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モンテッソーリ教育の”数学的精神”

未就学時の頃から、早期教育として算数を教えることに対して是非や様々な意見があるだろう。
3-6歳のモンテッソーリ教育では”数教育”というカテゴリーがあり、個々の子どもの様子を観察しながらではあるが、四則計算(+−×÷)や分数、百万の位までの数を扱うことがある。
そのため、モンテッソーリ教育は幼児就学前教育であり、子どもを幼いうちから遊ばせずに勉強させて可哀想というネガティブな意見もある。
しかし、モンテッソーリ教育の3-6歳の数教育は”Mathematical Mind”(数学的精神)の発達の援助が目的であり、お受験が目的ではない。これから子どもが自立して自分で活動していくなかで、数学的精神はどんな子どもであっても必要であり、その発達の援助をすることは重要である。

数学的精神とは何か?

もともと"Mathematical Mind"はフランスの物理学・数学・哲学者のパスカルの言葉である。パスカルは”人間は考える葦である”や気圧の単位(Pa)として有名な人物であり、人間の精神の特徴の一つを”数学的である”と述べている。これは幾何学の様に一切の事柄を定義したり、順序立てて比較・分析・推論しようとする精神である。幾何学の様にと言ってはいるが、いわゆる勉強の数学的な要素ではなく、問題を抽象化して分析し、解決しようとする人間の傾向性のことである。

数学的精神は社会にどう役に立つか?

教育において微分や積分など高等教育で習うような数学が役に立つかというと、私はエンジニアなので役立っているが、受験のような三角形の面積や頂点を求めるような事で役立っているのではない。実社会の現象がどの様に公式と結びついているか分析し、法則を見つけ、解決策を提案するという意味で役に立っている。
自分の職業によって、使う公式(ノウハウ)は数学、心理学、経済学であったりと様々であるが、それぞれの職業で、その公式を実際体験として経験し、抽象化して自分のものとすることで、我々は毎日仕事をしている。公式自体は問題解決のための武器であり、数学的精神は、その武器を使って問題の分析・解決する地力である。
日本の就職活動では、その地力(問題解決能力)を問われることが多い。そのため、自分の学問的な専門とは無関係に、採用されることがあるが、これは同じ会社でも部署や時代によって使う公式(知識)部分が異なっており、特に昨今トレンドの変化が激しく、採用時に専門として持っていた知識があっという間に時代遅れになることもあるためである。
日本企業の採用は未だ長い目で雇用・育成をしてくれる部分もあり、公式(知識)については仕事をしながら後から身に着ける事として、この公式部分を用いて問題を分析・解決できる能力(数学的精神)を重視する傾向がある。
パスカルは数学的帰納法という推論法を確立しているが、この帰納法は一つの数学的精神の力である。帰納法とは、個々の具体的な事象を積み重ねていって一般的な内容を推論する方法である。
例えば、バスで朝の通勤時間に移動する際に
具体事象
・月曜日は雨でバスが30分遅れた
・火曜日は晴れでバスは時間通りだった
・水曜日は雨でバスが20分遅れた
・木曜日は晴れでバスは時間通りだった
このことから、帰納的に導かれるのは
⇨雨であればバスの到着は遅れると思われる(推論される一般的な法則)
⇨金曜日は雨予報なので、バスが遅れるため、一本早いバスに乗る事にする(問題解決の提案)。
当たり前のようなことを仰々しくいうことになるが、これは具体的な事象を比較・分析して、法則を推論し、遅刻という問題を解決する方法を提案する能力なのである。もちろん推論を間違えることもあるが、受験と違い決まった答えがないので、イレギュラー要因に対して、どこまでリスクヘッジを取るかも問題解決能力として必要である。
例えば、旅行の計画を上手く建てられる人も数学的精神が発達しているといえる。
私が好きな漫画にブルーロックというサッカー漫画がある。この主人公の潔世一は、常に自分の公式(知識)をアップデートしながら戦っているが、本質的なところでは、常に状況を分析、推論する数学的精神が非常に高いのである。分野にかかわらず数学的精神は実社会で非常に役に立っている。

モンテッソーリ教育の数教育では何をしているか?

3-6歳のモンテッソーリ教育の数教育では、現代社会を生きていくために必要な数の概念・数字や計算がどういうものなのか?子どもが具体物を通して体験していく。具体現象として四則計算(公式)がどういうものか体験しないまま、紙に書かれた計算問題を回答できても、生活の中で問題解決能力として役にたたない。モンテッソーリ教育では、早期教育としての計算能力向上よりは、計算が現実世界ではどのような意味を持つのか具体物をとおして体験することを重視している。
小学生でも、2×3=6と答えられる子どもでも、2×3ってどういう意味と聞かれて説明できないケースがある。これではテストでは点がとれても、現実世界では役に立たない。
モンテッソーリ教育では他にも日常生活の練習を通して、
○○をすれば、○○という結果になるという、順序性や段取りなどを体験することや、
感覚教育で”重さ”や”長さ”など実体がない抽象概念を具体物を通して体験することで、統合的に数学的精神の発達を援助している。


ここまでお読みいただきありがとうございました。
私のモンテッソーリ教育との出会いの記事もお時間あるときに是非お読みください。

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