見出し画像

【日本全国写真紀行】34 青森県三戸郡三戸町

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。


青森県三戸郡三戸町


「南部氏」と『11ぴきのねこ』と「せんべい」の町

 三戸という地は、北奥羽の覇者・南部氏を抜きには語れない。
 南部氏は清和源氏の一族で、甲斐国(現在の山梨県)南部郷の出身、建武の新政下で北奥羽奉行となり、北東北へ拠点を移した。一族には三戸南部氏をはじめ八戸氏(根城南部氏)、九戸氏、新田氏などがあり、これらが時により協力し合ったり、あるいは反発したりしながら、主導権を争う小競り合いを繰り返していた。だが戦国時代、群雄割拠の世になると、南部家二十六代当主・信直が豊臣秀吉の元で三戸南部氏を中心に勢力を結集させ、奥州北部を統一した。
 三戸町には、その南部宗家の居城となった三戸城の跡があり、今も石垣や堀跡が残っている。また城跡には天守閣を模した「温故館」という歴史資料館が建てられている。
 ところで、岩手県と青森県の両県にまたがって残っている一戸から九戸までの地名だが、一体この「戸」とは何なのか。諸説あるようだが、中で最も信頼できるといわれている説をご紹介しよう。
 「戸」とは南部氏の軍馬を生産する牧場経営の単位で、まず九つの「戸」に分け、さらにそれらを東西南北の四つのエリアに分けた。これを「門」という。つまり「四門九戸」に分けた制度である。この中で現在「四戸」という地名だけがないが、昔はちゃんとあったそうで、江戸時代にそのほとんどが八戸領に組み込まれたといわれている。
 三戸の町は昔も今も三戸地方の商業の中心地である。江戸時代の国道である奥州街道は今も三戸町のメインストリートであり、町の歴史を物語る神社仏閣や古い建物が街道沿いに点在している。町には大正時代の建物や昭和初期からの商店、レトロな看板などが多く見られ、ノスタルジックな雰囲気が漂っている。
 また三戸町は漫画家・馬場のぼるの出身地。彼の代表作『11ぴきのねこ』のユーモラスな石像が町の公共施設や公園など11箇所に設置されている。このねこたちに会いたいなら「道の駅さんのへ」にある「さんのへねこまっぷ」を入手するとよい。
 それからもう一つ、三戸でぜひ紹介したいのが「三戸せんべい」。南部せんべいの仲間だが、南部せんべいより薄くてサクサクとした歯応えが特徴。町にはこのせんべいを売る店が6〜7軒あるが、そのほとんどが昔ながらの味と手焼きの伝統技を守り続けている老舗である。この地方特有の料理「せんべい汁」に入れる「かやき」をはじめ、薄味で素朴な食感のものが多いが、懐かしく飽きのこない味で、食べ始めたら止まらなくなる。三戸にお出かけの際にはぜひご賞味いただきたい。


ふるさと再発見の旅 東北』産業編集センター/編より抜粋



他の写真はこちらでご覧いただけます。


青森県三戸郡三戸町をはじめ、青森、秋田、岩手、宮城、山形、福島に残る懐かしい風景が多数掲載されている『ふるさと再発見の旅 東北』のご購入はお近くの書店、もしくはこちらから↓


日本全国写真紀行】をまとめてご覧になりたい方はこちら↓


この記事が参加している募集

ご当地グルメ

旅のフォトアルバム