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その一言は、物語を生む。

目を引く言葉だった。

どうやらそれは、WBCの日本対中国戦後の中国代表ディーン・トレーナー監督の言葉みたいだった。

6日の強化試合の後、「もしも、可能なら大谷選手が球場入りする時に、タクシーやバスが遅れてくれることを願っています」とユニークな表現で心境を吐露するも、“白旗”を挙げたと報じられ、8日の前日会見では怒りを露わにしていた指揮官だが、報道陣から大谷対策を問われると、「残念ながら大谷投手は時間通りのバスに乗ってきた」とジョークで回答。続けて、「正直プランはあった。打席に立ったら、若いカウントから積極的に振っていこうというものだったが、我々の選手たちは忠実に守ってくれたものの、彼の力が上回った」と大谷のピッチングに改めて脱帽した。

THE DIGEST編集部より

中国代表ディーン・トレーナー監督が綴った言葉はどこか物語みたいに私に、印象的な側面を持たせた。

「Shohei今日出るの?」

我が家の、8歳の坊主が私に聞いてきた。それは、翔平ではなく、Shoheiだった。

子供には、特に野球について話した事はない。

いつの間にか野球の存在を知り、そのアイコンとなるような選手の名前を知っている事に素直に感心した。

「投げて打つみたいだ」

私は、言葉で発してやっぱり凄いことだよなと実感していた。

「それが、野球でしょ」

8歳の坊主は、私に諭すように野球を教えてくれた。

私は、中国戦を見ていて中国チームが楽しそうに野球をし、最後まで諦めようとしない姿勢にすごく惹かれた。

野球というマーケットが日本でとても大きな物を占めているのは理解出来る。加熱する報道も我々を煽って、そういう空気に乗っかるのも好きだ。

その裏で、ホームアドバンテージが凄すぎるのもとても気になる。対戦相手は、闘いにくいだろうなぁ。6年振りの大会なのにとお堅く考えてしまう。

と思いながらも、ついお祭り気分に乗じてしまう自分が好きだったりもするから、手に負えない。

スポーツを通じてのその物語が好きなのだと思う。そこに公平性の担保は考えない自分もいるのだ。難しい。

今回の、ディーン・トレーナー監督の一連の流れは、見事なまでのエンターテイメントショーだと思う。とても魅力的で、その裏のチームを率いる覚悟とメディアの矛先を自分に向けて、少しでも選手にプレッシャーがかからないようにするとても素敵な人柄を感じた。

だから、チームもあんなに楽しそうなのかなと感じた。

国全体が、大応援団になっている場所へ闘いに来て、色々な物を背負いながらも、選手を守りながら相手をリスペクトしつつ、自分達の矜持もしっかり示す。闘い終わった後に自分の発言を自分で昇華させ、誰も嫌な気持ちにさせていないし、まだ闘いは続くと思わせてくれる。

プロって凄いなぁ。と心から思えた。物を色々な側面から考えると、時間が豊かになる。ビールが美味しい。なるほど。野球は物語を考えるスポーツなのか。小説の行間を読むように感じた一日だった。

「時間通りのバスに乗ってきた」

こんな見出しになるような台詞を生涯一度で良いから発してみたい。

なんのはなしですか

何度も階段から降りてきて、その都度頭を下げて歩いてくるビール売りの売り子さんを見ながら、

「後何回登り降りするのだろう。そのビール全部買ってあげるから隣へどうぞ。」

と言ってあげたい妄想観戦している私には、程遠いはなしである。

「全てのビールを飲んだみたいだ」

こんな始まりでも良いかも知れない。

今日も応援します🍺




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