やまださおり

森の中の小さな珈琲店「森とコーヒー。」を夫婦で運営しています/40歳の女です/北海道大…

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森の中の小さな珈琲店「森とコーヒー。」を夫婦で運営しています/40歳の女です/北海道大学水産学部→食品分析会社に勤務→珈琲店運営(今ここ)/2017年に札幌から福岡県糸島市へ移住 /仕事の哲学、大人のための童話、エッセイを綴っていきます。

記事一覧

<大人の童話>回想スープ店の本日のスープ

ある北国の深い森に小さな町があって、その更に森の奥に一軒のスープ店があった。 町には他にもレストランがあったが、とりわけ1人で行くにはその店はちょうどよかった。 …

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1か月前
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<大人の童話>夜の森で耳をすませて。

ここは北国のとある森の中。ここに織りなすのはこの森にまつわるストーリー。 物語の中には、大人のあなたが忘れてしまった何かがきっと落ちている。 題名 夜の森で耳を…

やまださおり
7か月前
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<大人の童話>森のどこかにきっとある。

ここは北国のとある森の中。ここに織りなすのはこの森にまつわるストーリー。 物語の中には、大人のあなたが忘れてしまった何かがきっと落ちている。 題名 森のどこかに…

やまださおり
7か月前
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<大人の童話>それが森にないならば。

ここは北国のとある森の中。 ここに織りなすのはこの森にまつわるストーリー。 物語の中には、大人のあなたが忘れてしまった何かがきっと落ちている。 題名 それが森にな…

やまださおり
7か月前
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<大人の童話>森のほとりで会いましょう。

ここは北国のとある森の中。ここに織りなすのはこの森にまつわるストーリー。 物語の中には、大人のあなたが忘れてしまった何かがきっと落ちている。 題名 森のほとりで…

やまださおり
7か月前
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童話作りをはじめました。

私は現在「大人が読む童話」を書いています。 目的は私たちのお店「森とコーヒー。」の世界観を表現するためです。 私の見ている世界、感じて欲しい世界、それを伝えるた…

やまださおり
7か月前
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コーヒー屋になるまでの話。11

お店の強みは何ですか。 どんな「強み」を持つお店を作るのか。他の店と違う点はどこなのか。独立する時、自分たちのお店の強みはなんなのかを考える必要性を感じた。 当…

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コーヒー屋になるまでの話。⑩

そもそもなぜ「コーヒー屋」だったのか。 私たちがなぜ、コーヒー屋と言う業種を選んだのかの話をしたいと思う。 はじめに話しておきたいのは、私はコーヒー屋さんに憧れ…

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コーヒー屋になるまでの話。⑨

名前をつける。心に火が灯る。「森とコーヒー。」という店名が決まったのは、2017年6月5日だった。 それまで漠然としていたものの輪郭がはっきりとした瞬間だった。 その…

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コーヒー屋になるまでの話。⑧

異業種へ転職。洗礼を受ける。私はコーヒー屋を開業するためにふるさと札幌を離れて、福岡県糸島市という海が綺麗な福岡の片田舎へ移住をした。 2017年4月のことである。 …

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コーヒー屋になるまでの話。⑦

北海道から福岡へ車で移動。無職の時間。2017年3月17日。苫小牧港から「きたかみ」というフェリーに乗って移住地に向けての移動が始まった。 フェリーは仙台港に着く。そ…

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コーヒー屋になるまでの話。⑥

移住を決意、道は決まった。2016年7月2日〜7月4日の期間、福岡県糸島市に移住先検討のための旅行に出かけた。旅の帰り道にこの地に移住することを決断した。 糸島へ移住前…

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コーヒー屋になるまでの話。⑤

何をしたら、前に進めるのか。2015年12月27日、夫が初めてコーヒー豆の焙煎に挑戦した。 ガスコンロの上で網に入れたコーヒー豆を直火で焼く、いわゆる手網焙煎というやつ…

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コーヒー屋になるまでの話。④

会社に行けない、ダメ人間。 良性突発性頭位めまい症という病気になった。 原因は不明。文字通り頭の位置をダメな方向(この病の人は人によってNG角度があると思う)に動…

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コーヒー屋になるまでの話。③

お金がないと、はじまらない。カフェ開業はお金が無いとはじまらない。 開業のことは何もわからなかったけど、お金が必要なことは間違いなかった。夫も私も結婚前に貯金は…

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コーヒー屋になるまでの話。②

やめること、はじめること。コーヒー屋をはじめることは、元の仕事をやめることだった。 異業種への転職。 私は元々、食品分析検査会社の社員だった。夫は地方公務員。仕…

