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先生と子どもの関係性の重要性 & 子どもの攻撃性への対応 

暴力的行動や反社会的行動の発生、持続、慢性化とその影響を減らすためには、就学前の段階で介入することが重要である。また、いじめが被害者に与える影響は計り知れない。被害者の多くは、学業成績の低下、自尊心の低下、社会不適応、うつ病、自殺願望などで生涯苦しむこともある。

攻撃性はどのタイプにおいても、遺伝子と環境の影響を受けている。そのため、気質的に攻撃的な子供もいる。Romero-López,Mらの研究によると、攻撃性は抑制や感情のコントロールと相関しており、抑制や感情をコントロールする能力が高まると攻撃性は低下する。また、攻撃的行動は段階的な発達の結果であり、思春期や成人期に単独で現れるのではなく、幼少期から始まり、年月が経つにつれて強くなっていくことを示している。

道具的攻撃性とは、子どもが欲しいものを手に入れるための衝動的で感情的な自己中心的行動である。2歳から6歳の間に見られる。この年齢では、道具的攻撃性の使用は正常で適応的であると考えられている。道具的攻撃性の最初の徴候は1歳以降に現れ、通常、咬む、おもちゃを投げる、叩くなどの行動をとる。これらの行動は一般に欲求不満の結果であり、本質的に反応的で、危害を加えることを意図していない。道具的攻撃性は増加し、2歳頃にピークに達する。2歳頃では、攻撃的な行動は、おもちゃを手に入れたり、守ったりするため、あるいは目的を達成するために行われる。その後、一般に制御力と感情調節の発達に伴い、道具的攻撃性は減少しはじめる。

関係性攻撃性とは、集団からの排除など被害者と他者感の社会的繋がりを傷つけることを目的とし、自尊心を傷つけるような個人攻撃を伴う非物理的な行為である。就学前では、4歳を過ぎた頃から男児よりも女児の方に多く見受けられる。また、仲間内でのいじめは、中学生頃に最も多く見られる。10代の若者のいじめは自我形成期において社会的地位を確立し、維持するためにも行われる。いじめの要因には、退屈さ、仲間からの圧力、低い自己評価、競争、学習された行動などがある。

以上の学びと私の経験に基づき、特に幼児から学童期における子どもの攻撃性に対するクラス内での具体的な対処法を6つのステップとして提案したい。

1.    子ども一人ひとりを理解する 


子ども一人ひとりの心理発達段階(認知力、理解力、アウトプット力を含む言語・コミュニケーション力、感情コントロール、制御力など)を観察、攻撃行動が起こるパターンを知り、事前に対処法を考える。子どもの発達段階に応じて、子どもができる最初のステップを確立する。

2. 子どもの自尊心を育てる


どの子どもに対しても、笑顔で親切と好意を示す。小さな達成を一緒に喜ぶ。好ましい行いを常に認め、感謝の気持ちを表す。失敗してもやり直し、小さな成功に終わらせる。

3. 子どもの信頼を得る


幼稚園や保育園は家庭の外での最初の社会であり、先生や保育者(以下先生)は家庭の外での社会的権威である。また、子どもが親以外の大人について学ぶ最初の機会でもある。先生を通して人に対する基本的な信頼を得られるかどうかで、子どもの将来の先生観、人間観が変わってくる。まず、先生は子どもにとって安全基地でなければならない。子どもからのアプローチを見逃さず、耳を傾け、子ども一人一人の異なるニーズにできるだけ応え、子どものフラストレーションを軽減する。できる限り「いいですよ」と要望を実現させる。あるいは「ごめんなさい、今は(それは)このような理由でできません。代わりに〇〇をしませんか?」と提案する。親密さを築き、感情的なつながりを得る。親密さとは、子供が "この先生が好きだ"、“この先生は味方だ”、"この先生なら信頼できる "と感じることである。先生は時にユーモアを交え、子どもの笑いを誘う。楽しい経験を共有する。つまり、先生は常に指示や命令をするのではなく、一緒に遊ぶ時間を設ける。先生は子どもを一方的に怒らず、常に冷静で、前向きで、一貫した態度で子どもと接する。子どもは成長できる存在であると先生が信じる。そのためには、子どもの選択を待ち、認めることも必要である。前述したように、先生は遊びの中で子どもとの間に親密さと信頼関係を築き、対話のスキームを確立させておく必要がある。子どもは楽しんでいるときほど、積極的にコミュニケーションをとろうとするものだ。(もっと!もう一回!私の番、お願い、○○したい、など)この対話のスキルが社会性を育む。

