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支援者との関係性についての問題提起◆『自閉女(ジヘジョ)の冒険 モンスター支援者たちとの遭遇と別れ』で書いたテーマとは

 自閉症当事者であり、高齢ひきこもりでもある私にとって、3作目の手記となる『自閉女(ジヘジョ)の冒険』は、今(2020)から31年前に、自閉症でひきこもりの当時の若者が、支援者や相談の場や社会的居場所を探す物語であり、障害がある人の不登校の《その後》を描いた実話である。
 今日でこそ不登校とひきこもりは同列に語られる機会も増え、不登校の支援者がひきこもりの支援者を兼ねるケースも決して珍しくなくなったが、少なくともその当時にあっては、不登校支援者たちが大人のひきこもりを受け容れたり、その声に耳を傾けている訳ではなかった。
 そうしたなかで、例えば私のような、発達障害を伴う高齢ひきこもりがまだ若かったころ、どのように支援者や相談の場を探していたか、どのように彼らと繋がろうとしていたか、また当時の支援者たちがどういう対応をしていたか等について、本書がその一端を知る一助となるなら幸いである。

 近年、「50・80問題」として知られるようになった高齢ひきこもりだが、発達障害にせよ、ひきこもりにせよ、年長・高齢の人たちへの支援は、(本書でも描いたように)若年層に比べて常に後回しにされてきた歴史があるため、例えば私ぐらいの世代の当事者は、長らく相談の場に恵まれなかった。
 にもかかわらず、その実情は世の中にほとんど知られていないので、大人のひきこもりを長年取材しているはずの某有名ジャーナリストからすらも、「どうして相談しなかったのか」と書かれてしまう。
 願わくは、すでに親を亡くしたり、そうなることを不安に思っている発達障害・ひきこもり当事者やその家族が、嘲られたり足を引っ張られたり悪者にされることなく、安心して相談できる《心の駆け込み寺》のような場所、肩の荷を降ろせるところ、ニーズを支援者や研究者や行政に知ってもらえる機会が必要だと思う。

 私は、自閉症者が支援者の援助を得るには、3つ(もしくは4つ)の困難(ハードル)があると考えている。
 それらの困難とは:
 ・声を上げることができない
 ・声を上げても支援者に届かない
 ・支援者との関係性を得ることができない
という、3つである。そしてそれらは、
 ・支援者たちから排除される、嘲られる、嫌われる、マイナスの人脈の形成
という、4つ目の困難を引き起こす。
 そしてそれは、往々にして、支援者による暴力的支援(言葉や態度の暴力を含む)を招き、とりわけ有力支援団体から“嫌われた”場合には、支援者と活動家たちのネットワークやコミュニティ、ひいては支援システムそのものからの排除に繋がることになる。
 本書の主にⅠ章とⅡ章では、それら一連の困難について書き著わした。

 “支援者”というと、その字面からついつい“助けてくれる人”と安易に考えがちで、とくに苦しいときには藁にもすがる思いでそうした支援者に頼りがちである。
 しかし本書でも描いた通り、とても支援者とはいえない支援者もいるのが現実で、相談者の人権を侵害し、無力な一個人でもある障害当事者に、集団で対峙する人たちも存在する。
 そういった問題のある支援者や支援団体、社会運動家に限って知名度と社会的影響力があり、立法にも関与し、自分たちのところに公金が投入されるよう画策し、また各種メディアで取り上げられ好意的に紹介されているという、残念な現実がある。
 ともすると国民と利用者を欺きかねないそうした状況のなかで、本書が《支援者リスク》について広く世の中に啓発することは、公益にかなうことだと思う。

 奇しくも、本書が出版された2020年2月には、某有名老舗フリースクールによる性暴力事件が発覚した。
 その事件は表沙汰になるまで、なんと20年間も隠蔽に成功し、それまでその当該団体は、なんら社会的制裁を受けることなく、子ども・若者の味方を標榜していたが(その間、被害者がずっと悶々とし続けていたことは想像に難くない)、もしその被害者が裁判に打って出ることがなければ、その事件は、永久に闇に葬られていたに違いない。
 こうした支援者による虐待・事件は、氷山の一角といえよう。

 私は、不登校支援の人たちが、学校で疲れた人のオアシスになり、いじめで傷ついた人たちの居場所になり、その話を聴いて寄り添い気持ちをケアしてくれることがあってもいいと考えている。
 だが(少なくとも私が経験した限りでは)実際に待ち受けていたのは、いじめ被害に遭って助けを求めている人を、更にいじめで追い込むことだった。

 本書は30年越しの“昔話”ではあるものの、本書のⅠ章とⅡ章では、そんな当時の不登校支援者たちの対応を暴露した。
 Ⅲ章とⅣ章は、主に《親亡き後》の話である。
 本書を通じて、自閉症の人が相談したり、支援者たちと繋がることが、どんなに困難なことであるかを、また、一部の心ない支援者たちや活動家たちによる差別やヘイト等の実態について、とりわけ教育・福祉の心ある専門職の方々にわかっていただけるなら幸甚である。◆

(なお、この本文は拙著『自閉女(ジヘジョ)の冒険』の「おわりに」から一部、転載のうえ加筆して提供しております。)

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(※覚え書きやつぶやき程度のことは、今後も書くかもしれません。)

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