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僕の海と真偽がわからない目元の女性。村上筋肉倶楽部~奪取DASHダッシュ編~

僕が、ぎっくり腰になってからというもの僕の世界は、少しぎっくりしているようだった。それに気付いていたが気付いていないフリもしていた。僕は、僕の世界を取り戻さなければならない。

村上筋肉倶楽部~奪取DASHダッシュ編~

僕は、片道1時間かけて訪れたこの世界でいう商談に僅か5秒。水筒の蓋を開けて口に含んで味を感じる間もないほどの時間で断られた。

それに費やした時間は、合計すれば半日程だ。
僕の中で苦味が拡がっていた。

ぎっくりしている状況をジムにいる少しタイプの彼女に話したかったが、ぎっくりしているために会えない状況が余計に僕をぎっくりさせていた。

誰かに何かを言わなければ、決して取り戻せない。

僕は、僕の海に出掛けた。
何かを取り戻すには、何かを思い出さなければならない。僕は、僕の海に答えがある気がした。海には必然と必要な出会いを、今までも僕に与えてくれている。

僕は、僕の海を疑ってはならない。

僕の海は、太平洋を正面に左に江ノ島、右に富士山が見える。僕は、シーグラスを探しながら僕を取り戻すことに専念していた。

正面からよく吠える犬と、見た目にはつけまつ毛かまつ毛パーマかが、わからない女性が近付いてきた。

僕は、僕の海に犬と散歩する女性はよく見かけたが、よく吠える犬と真偽がわからない目元の女性のセットは初めてだった。

取り戻さないとならない僕は、普段なら話し掛けないが、僕の海から僕を問われている現状から彼女に話し掛けるしかなかった。

「僕は最近、ぎっくりしてるんです」

自然と出た言葉に女性より先に犬が吠え続けていた。

僕は犬に話し掛けたつもりはない。

僕の発言を聞き終えた、真偽がわからない目元の女性はもったいぶるように答えた。

「それは、本当にぎっくりしてる状況ね」

真偽はわからない目元からは、想像つかない大きな瞳のキレイな淑女だった。

「よく吠えるでしょ。吠えた先に何があるのかは、私には理解出来ないけど私は、よく吠えるマリンちゃんが好きなの」

海で、「マリン」という名の犬に出会った僕は、僕の取り戻しが近い事を察した。

「僕は、最近あまりにぎっくりしていてうまく取り戻せないんです。会いたい彼女にも会えない。筋肉が脂肪に変化していく毎日が耐えられないんです」

吠えるマリンちゃんを抱っこし真偽がわからない目元を上に向けて女性は、僕に話した。

「ねぇ。上見てみて。トンビがいるわね」

それは、僕の海ではお馴染みの風景だった。
旋回するトンビは何時ものように鳴いている。

「トンビとワシの違いわかる?」

真偽がわからない目元の女性は、続けた。

「大きさだけなのよ。大した話しじゃないの」

僕は、取り戻すタイミングを間違えなかった。

「僕の世界では、大きさの違いはタカとワシです。トンビではない筈です。そこには大きな違いがある」

真偽がわからない目元の女性は、大きな目を僕に向けた。

「そうね。では、こう聞くわ。それを問いただした今のあなたは、以前よりしっくりきたかしら」

僕は、ぎっくりがしっくり来た事実を告げられたことにびっくりしたが、それを悟られないように礼を言った。

「あなたは、僕がしっくりくるためにわざとぎっくりした質問をぶつけた。僕を救うためだ。あなたの真偽はわからないが、今の僕にあなたは必要だった。僕はあなたにお礼を言わなければならないね。僕は取り戻した」

真偽がわからない目元の女性は、その日一番の目元で確かに笑った。

「最初に言ったじゃない。私は私の役割りをしただけよ。すべき事をしただけなの。私はこの子が好きだって言ったでしょ。好きな子を助けるのならなんだってするわ」

マリンちゃんを抱いた、真偽がわからない目元の女性と吠えなくなったマリンちゃんは、僕を見た。

「やれやれ。弱い犬ほどか」

僕は素直に取り戻した実感を得て、次の日からまたしっくりな毎日を迎える自信を得た。僕は真偽がわからない目元の女性ともう吠えていないよく吠えていたマリンちゃんに感謝した。

「また、会えますか」

僕は尋ねた。

「その真偽はそれほど重要ではないわ。あなたの海は私の海でもあるの」

ちょっと何言っているかわからなかったが、納得したフリをした。

なんのはなしですか

僕が行かなければならないのは、少しタイプの彼女がいるジムだ。

僕はとりあえず海岸を齢四十にしてダッシュした。

筋肉が脂肪に変わりつつある事を実感したが、僕次第でそれを取り戻せる事を知った。

それはそれは、足が遅かった。

 人は僕を、湘南ボーイと呼ぶ。

何度も募集中なのに。

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