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途 中 下 車

働く人は、少なからず役割のようなものがあります。それが、組織に属しているならなおさらのこと。組織だからこそ役割があり、組織でなければできないこともたくさんあります。また、新陳代謝という意味での世代の交代や、新しい方向への移行など、組織を存続していくために必要な働き方があるのだと思います。

書店では、組織を良くするには、組織を変える、といった言葉が並びます。そんなふうに組織を見ながら「出世」と呼ばれている動きについて、考えていることがあります。

僕は、出世したいのだろうか。

出世すると、部下という存在がゼロから数人に増え、会議が増え、役割が増えています。色々な部署を経験する中で確認しているのは、出世すると忙しくなるという事実。当たり前だろ、と言われそうですが。

出世競争なんて物騒な呼ばれ方をして、組織に上り詰めることが最高の人生なんて考え方もあります。あいつは出世コース、も何だか違和感があったりします。

僕が仕事として扱っているものは、利益を生みだすような活動ではないけれど、処理すべき書類や問題が増え、休日や緊急の出勤も厭わない、そんな上司像が殆どでした。特に、男性の上司は家庭もあるだろうに、仕事以外の様子が想像できないほど、隙がない仕事ぶりを目の当たりにしてきたのです。

もちろん様々な仕事や会社があり、多くの人が、サービス残業や低賃金にあえいでいることは知っています。恵まれている職場であることも否定しません。そして出世すれば、給料が上がり経済的には豊かになることも分かっています。

毎年、決まった時期に昇進のための試験があり、対象年齢になった時から毎年受験していました。それは、自発的な動機もありますが、属していた部署の雰囲気というのもあります。せっせと勉強して試験に臨んだりもしていたのですが、結果は芳しくなく、5年ほど過ぎていきました。

そして今年は、試験を「受験しない」と決めました。

さきほど書いた疑問の答えのひとつとして考えた結果です。試験は年に1度なので、受けないと決めてしまえば、事前の勉強もしないし、秋の休日に試験会場に行くこともないし、発表の日にそわそわしなくてもいいのです。誰かの結果も気にならないし、誰かに気にされることもないのです。

僕は、ひとまず「おりる」ことにしました。

理由はいくつかありますが、その選択肢を与えてくれたのは、職場の先輩です。この話題について、直接話したわけではありませんが、僕よりもいくつか上の年齢で、試験を受けないことを選択し続けているのです。ときどき雑談の時には、僕の家族のことを聞いてくれることもあり、きっと家族との時間を大事にしているんだろうなぁと想像しています。

出世することを目指さないあり方、
それは「おりる」働き方ではないでしょうか。

子どもが生まれたのをきっかけに、育児休業も取得しながら僕が考えていたのは、どうやったら家庭にいられる時間を増やせるだろうか、ということでした。折しも、新しい脅威のために外出自粛という状況になってしまったのですが、それは僕にとっては豊かな時間でした。

在宅勤務がとても難しく、そしてほぼ不可能であることもわかりました。それでも、仕事と家族を近づけるのは良い経験でした。そして、考えたことは、いまの職場にいる間は、家庭にいる時間を増やすというのはとても難しいということ。

だったら、減らさないようにしよう。

そのためには、まずは出世することからおりてみよう、と思い至ったのです。出世を諦めたわけでもないし、競争を軽蔑するつもりも一切ありません。ある期間の中で、上を目指さず、仕事を楽しめるように深めていくことが、僕の考える「おりる働き方」です。

これまでも、いまも職場関係は良好で、仕事もやりがいのあるものです。自分の好きなことかは分かりませんが、少なくとも楽しんで仕事しています。妻も、あなたは楽しく仕事ができる職場に恵まれている、と言ってくれています。

この春、前に職場が一緒だった仲の良い同僚は上級機関への出向を果たし、また別の後輩は、先の試験に合格し出世して肩書が付いていました。羨ましいと感じてしまう反面、価値観は人によって違うということを改めて確認したのです。

「おりる働き方」は、家族のために我慢しているわけではありません。上を向いて働くのではなく、横を向いて働く・・といったイメージでしょうか。僕は、みんなが出世を目指さなくてもいいと思っているし、家族との時間も大切にしたいと思っているのです。けっこう当たり前の発想かも知れませんが、ようやく気がつきました。周囲の雰囲気は、自分の判断に大いに影響していることも分かり、もっと自分の芯を固めたい思いに駆られています。

僕の考える、これから。それは「おりる働き方」です。


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