別れ言

あのツ イ ッ タ ーアカウントを作ったのは何故だったか。記憶を辿った。
私の人生で最も大事な人物、彼との事を記録するために作った気がする。(定かではない)

彼と別れてどれほどだろうか、1ヶ月、2ヶ月ならないくらいだろうか。
私の人生はいつも忙しなく、あれやこれやという間に周りにいる人物が変わり、考え方も変わり、人との関わり方も時間の使い方もしっかり一つひとつ定着しながら変わっていく。
そんな変化の多い人生の中で、家族以外の関わる人物の中で、恐らく彼が一番長い、いや長さは越す人が現れるかもしれないが深い付き合いのあった人物になるであろう。

彼と出会ったのは私が中学2年の頃。今から5年程前、私が何もかもに絶望し、生きることを諦め、日々をどうやり過ごすかばかりを考えていた時期だ。
車とすれ違えば「あぁ、今飛び込めばよかった」と、
殺人事件を見れば「あぁ、この場に私が居たら良かったのに」とばかり考えていた。

こんな私を救ってくれたのは紛れもなく彼だった。
モノクロの世界を彩ってくれて、
雑音ばかりの世界に心躍るメロディを沢山奏でてくれて、
私の欠け落ちた感情を一つひとつ拾って手渡してくれるように、抱き締めるように、愛で包んでくれた。
彼は言っていた、「俺はそんな大層なことはしていない」と。そこもまた好きだった。この世の全てに絶望した私にとって彼はとてつもなく輝いて見えた。好きだった。私に向けられるその眼差しが。私のために走らせるそのペンが。包んでくれる腕が。寒いと言いながら出る二人の白い吐息が。

でも私には足りなかった。

いくら愛されてると感じても、信じていても心の奥底のどこかでは不安だった。彼一人に全て委ねられている私が。彼が居なくなった時の自分がどうなるか、きっと絶望したあの時とは比べ物にならないくらいにもっと孤独と絶望と虚無に襲われるだろうと、それが怖くて、どうしても怖くて。
彼は私を愛してくれていた。ずっと。
幼かった私は、自分を信じきれなかった。彼を信じきれなかった。
浮気した。何度も。

今はもちろん分かる、許されないことだ。馬鹿すぎる話だ。
他の男と付き合い、そこそこになったら気付けば彼と比べ始め、男のことを生理的に受け付けなくなり、また彼に連絡して。
当たり前だが、彼はいつも私が連絡を入れると  またかと言うように、でも何だかんだ返事を返してくれていた。この人、こういうところ優しすぎると思う。相手がまだ幼いにしても。
そしてもちろん私は他の男なんてただの瞬間の不安解消(失礼)でしかなかったし、本気で恋をしたのは彼だし、彼はもちろんお誘いの多い人であるのにも関わらず私のことを忘れずに居てくれたらしく(内心イライラしていたらしいが)何度もまた何事も無かったかのように恋に落ちていった。

恋は盲目。
本当、この言葉は間違いない。
何もかもどうでも良くなって、何もかも見えなくなってしまう。彼のことになると。

そして4度目?5度目の恋は、もう、芽生えることの無い木のように枯れた。
彼の限界が来た。私の事を信じられなくなってしまった。

私の自業自得だ。
自業自得というか、やってきたことがやってきたこと過ぎるというか、そもそも3度も4度もやり直せたことがイレギュラーだ。彼はよく耐えてくれたと思うし私の事を愛し尽くしてくれたことをとても胸が苦しい程に痛い程に感じている。

別れる1週間程前も、きっと苦しかったはずだ、信じきれなくなってることに気付き胸を痛めていたはずだ。
なのに私に電話をかけてきてくれて、「次いつ会えるかな、まだ分かんねぇよなぁ、忙しいもんな俺もお前も。いや、これあげたいなってさぁ。」といって送られてきたリンクにはとても綺麗なチョコレート。
前に彼のカジュアルすぎるパーカーを着てバイク2ケツで突然行った、民家の中にひっそり佇む高級レストランにもまた一緒に行きたいと言ってくれていた。

もちろんいい事ばかりではなかった。
泊まりに行ったのに家に1人取り残されて夜中12時になっても帰ってこなかったり、彼が一時期全然お金無くて私が殆ど払っていたり、喧嘩したらめちゃくちゃ馬鹿にされてるような口調で腹立つし、我慢ばっかりして不満言ってくれなくて急に爆発したり。

でもこの5年を通して今思うのは、
とてつもなく大きな愛を貰ったのに、私が最後には大きな傷を付けて終わりが来てしまって、
あの別れ話の最後のLINEをどんな苦しみを背負って私に送ってきたんだろうかと、
あれほどの人をあそこまで追い詰めてしまった私の行動を、私自身を憎むことしか出来ない私の不甲斐なさ、無力さをただただずっと感じている。

もう、前みたいに一緒になりたい、とか、
また前みたいに彼の横にいられたら、とかは一切思っていない。
私が彼の横にいても彼は幸せになれないから。幸せに繋がらないから。私の幸せにも繋がらないから。

彼の家に置いていた服や物等諸々を受け取ったらきっともうこれで最後だ。もう一生彼に会うことはきっと無いだろう。

私が何故これを書いているか、自分でもよく分かっていない。
ただ、とにかくずっと心が晴れない。それの理由も定かには分かっていない。
彼と別れる時、別れようと言われた時、晴れている空に薄く雲がかかりスコールのような雨が降る、そんな心模様だった。ただ、それ以降、彼のことになると雨が降るでも晴れるでもなく、ただずっと曇っている。ずっと陽の光が差さずにもやっとした空気が漂う様な。
一つだけ、もうしかしたらこれが理由の一つかもしれない、というものを見つけることが出来た。それは
彼に告げる別れの言葉が見つからない  こと。
一生の別れになるかもしれない。いや、なる、きっと。
そんな彼に何も言えない、言う言葉が見つからないことが大きな理由の一つだろう。

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