以上の対処法を通じて情緒的な絆や信頼関係、子供の安心感が素地となり、対話が可能になり、子どもたちが好ましくない行動をとったときに、先生からのアプローチに耳を傾けやすくなる。
以下の対処法は、主に先生が子ども間のダイナミクスを予測し、クラス内の衝突を減らし、子ども同士の親密さを促進するためのガイドである。

4. 子どもたちの仲間同士の交流を促進する


先生は優しい励ましの言葉や思いやりのある行動を見せ続ける。そのような光景を毎日見ることで、子どもたちは安心し、リラックスし、真似をするようになる。引っ込み思案な子どもの参加を促し、攻撃的な子どもから守り、攻撃的な子どもに対抗する方法を与え、自信をつけさせる。

5. 子ども同士の争いを仲裁する


身体的な攻撃が起こりそうな状況で、当事者達に話しかける。争いが起きたら、まず物理的な攻撃を止める。その後、何が起こっているのか質問し、子どもたちの意図を聞き出す、または代弁する。友だちが怖がっている、悲しんでいるなどの状況を認識させ、先生は被害者と加害者の両方に共感を示す。子どもたちだけで問題を解決できない場合は、選択肢を提示したり、交渉のスキルを身につけさせたりして、子どもたち自身が誇りを持てるような選択をさせる。解決策を見つけたり、良い行動を選んだりしたことを褒める。

6. 社会的ルールのガイドとなる


子どもが同じ攻撃的な行動を繰り返す場合、規範を伝えるための介入が必要となる。介入とは、有無を言わさず、先生の判断や教室のルールに基づいて一方的に指示・決定することである。まず、先生は子どもの気持ちを認識させ、話し合う。(今怒っているね、今泣いているね、悲しいね) 子どもが圧倒されている場合は、子どもが落ち着いて対話できるようになるまで、一緒に安全な場所で待つ。先生は、子どもが攻撃的になる理由や、子どもの持つフラストレーション、満たされていないニーズなど、子どもの気持ちを理解する。子どもに "I-message"(私は悲しい、先生は心配だ、など)を伝え、攻撃的な行動が子どもに与える影響を示す。(子どもが先生を慕っていなければ、効果はない。) 子どもに、身体的または言葉による暴力や攻撃は容認できないことを教え、必要であれば、その行動に伴う不都合な結果を説明し、与える。攻撃的な行動に代わる健全な方法を一緒に考え、実践する。(例:得意なことで注目させる、支援的な役割を与えるなど。) 子どもが自分で判断できるように説明し、情報を与え、子どもが自発的に行動するのをできるだけ待ち、子どもが行動を良い方向に変えたら褒める。これらの介入はできるだけ最小限にとどめ、子どもの気持ちのリセットを促す。子どもの良い点にできるだけ注意を向けるためだ。それによって子どもの自己認識が変わってくる。これらの処置は最初のステップで説明したように、子どもの発達上適切なものでなければならない。

最後に、私は先生と生徒の関係の重要性を示すラニオンズらの研究の結論に同意する。先生−子ども間の関係性は、子ども間の社会的力学に影響を与え、それによって教室における複雑なリスクと保護のプロセスに貢献する。子どもが攻撃性を示した場合、その場で注意するだけでなく、日頃からポジティブな関係構築のための土台を築いておくことが必要である。

幼児期の介入の目標は、幼い生徒が自分自身の行動の達人になるのを助けることである。特に、共感と抑制や感情コントロールの発達を促す研究やプログラムが存在する。以下はその例である:

  • Banking time approach by the University of Virginia. Enhance the positive relationship between an educator and a child.

  • Tools of the Mind: The Vygotskian Approach to Early Childhood Education.

  • The Chicago School Readiness Project (CSRP).

  •  Executive Function Training designed by Traverso, Viterbori, and Usai.

  • POP-UP festival by UNICEF & sixseconds: Activities to help children grow their emotional intelligence.

参考文献:
・Berger, K.S. (2020). Developing person through childhood and adolescence. Worth Publishers. (12th ed., pp.278-280.)
・MentalHelp.net. (n.d.). Early Childhood Emotional and Social Development: Aggression
・Gordon, S. (2022. November 4). What is relational aggression?
・School of education and human development castl (n.d.). Guide to banking time.
・Runions, K. C. & Shaw, Thérèse. (2013). Teacher–child relationship, child withdrawal and aggression in the development of peer victimization. Journal of Applied Developmental Psychology, 34(6), 319–327.
・Romero-López, M., Pichardo. C. M., Justicia-Arráez, A., and Bembibre-Serrano, J., (2021, May 18). Reducing aggression by developing emotional and inhibitory control. Int J Environ Res Public Health. 2021 May; 18(10): 5263. 
・Sixseconds. (n.d.) Welcome to pop-up festival
・Green local schools. (n.d.) Effective ways to reduce aggression.


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