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2023年詩

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#言葉

196「詩」そのままに

196「詩」そのままに

思いもよらない受け取り方をされる
そんな思いは一欠片もないのに
どうしてそんな受け取り方をしてしまうのか
不思議でたまらなくなる

心の中を事細かに説明したところで
放った言葉は言い訳だけに聞こえるだろう
受け取る器が違えば違って見える
そっとそのままにしておくしかない

同じものを違った方向から見るから
平面は立体になって
奥行きを増す
時間の流れの中で
形を変えていくことも出来る

いったい私

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195「詩」誰かのもとに

195「詩」誰かのもとに

言葉は 空から降ってきた
誰かを傷つけるためでなく
誰かを温めるために
ひらりと手のひらに 
止まった

そっと手のひらを口元に寄せる
いい香りがする
蝋梅に似た言葉の香りだ
香りが消えないように
手のひらを固く閉じる

閉じたまま大急ぎで走り始める

冷たい手足のまま
立ちすくんだままの誰かのもとに
言葉の香りを届けに

193「詩」夜明けの光景

193「詩」夜明けの光景

ありきたりの言葉で伝えるのが
そんなにだめなことでしょうか
ありきたりの言葉を歪めて
奇妙で思いのない言葉を
パズルのように
理論だけで組み立てていくことだけが
評価されるのでしょうか

夜明け前
静けさが凍ってガラスになっている
ガラスの地面を傷つけないように
そっと言葉を探しながら歩いている

世の中で評価されない言葉たちが
誰かに届くかもしれない
言葉たちが誰かの心を一瞬でも
温めることが出

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190「詩」縄

190「詩」縄

生まれ落ちたその瞬間から
背負っている重荷がある
重荷に気づく時がやがて来る

人の言葉が縄目のように捻れている
言葉の奥で気持ちが捻れ
心が重く硬い塊になる

ぶつかり合う塊

縄目を解いてしまえば
毛羽だっているけれどまっすぐな縄だ
ぶつかり合っていた縄が平行になる
並行になった縄は
まっすぐにまっすぐに見えなくなった
その先でもぶつかり合うことは
けして ない

地層になって
どこまでも伸び

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173「詩」書いている

173「詩」書いている

誰にも読んでもらえない思いを
ひっそりと書いている

誰かに評価されることなど
どうでもよく
言葉を編んで
ひっそりと

思いを受け取ってくれる
誰かがいる

きっと

その人のために
書いている

わたしの悲しい思いが
その人と響きあうために
ひっそりと書いている

158「詩」言葉

158「詩」言葉

あなたのためです

たくさん聞いてきた言葉です
言われたことをやってみても
わたしのために
役立ったことはありません

あなたのためです

わたしのために言ってるのではなく
あなたが満足するために
言ってる言葉だったりします

あなたのため
言おうとしたその瞬間

心静かに
何度も自分に問います
ほんとうにあなたに必要な言葉かどうか

あなたにとって
重荷だけ与えてしまわないか
あなたにとって

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148「詩」ヒラミさん

148「詩」ヒラミさん

ヒラミさんは
産まれて3ヶ月で私のところに来ました
オレンジ色の小さな猫だったので
ヒラミオレンジから名前を付けました

半年過ぎて
10キロちかくある
大きな猫になりました

ヒラミさんには未来も過去もありません
今という時間のなかで
精一杯遊び
精一杯食べて眠ります

ヒラミさんには悪意がありません
かといって善意もありません
お腹が空いたら食べる
眠くなったら眠る
遊びたくなったら遊びます

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134「詩」お母さんの言葉

134「詩」お母さんの言葉

あなたが大好きだよ

大昔から使ってきた普通の言葉だから
新鮮味がありませんか
確かに
お母さんが子どもを思う気持ちは
大昔も今も変わらないものです

時を輪切りにしたら
どこを輪切りにしても
同じ温度の
お母さんの気持ちが
はじけます

普通のお母さんの
大好きだよというありふれたの言葉が
ひとつひとつ違った子どもたちの心に
飛び立っていきます

届くことなど期待しないで
まして見返りなんて微塵

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118「詩」思い

118「詩」思い

思いがいっぱいあるのに
伝える言葉が見つからない

とても大切な思いが
伝えてもらえないことに疼いている

なにか大切なものを落としてきた
歯がゆいままだ

徐々に濃くなる空に
浮かんだ月が明るさを増していく夕べ

今日と明日を分けるように
飛行機雲が一筋伸びていった

111「詩」言葉

111「詩」言葉

美しい言葉を見つけて
文字にしようとすると
言葉はどんどん自分から離れていく

昨日までなかった新しい言葉を
文字にしようとすると
聞き飽きてうんざりする言葉になってしまう

もっとわたしを見つめて
もっと心の中を見つめて
汚いものがあったらそのまま
恥ずかしがらずにそのまま

そんなことは分かっていても
なんなんだ 邪魔するものがある
どうせこんな自分なのだと
たかを括って諦めればいいだけなのに

97「詩」待つ

97「詩」待つ

言葉が
降りてこない
重い雲が頭上を取り巻いて
頭の中に入り込んできてるので
思いが厳重に囲われてしまって
言葉まで辿り着けないでいる

声が
出せない
喉の奥深くもやもやした
納得のいかないものが張り付いているのに
声帯を固く縛り付けてしまう
モノがある

もがいた先に
何もないかもしれない

不安ばかりが部屋の中に溢れ出す

それでも
もがいた先に
一輪の花が咲いているかもしれない

溢れ出し

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91「詩」なさけない

91「詩」なさけない

思いがこんなにたくさんあるのに
言葉にできないでいる
言葉にすると違った色に染まってしまいそうで

言葉にすると
どんなふうに伝わるか
傷つけないか
言葉で伝わる私が本当の私と違ってしまわないか

そんなことが大きく膨れ上がり
恐くて
言葉にできないでいる

どうみられるか
どう思われるか
そんなことどうでもいいと知っているのに
気にする自分が情けない

87「詩」朝焼け

87「詩」朝焼け

空気を伝ってくる悪意

魂が深く沈んで動けなくなってしまう

巧妙に隠された強欲

謙虚を装った自慢話

私の周りに張り巡らされた有刺鉄線の外に
踏み出せなくなってしまう

ふと

なにもかも投げ捨ててしまいたくなる

自分の欠点がどんどん膨張して
長所など見えなくなってしまう

ここにいる意味がいったいあるのだろうか

ふと

このまま消えてしまいたくなる

重過ぎる自分を背負うことに疲れてしま

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50「詩」春

50「詩」春

怯えているんです
心の奥深くにある
どんよりした
触れてはいけない悲しみが
重くて

誰かにそのまま伝えられたら
きっと軽くなるはず

そう思ってみても
言葉が見つからないんです

心を押し潰しているこの重さを
そのまま伝えてくれる言葉が
見つからないんです

白っぽく霞んだ山並みを
花嫁さんのベールのように
包んだ春の日差し

柔らかな日差しに身を潜めて
悲しい心は
そのままなんです