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入院雑記vol.4『毒親』

わたしは、病棟の廊下から
まっすぐ一直線上に突き当たる壁に向かって、
自分のiPhoneを投げたことがある。
当然そのiPhoneはぶっ壊れて、
今は修理したものを使ってこれを書いている。

(野球部の青春話を連想させる、
 さわやかな始まり方をイメージして
 書いたものの、現実は奇なり。
 ぜんぜん違和感まんさい、謝罪。)

なぜ投げたかというと、
モラハラ気質で人を理解できない上に
攻撃、粘着してくる毒父から、

休む間もないくらい、ずっとずっと
ひっきりなしにかかってくる鬼電に
頭が気を狂いそうになるのを
なんとか耐えていたんだけど、

鬼電から出ないとわかると、
今度は無理やり面会しようと
わたしの病棟に来やがったからだ。

わたしは、父とは『面会拒否』だと
看護師には伝えていた。
だけど、入院病棟の出入り口は
ガラス張りになっているため、
来客の顔が見える。

なので、面会拒絶でもガラス越しから見える
毒父に顔を合わせたくなかった。

だけど、その時は、タイミングが悪かった。

わたしは詰所に行って、
父が鬼電をかけてくるから
ソーシャルワーカーさんに連絡を入れて
対処してくれないかと
お願いするつもりだった。

だが、詰所の前は出入り口になっていた。
そして、先ほど述べた通り、
そこはガラス張りで、来客の顔が見える。

ふと視線を出入り口にずらすと、
そこには、毒父が立っていた。
面会希望を出そうと、看護師と話をしていた。

娘には、狂ったように鬼電をかけておいて、
その異常さにも気づかず、
看護師には人面のいい雰囲気で
面会希望を出そうとしている、毒父。

その顔を見た瞬間、
その目が合った瞬間、
今まで、粘着されて、
ストーカーのようにしつこい、
気持ち悪い毒父の行動のその数々が、
それを我慢してきたわたしの割れかけの器が、
思いっきり弾け砕けた感じがした。

気づいたら、詰め所の奥にある、廊下の方へ
走り出し、手に持ったものをぶん投げていた。

昔からキャッチボールが得意だったわたしは、
50メートル以上の距離をノーバウンドで
投げることができた。

小学校のころは、体力測定のソフトボール投げでこの能力を発揮しては、同級の男の子に
きらきらした目で尊敬されたものだった。

だけど、今回、わたしが投げたのは、
それは高価で貴重なiPhoneだった。
別にiPhoneを投げたいと思った訳ではない。
たまたまその時に手に持っていたのが、
iPhoneだった。

50メートル以上投げられる私にとって、
あの廊下の距離は大した距離ではなかった。

それに、感情的に揺さぶられていた
わたしの送球(送iPhone?)スピードは、
癇癪のパワーで威力を増していた。

わたしは文字通り、
自分で、iPhoneをぶん投げて、破壊した。

わたしにぶん投げられたiPhoneは、
壁を思いっきり殴ったような大きな音を
響かせた。

音にびっくりした看護師が、
わたしに駆け寄ってくる。

わたしは壁まで逃げ走ると、
隅に立ち止まり、その場でうずくまった。
涙と鼻水が溢れ出すぐしゃぐしゃの顔で、

『気持ち悪い、気持ち悪い』
と大声で繰り返した。

本当に本当に、本気で死にたかった。

『気持ち悪い、全部が気持ち悪い』

『しにたい』

『全部が無理』

『もう限界』

『どうすればいいかわかんない』

涙が止まらなかった。頭をグーで殴り、
髪の毛を思い切り引っ張った。
髪が細いので何本か抜けた。

毒父も含めて、
泣いている自分も気持ち悪かった。
というか、本気で何もかも全部無理だった。

側から見れば、完全にヤバい患者だった。
でもそんなことはどうでもよかった。

とりあえず、感情が収まるまで、
その場でぐずぐずわたしは泣いていた。

看護師さんはわたしが落ち着くまで、
そばにいてくれ、慰めてくれた。

気づいた時には、
ガラス越しには、もう毒父はいなかった。

落ち着いた後、看護師に聞いたが、
投げた瞬間、帰っていったという。

iPhoneを拾って
液晶画面をみると、粉々になり、
内蔵されたメモリも飛び出ていた。
完全なる、破壊。
ご臨終。合掌である。

このiPhoneは
壊れそうなわたしのかわりに
壊れてくれたと思うことにした。

目の周りがピンク色に腫れ上がり、
涙の塩が乾いたのが下まつげに張り付いた。
病みメイクのアイシャドウのようだった。



もちろん、ものに当たったことは反省したい。

落ち着いた今でも、
絶対に許せない。許せないどころか、
はやく⚫︎んでほしい。それを願ってる。

もう二度と関わって欲しくないとそう思ったし
未来永劫、二度と関わるのをやめると誓った。

ただ、破壊して以降、
良かったことも多々ある。

まずは、今回のことで
閉鎖入院に逆戻りだと思っていたけど、
そのまま任意入院のままでいられた。

そして、
父との連絡手段を完全に断つことができた。

iPhoneの修理期間中、
デジタルデトックスができて
頭の中がスッキリした。

なによりも、iPhoneを観るかわりに
本を読むようになって、
読書が好きだったことを思い出せた。

この良かったことだけを抱きしめて、
恨めしい血で繋がっている毒父のことは
忘れて、わたしが蔑ろにされた分、
わたしのために生きていきたいと思う。

それくらい、わたしはよく頑張ったし、
これからも頑張っていると思う。

PS お通じがあまりよくないから
売店でヨーグルトを買った。
その時の写真。手が痩せてる気がする。

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