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軍事要塞化する南西諸島映画。「戦雲(いくさふむ)」―①与那国島

沖縄本島、与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島など美しい島々で、日米両政府の主導のもと急速な軍事要塞化が進んでいます。

2015年の安保法制の成立後、どんどん戦争準備が進んでいく南西諸島を8年かけて取材したドキュメンタリー映画「戦雲」を紹介します。

監督はこれまでも「標的の村」「沖縄スパイ戦史」などで戦争と基地に翻弄される沖縄の理不尽な状況を告発してきた三上智恵氏です。

映画「戦雲」から見える沖縄南西諸島の実態とはどのようなものでしょうか。


現在起きていることのやばさは、米軍ではなく日本主導による自衛隊によって軍事要塞化されているのです。


与那国島

人口約1700人。
台湾に最も近い日本最西端の島・与那国に自衛隊の駐屯地ができたのは2016年3月28日、島の西側にあるカジキ漁で有名な久部良という漁師町です。

軍隊のなかった与那国島では最初は自衛隊の基地ができることに反対の声が圧倒的でした。
しかし、次第に島は分断され容認と諦めの空気が広がっていきます。

住民投票に向けて署名活動を行っていた島民も署名に協力してくれた人に圧力がかけられたことに責任を感じ、また島の分断が進むのを目の当たりにして孤立感を深めていきます。

自衛隊の経済効果に期待する人も多くいましたが、7年経っても生活は厳しくなる一方です。畜産農家を営む島民は子牛が競りで高く売れても、肥育のコストが高騰し赤字になると話しています。

自衛隊と米軍が南西諸島を戦場に見立てた軍事訓練を繰り返す中、2022年11月17日には与那国島に戦車が持ち込まれます。

自衛隊基地に反対する島民は、タイヤ仕様で作られた戦車と軍用車両が列をなして島の一般道を走っていく姿を見て涙を流します。


さらにその直後、与那国島には何も知らされないまま防衛省がミサイル部隊を配備すると発表。
これには自衛隊基地誘致派だった元町議や保守派の人々も反対しますが、糸数健一町長は議会に諮ることなく「町長権限」でこれを受け入れます。

2023年4月北朝鮮の軍事偵察衛星の発射に備え、地対空誘導弾PAC3が配備されます。
さらに島にはイージス艦も入港できる巨大な軍港計画が持ち上がっています。
加えて与那国空港を滑走路延長して戦闘機が使えるようにしようともしています。
与那国島全体を巨大な軍事基地にしようとしているのです。


2023年4月、与那国町ホームページに「島外避難実施要領」が掲載されました。
いつのまにか「島外避難区域」に指定されていたのです。
そのシミュレーションはとても現実離れしたものでした。
住民説明会も開かれますが防衛省の説明は十分ではありません。

会に参加した島民は言います「私たちは助けてもらえるような状況ではないんじゃないか。一番命を粗末に扱われている国民なんだということを町民に感じてもらい理解してもらいたい。」



軍隊のなかった与那国島が、あっという間に軍事要塞化されてしまいミサイル基地にまでされて真っ先に敵の攻撃を受ける場所になってしまいました。
島には頑丈な建物も地下設備もなく、いざというとき島民は側溝に身を伏せるしかない状況です。



「速攻で側溝に身を伏せる」と自虐ネタをとばすしかない島民たち。

国に住民の姿は見えているのでしょうか?



執筆者、ゆこりん


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