小説「なめらかに輪郭」2
私が住む芸大から徒歩20分のアパートは、
色鮮やかな屋根の一軒家や、首が痛くなりそうなほどの高階層マンションとは違って、
情報量の少ない簡素な作りで出来ていて、
風景とは浮いて存在している。
無機質なコンクリートの色味と、
アパート全体のシルエットが豆腐のように
正方形でつるんとしていて、
無駄な装飾が一つもないからだ。
でも、オートロックと宅配ボックスがあって、危険人物はもちろん、善意を持って荷物を運んできてくれる配達の人さえ会う必要がないシステムは、人見知りの私にとっ