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「どうしたんです」
「いや」
「そんな顔は止めた方がいいです」
「まァ、しかし」
「どうしたんです」
「思ったことが全部、もう誰かに思われている気がするんだ」
「そんなものですか」
「この前、見下ろした」
「ええ、なんです」
「——地球は緑だった」
「そんな見方が、もう。ありますか」
「怪しいもんだ」
「まァ。けれど、それは兄さんどこにいるんです」
「どこって、遥か彼方さ」
「遥か彼方」
「ちょっと、あそこ」
「それは、ちょっと」
「気球でした」
「——気球。気球くらいで、地球は嘘です」
「どうして」
「地上で十分ですから」
「ふん。見もしないくせに」
「高い所は嫌なんです」
「——おい、だんだん気球の中にうずくまる弟の顔は、地球のように青かった」
「いいえ」
「乗ろうよ」
「僕は兄さん、地球から見てますよ」
「何色かな」

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