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<大人の童話>回想スープ店の本日のスープ

<大人の童話>回想スープ店の本日のスープ

ある北国の深い森に小さな町があって、その更に森の奥に一軒のスープ店があった。

町には他にもレストランがあったが、とりわけ1人で行くにはその店はちょうどよかった。
重たい木の扉を開けると壁側には大きな暖炉があり、中では太い薪が煌々と燃えている。
間隔の開いた客席。1人がけのテーブル。赤いベルベット生地の椅子。音楽はかかっていない。
薪が爆ぜる音がパチリパチリと耳に届く。

おしゃべりが似合わないこ

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<大人の童話>夜の森で耳をすませて。

<大人の童話>夜の森で耳をすませて。

ここは北国のとある森の中。ここに織りなすのはこの森にまつわるストーリー。
物語の中には、大人のあなたが忘れてしまった何かがきっと落ちている。

題名 夜の森で耳をすませて。森に夜がやってくる。そして全ての生き物は眠りにつく。

リスも、キツネも、クマも、その子供たちも、みんなみんなぐっすり自分の寝床で眠る。なんの不安もなんの心配もない。みんな好きな夢を見る。みんな明日のために眠る。

なぜならこの

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<大人の童話>森のどこかにきっとある。

<大人の童話>森のどこかにきっとある。

ここは北国のとある森の中。ここに織りなすのはこの森にまつわるストーリー。
物語の中には、大人のあなたが忘れてしまった何かがきっと落ちている。

題名 森のどこかにきっとある。

闇雲に森を歩く。

お母さんに叱られてあたしはとても機嫌が悪い。だってお母さんは何にもわかっていない。うちにはお母さんとあたししかいないから、絶対に喧嘩するわけにはいかないのだ。誰も止めてくれないし、仲間割れしたらお互い1

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<大人の童話>それが森にないならば。

<大人の童話>それが森にないならば。

ここは北国のとある森の中。
ここに織りなすのはこの森にまつわるストーリー。
物語の中には、大人のあなたが忘れてしまった何かがきっと落ちている。

題名 それが森にないならば。
がおお。
今日も山登りの人間を驚かせてリュックサックをいただいた。お目当てはこれだ。茶色くて甘くて口の中でとろけるチョコレート。森にあるどんぐりよりも、ベリーの実よりも、栗よりもずっと美味しいチョコレート。

俺は最近チョコ

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<大人の童話>森のほとりで会いましょう。

<大人の童話>森のほとりで会いましょう。

ここは北国のとある森の中。ここに織りなすのはこの森にまつわるストーリー。
物語の中には、大人のあなたが忘れてしまった何かがきっと落ちている。

題名 森のほとりで会いましょう。
森を歩き回って数時間経つ。日曜日、昼下がり、少しの散歩のつもりがずいぶん遠くまで来てしまったようだ。家からこんなに近くに豊かな森があるとは知らなかった。

気がつけば森の中の湖のほとりに立っていた。野球場くらいの小さな湖だ

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童話作りをはじめました。

童話作りをはじめました。

私は現在「大人が読む童話」を書いています。

目的は私たちのお店「森とコーヒー。」の世界観を表現するためです。
私の見ている世界、感じて欲しい世界、それを伝えるためには物語がいいのではと思いました。

当店では珈琲の他にもチョコレートやスコーン、オリジナルコーラなどを販売しています。
なんの脈絡もなく闇雲に商品を売るのは嫌いです。私にとっては「珈琲と相性がいいから」という説明のみで新商品を取り扱う

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コーヒー屋になるまでの話。11

コーヒー屋になるまでの話。11

お店の強みは何ですか。

どんな「強み」を持つお店を作るのか。他の店と違う点はどこなのか。独立する時、自分たちのお店の強みはなんなのかを考える必要性を感じた。

当時読んでいた開業の指南書には必ず書いてあった。

「あなたのお店のセールスポイントはどこですか。どんな方法で他店と差別化が図れそうですか。しっかり自己分析しましょう。」こんな類の言葉がプレッシャーだった。

親族を説得する上でも、お金を

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コーヒー屋になるまでの話。⑩

コーヒー屋になるまでの話。⑩

そもそもなぜ「コーヒー屋」だったのか。

私たちがなぜ、コーヒー屋と言う業種を選んだのかの話をしたいと思う。

はじめに話しておきたいのは、私はコーヒー屋さんに憧れていて長年コーヒー屋になることを夢見てきたわけでは無い。誰かをがっかりさせる発言かもしれないが正直に伝えたいと思う。

