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日本全国写真紀行

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取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。
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【日本全国写真紀行】 58 愛媛県松山市三津

愛媛県松山市三津 500年続く渡し船に見る、港町三津浜のふところ深さ 松山市には、堀江港、和気港、高浜港など多くの港があるが、中で最も古くから開かれ、明治維新まで松山の海の玄関口としての役割を果たしてきたのが三津浜港である。町には明治・大正時代の商家、銀行、医院などの西洋風建築や富豪の邸宅などが数多く残っていて、豊かで華やかなりし往時の面影を今にとどめている。  かつて夏目漱石が、中学教師として松山に赴任した際に上陸したのも三津浜港で、『坊っちゃん』の舞台にもなっている。漱

【日本全国写真紀行】 57 愛媛県今治市小島

愛媛県今治市小島 日露戦争に備えた「芸予要塞」が当時のままに残る島小島は、今治市の来島海峡に浮かぶ、周囲4キロほどの文字通り小さな島である。今治の波止浜港から船で10分、船旅を楽しむほどの時間はなく、あっという間に到着する。1日10便運行しているそうだが、この日の乗客は我々4人と郵便局の職員2人のみ。帰りも同じ人数だった。  ここ小島には、日本が日露戦争に備えて、ロシア海軍の進攻を防ぐために築いた要塞が当時のまま残っている。「芸予要塞」と呼ばれるこの施設は、明治22年から2

【日本全国写真紀行】 1 京都府宮津市上世屋

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 京都府宮津市上世屋 日本の原風景の要素が、すべてここにある 「二度と行こまい丹後の宮津 縞の財布が空になる・・・・・・」(お囃子〜丹後の宮津でピンと出した〜)  有名な民謡『宮津節』の唄い出しである。子どもの頃、何度か聞いたことがあって、このフレーズがとても気になった。一体誰が、何をピンと出したのか、それを何で宮

【日本全国写真紀行】 2 兵庫県南あわじ市沼島

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 兵庫県南あわじ市沼島 我が国最初の国土「オノゴロ島」 まず二神は、天と地の間に浮かぶ天浮橋(あめのうきはし)に立ち、天沼矛(あめのぬぼこ)をおろしてどろどろとした海水を「ころころ」とかきまわした。矛を引き上げるとその先から塩が滴り落ち、それが積もって小さな島になった。これが我が国最初の国土、オノゴロ島である。

【日本全国写真紀行】 3 新潟県佐渡市赤泊

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 佐渡市赤泊 佐渡随一の渡海場として栄えた港町  佐渡島と本土を結ぶ航路の発着港は、フェリー航路のある小木と両津がよく知られている。それらの港の知名度には及ばないものの、佐渡の歴史に重要な役割を果たしてきた港が赤泊港である。  赤泊は、古くから佐渡の南の玄関口として栄えてきたが、江戸時代に相川金銀山が開発されると

【日本全国写真紀行】 4 長野県下伊那郡天龍村坂部

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 下伊那郡天龍村坂部 峡谷の隠れ里は、熊谷直実(くまがいなおざね)の子孫が住む同族集落  下伊那郡天龍村は長野県の南端にあり、村の南側は愛知県と静岡県に接している。  村の面積の九割以上が山林で、中央を南北に流れる天竜川とその支流が深いV字渓谷を作り、そこに小さな集落が点在する。  ここで紹介する坂部も、その峡谷の

【日本全国写真紀行】 5 三重県亀山市関町

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 三重県亀山市関町 【関宿】今も脈々と守り継がれる宿の景観と趣き  東海道の中でもっとも古い歴史をもつ宿の一つ「関宿」。 「関宿」の発祥は古代までさかのぼり、壬申の乱(672年)の頃に置かれた古代三関のひとつ「伊勢鈴鹿の関」に由来するといわれている。  以来、交通の要衝として栄え、江戸時代には東の追分から伊勢別街道

【日本全国写真紀行】 6 香川県小豆郡(小豆島)

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 香川県小豆郡(小豆島) 伊勢参りのみやげだった農村歌舞伎  さて、奈良の都からそうめん技術を持ち帰ったその約百年後、新しもの好きな小豆島の人々は、同じ伊勢参りの帰郷みやげに、今度はなんと上方歌舞伎を持ち帰ったのである。  伊勢に向かう途中、悪天候で船が出ず、大阪で船待ちしていた島民たちが時間つぶしに見物したのが上

【日本全国写真紀行】 7 神奈川県小田原市

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 神奈川県小田原市 北条氏百年の栄華を支えた城下町  船渡しではなく、人足の手による“徒歩(かち)渡し”の難所として知られた酒匂(さかわ)川。その川を渡り、さらに半里ほど歩いたあたりが小田原宿の入口である。  小田原といえば戦国大名北条氏のお膝元。初代北条早雲が1495年に入城してから、秀吉の小田原攻めによって15

【日本全国写真紀行】 8 新潟県村上市村上

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 新潟県村上市村上 吊るし鮭が冬の訪れを告げる城下町 江戸時代、村上城の城下町として栄えた村上。出羽街道や三国街道などの宿場町、さらには北前船の寄港地にもなり、県北随一の町として歴史を刻んできた。今も残る多くの史蹟や建ち並ぶ古い家屋に往時の面影を偲ぶことができる。 そうした歴史もさることながら、この町を語る上で欠

【日本全国写真紀行】 9 山梨県甲州市塩山松里

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 山梨県甲州市塩山松里 鮮やかな夕陽色の簾をまとう干し柿の里 古の風情を今に伝える古寺や古民家が数多くあることから、甲州の鎌倉ともいわれる塩山。。この塩山の中でもひときわ深い歴史をもつのが松里地区である。武田信玄の菩提寺となっている恵林寺や武田家と縁ある放光寺など、見応えのある寺が往時のままに残っている。 だが、松

【日本全国写真紀行】 10 足柄下郡箱根町

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 足柄下郡箱根町 天下の険と恐れられた箱根越えの道  東海道最大の難所であり、行き交う旅人から“天下の険”として恐れられていた箱根。湯本から宿までの上り坂、通称「箱根東坂」と呼ばれる坂道は特に厳しく、多くの旅人が山越えに難渋した。途中、あまりの急坂ゆえにどんぐりほどの涙を流したといわれる「橿木(かしのき)坂」や猿さ

【日本全国写真紀行】 11 島根県出雲市・雲南市

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 島根県出雲市・雲南市 出雲国を舞台にした国譲りまでの物語  出雲神話とは、『古事記』や『日本書紀』の中で出雲を舞台に語られている神話のことを指す。また、『出雲国風土記』の神話を指すこともある。  とくに『古事記』の神話は約四割が出雲神話で、高天原を追放されたスサノオが降り立ち、ヤマタノオロチを退治し、国づくりを果

【日本全国写真紀行】 12 広島県豊田郡大崎上島町木江

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 広島県豊田郡大崎上島町木江 潮待ち、風待ちでにぎわった港町。 今も色濃く残る遊郭のあと。 大崎上島は竹原港からフェリーで三十分、瀬戸内海西部の大小数百に及ぶ島々で構成される芸予諸島の一つに数えられる離島である。 その玄関口、木江港は、深い入江を持つ天然の良港だ。享保年間(1716〜36)頃から沖を通る沖乗り航路の