小林弘樹さん/Niigata Interview Magazine Life-mag.
これは、これからの働き方・暮らし方を考えていく人のためのインタビュー記事です。 「働き方・暮らし方を変えたい」と感じたとき、旅先で出会う案内版のような地図があったらいいな…と思ったことがきっかけで、この記事を書くことにしました。働き方と暮らし方が多様になった今、これからの一歩を踏みだすために、どんな道しるべがあったらよいのでしょうか。 多様な視点を求めて、新しい働き方と暮らし方を実践する10人の方にお話をうかがってきました。
知的に頼りにしている⼈に会いに⾏ったら、その⼈が自分の雑誌を頼りにしてくれてた。それってすごく、嬉しいよね。
⼩林弘樹|こばやし・ひろき
新潟市⻄蒲区⽣まれ。新聞販売店に就職後独⽴し、2008年にローカルインタビュー誌「Life-mag.(ライフ・マグ)」を創刊。取材、編集、営業、配達、全ての⼯程を⼀⼈で⾏う編集発⾏⼈。Lifemag.は2009年に休刊したが2012年に復刊し、2018年冬までに10号を発⾏している。
His works
Life-mag.は「大きいメディアに出てこない⼈たちを、丁寧に取り上げたい」という思いから⽣まれた。弘樹さん自⾝が「この⼈の⽣き方を残すべきだ」と思った⼈たちの、⽣き方図鑑のような雑誌である。制作⼯程を全て⼀⼈で⾏うことは「いつもしんどい」、⼀方で「孤独な時間が、物を書く・表現することの糧になるから」 と彼は⾔う。右の写真は創刊時から使っているボイスレコーダー。Life-mag.の全インタビューを共に聞いてきた相棒だ。
His point of view
⼀⼈で雑誌を作る理由を尋ねた。「⼀般的な雑誌は『需要がある』『流⾏している』とかマーケティングの発想で作ると思うんだけど、『資本に裏打ちされない、大切なものがあるだろ』と思ったから。⼀⼈でやるしかなかったし、『この⼈が良い』という独断と偏⾒は⼀⼈のほうができるから。
どんな経緯でその仕事をすることになりましたか
就活の時期は東京にいたんだけど、⽗親に「⻑男だから帰ってこい」と強く⾔われて。残りたい気持ちもあったけど、業界とか資格とか「これをやりたい」と⾔えることがなかったから帰ってきたんだよね。
帰ってからは新聞配達店に就職して、配達や営業で⼀軒ずつ家を回る仕事をしてた。回る中で、お⾦持ちそうな家も「⽣活が乱れてるのかな」と思う家もあって、地域の中に⾊んな⼈がいるなと感じてはいた。ただ感じていただけだけどね。
それが突如「自分で雑誌をつくろう」と思って。特別な⼈との出会いとか、良い本を⾒つけたわけじゃ無いのにね。上司に「辞めます」と⾔ったら「何いきなり⾔い出すんだ」と返された。そう⾔われても、俺にもなんでかわからなかったんだよね。なんでだったんだろうね。
大切にしたいことは何ですか
⼈のご縁を無理のないように背伸びしないで、たどっていくことかな。取材先・取扱い店も無理に⼿広くはしない。妙光寺院⾸の⼩川さん※1に、いつか会いたいと思っていたら他の仕事の取材でその⼈に会いに⾏くことができたんだよね。そしたら⼩川さんがLife-mag.を持ってきて「これを使って説明します」って(笑)。知的に頼りにしている⼈に会いに⾏ったら、その⼈が自分の雑誌を頼りにしてくれてた。それってすごく、嬉しいよね。
あなたの原点を教えてください
中⾼⽣の頃、それまでアメリカにしかなかったスケボー雑誌が⽇本でも発⾏されるようになって、それを読んでいたことかな。⽇本のスケーターたちによる、スケーターのための雑誌。それを⾒て「自分たちが『かっこいい』と思うものを、自分たちで作り、社会に提示できるんだ」と思った。その時の思いが、頭のどこかに残っていて自分で雑誌を作ることと紐づいたんだと思う。
時間の使い方について意識していることを教えてください
2年前に仕事場を自宅に移してから仕事の時間は減ったね。近くで事務所を借りようと思ったんだけど、でっかい⼀軒家しか無かったからさ。 結果的に今は家庭や家事の時間も多くなってるね。仕事をできるのは、⼦供たちが保育園と⼩学校に⾏ってる間か寝た後だね。思うように仕事ができなくて焦る気持ちはあるけど、今は家族を優先する時期なのかなと思ってる。
お⾦の使い方について意識していることを教えてください
よく⾔われることだけど、「顔の⾒えるところでお⾦を使おう」とは思う。Life-mag.を取り扱ってもらっている本屋さん、英進堂さん※2や北書店さん※3に集⾦に⾏ってお⾦をもらって、そのお⾦で本を買って。ツバメコーヒー※4というカフェでもLife-mag.を置いてもらっていて、友⼈と会う時にそこでコーヒーを飲んだり。仕事とプライベートが繋がっていくような、近いところでお⾦が回っている感じがあるかな。
働き方・暮らし方を変えようとしている⼈に伝えたいことはどんなことですか
自分の周りの環境を⽣かすとか、⼿持ちのもの、家族を大切にするとか、⾝の回りにあるものの中でちょっとずつ変えていくしかないんだと思う。置かれた環境で、調和を崩さないようにね。 活躍をしている⼈の姿をSNSとかで⾒ると、すごいと思うし焦るよね。そういう時でも「今は地に足をつけた⽣活をやるか、焦らず⾏こう」と思うようにして、ちょっとずつ変えていくしかないと思っているよ。
(取材⽇:2018年10⽉28⽇)
※1 新潟市⻄蒲区角⽥浜にある寺の院⾸、⼩川英爾⽒。
※2新潟市秋葉区程島にある書店。
※3新潟市中央区医学町にある書店。
※4燕市吉⽥にあるカフェ。店内に本棚があり、自由に本を読むことができる。
▼さらに詳しく知りたい方へ
Niigata Interview MagazineLife-mag.
(http://www.life-mag.com/)
読んだ方へのお願い
あなたがこの記事を読み、働き方や暮らし方について考えたことは、わたしたちがこれからを考えるための大切な道しるべになります。感想をお送りいただけることを、心からお待ちしています。 感想の送付は、moshimo.theater.info@gmail.comまでお願いします。
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