一番好きなことは仕事にならなかった。私は動物が大好きで、獣医さんになりたかったり、ドッグトレーナーになりたかったり、

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コーヒー屋になるまでの話。⑨

コーヒー屋になるまでの話。⑨

名前をつける。心に火が灯る。「森とコーヒー。」という店名が決まったのは、2017年6月5日だった。

それまで漠然としていたものの輪郭がはっきりとした瞬間だった。

その日から「森とコーヒー。」という存在に火が灯り、今日も私の心の中で同じ熱量で燃え続けている。

思い描いているものに名前をつける。そのパワーは偉大だ。

名前の決め方。「どうしてこの名前にしたんですか。」とよく聞かれる。

「森の中

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コーヒー屋になるまでの話。⑧

コーヒー屋になるまでの話。⑧

異業種へ転職。洗礼を受ける。私はコーヒー屋を開業するためにふるさと札幌を離れて、福岡県糸島市という海が綺麗な福岡の片田舎へ移住をした。

2017年4月のことである。

糸島はここ数年、関東圏からの移住者が多く「住みたい街」として人気だ。また観光客も多いため田舎に似合わずおしゃれなカフェやパン屋さんの数が多い。

夫は糸島のとある飲食系の会社に就職した。おやすみは木曜だけ。これまで週休二日、しかも

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コーヒー屋になるまでの話。⑦

コーヒー屋になるまでの話。⑦

北海道から福岡へ車で移動。無職の時間。2017年3月17日。苫小牧港から「きたかみ」というフェリーに乗って移住地に向けての移動が始まった。

フェリーは仙台港に着く。そこから陸路で福岡県糸島を目指した。全行程6日間の車の旅だ。

札幌最後の夜はもう家も引き払っていたので夫の実家に泊まった。次の日私の実家に立ち寄って、その足で苫小牧へ。

この土地を離れるという感覚。2度とこの車で同じ気持ちでこの道

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コーヒー屋になるまでの話。⑥

移住を決意、道は決まった。2016年7月2日〜7月4日の期間、福岡県糸島市に移住先検討のための旅行に出かけた。旅の帰り道にこの地に移住することを決断した。

糸島へ移住前に4回ほど訪れました。(夫は会社の面接があったので5回来ています)この決定打になった7月の旅の前に1度、その後2回。移住前にこういった事情でまぁまぁお金がかかるのは言うまでもないですね。

移住したのはなぜかよく聞かれます。私は暖

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コーヒー屋になるまでの話。⑤

コーヒー屋になるまでの話。⑤

何をしたら、前に進めるのか。2015年12月27日、夫が初めてコーヒー豆の焙煎に挑戦した。

ガスコンロの上で網に入れたコーヒー豆を直火で焼く、いわゆる手網焙煎というやつだ。

カフェを開業しようと決めて、お金を貯め始めてはいたけれど、他に具体的に何をしたらいいのかわからなかった。飲食店で働いて修行?カフェの専門学校に通う?コーヒー関連の資格をとる?

あの頃の自分にアドバイスできるなら、「とにか

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コーヒー屋になるまでの話。④

コーヒー屋になるまでの話。④

会社に行けない、ダメ人間。

良性突発性頭位めまい症という病気になった。

原因は不明。文字通り頭の位置をダメな方向(この病の人は人によってNG角度があると思う)に動かすと急に回転性のめまいがやってくる。危険なのは寝ている状態から起き上がる時。いまだに発作的にめまいは襲ってくる。治ってないのだ。良性だし生活は緩やかなのでほっておいている。しかし朝9時から始まる仕事に週5ではもう行けないだろう。なん

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コーヒー屋になるまでの話。③

コーヒー屋になるまでの話。③

お金がないと、はじまらない。カフェ開業はお金が無いとはじまらない。

開業のことは何もわからなかったけど、お金が必要なことは間違いなかった。夫も私も結婚前に貯金はほとんど無かった。

2015年9月2日に、

・あと1年半今の職場で働いでお金を貯めること

・一緒に暮らすこと

・結婚すること

を決定した。

30歳を越えていた私は結婚に対してそんなに思い入れはなく、流れみたいな感じで結婚を決め

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コーヒー屋になるまでの話。②

やめること、はじめること。コーヒー屋をはじめることは、元の仕事をやめることだった。

異業種への転職。

私は元々、食品分析検査会社の社員だった。夫は地方公務員。仕事をやめたいという積極的な気持ちは正直なかった。でもやりたいことができてしまったのだ。

前職のことは、好きだった。私は大学院卒業後に会社に就職した。本当は大学で研究者になろうと思っていた。海洋生物の行動生態学を専攻していた。論文を書く

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