雪の日に読みたくなる絵本
息子が10歳頃までは、毎晩、夜眠る前に日本語の絵本の読み聞かせをしていた。
読みながら幼い頃の情景がよみがえり、自分も子供に帰ったような心持ちになることもよくあった。
子育てとは、かつては自分も子供だったことを思い出す時間でもあるのかもしれない。
夜の間にしんしんと降り積もった雪道を歩いて、青梗菜を買いにアジアンマーケットへ行った。
歩きながら、『しんせつなともだち』という絵本が頭に浮かんだ。
たくさん雪が降った日、山に住む動物たちは、お互いが友達のためにカブを届け合う、というシンプルなストーリーだが、思いやりの連鎖が描かれ心温まる。
表紙の、耳に穴のあいた頭巾を被り木靴を履いたウサギの絵を見ただけで、惹きつけられる。
動物たちがレトロだけど妙におしゃれな服を着ていたり、それぞれの家の中が素敵に描かれている点にも注目。
挿絵を描いた村山知義は、第一次世界大戦後のベルリンへ渡りドイツ表現主義を吸収し、帰国後は前衛グループ「MAVOマヴォ」を結成し活躍した前衛芸術家。
この絵本は氏の晩年に描かれたもので、かつてアバンギャルドの寵児として難解な作品を発表していた人と同一人物とは思えない程、素朴な愛らしさのある絵だ。動物たちの表情も味がある。
この絵本は、まだ日本に住んでいた独身時代に手に入れたもので、その頃は自分のために気に入った絵本を買い集めていた。
エズラ・ジャック・キーツ 作『ゆきのひ』は、息子のために、一時帰国の際に絵本の古本屋さんで手に入れた。
切り紙で表現された、優しくノスタルジックな色彩も素敵な一冊。
ピーターが朝起きると外は一面雪が降り積もっていて、雪山を滑り降りたり、雪合戦をしたりと、いろいろな発見をしながら遊ぶという話も、極寒の冬でも元気に外で遊ぶ、こちらの国の子供たちを彷彿とさせる。
この絵本は息子もお気に入りで、主人公・ピーターの名前を自分の名前にして読んで欲しいというので、ラストに出てくるピーターの友達も息子の幼馴染の名前に変えて、何度も読んだ。
3冊目は
ユリ・シュルヴィッツ 作『ゆき』
これも息子へと言いつつ、自分が手元に置きたくて買い求めた絵本。
こちらの国も、雪が降る前の街は暗く重い灰色だけど、ひとたび雪が降り出すと風景は一変する。
辺り一面に雪が降り積もった街は、輝くような雪の白さが反射し明るくなるので、人々は雪が降ることを歓迎している。
この国のそんな風土にもぴったりの絵本で、「わーい、ゆきだよ!」と喜ぶ少年と息子の姿が重なった。
同じくユリ・シュルヴィッツ 作の『よあけ』も好きな一冊だ。
日本語訳が秀逸で、"やまが くろぐろと しずもる" などという言葉使いが、まるで俳句でも詠んでいるような印象。
森の中に建つ湖畔のサマーハウスで過ごす、この国の夏の朝を思い起こした。
家のすぐ脇にある急な石段には分厚い氷が張り、ほぼ段差がない状態になってしまった。
そこをこの国の民たちは、手すり伝いにシュルシュルッと滑りながら降りてゆく。まるで忍者みたい!?
私は怖過ぎて、へっぴり腰で這いつくばるように上り下りしている始末…。
これでも雪国出身のはずなんだが…。
氷よ、早く溶けてほしい。
おまけ
雪の日に聴きたくなる音楽。
寺尾紗穂さんのユニット 冬にわかれて『snow snow』
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