経った今もなお、私の脳裡に面影を宿している。今こうして文章を書いている私の、ペンを握る手に何らかの影響を与えているのであれば幸いである。
四方の涯を桜のはなびらに塞がれ