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今日に立て込んだ夜を明かす

「蠅と私の光」

部屋の壁にに張り付いた蠅が蛍光灯の光を求めて羽音をたてながら淡い黄色目掛けて飛んでいく。ぶーん、ぶーん、蠅は目的の場所を目指す。私はその様子を壁に引っ付いたベットから眺めている。まさに道楽見物人、なんたって奴は次の瞬間、羽音を儚い破裂音に変化させて空中から地上へ落下して変身するのだから、奴は死骸になる、そしてコンマ数秒で私にとって奴は部屋によくあるゴミと同然となるのだ。奴は生命ではない、奴はゴミになるのだ。

電光に一つの黒い影が漂っている。今に見える、一生懸命羽を羽ばたかせて光を求めていく様はあまりにも美しく思えた。この部屋は比較的暗く、天井の明かりだけが平穏を保っている。私は暗い場所をひどく嫌いであり、寝る際にも明かりをつけている。恐らく、彼がこの部屋に訪れたのもそのせいだと思う。

ぶーん、ぶーん、ぶーん、ぶーん、ぶーん、バチ、、。

死んだ。たった今、天井にたどり着いた彼は小さな破裂音と共に生涯終えた。虫の一生が私の部屋にある一つの明かりの下で息絶えてしまった。目線の上から下へ、光から床へ、彼は叩きつけられた。四肢はあらぬ方向に曲がっており羽はくしゃっと縮こまっていた。あまりにも小さな身体にあまりにも大きすぎる痛み。彼は死んだ。光を求めて、そして私の部屋で死んだ、それだけなのに私の心に深々と暗がりを落とすのは一体なぜなのだろうか。

ベットから身を起こし、彼の前に呆然と立ち尽くす。
そして膝をつき彼の身体を精一杯の優しさを指先に送り持ち上げる。手前に設置されたティッシュに彼を包み込ませた。窓の外は夕闇が広がっていた。周辺の家には光一つなかった。部屋の光が私に降り注ぐ。
「私も光を求めて歩きたい」
私は手のひらにある死骸をゴミ箱に投げ捨て、
今日に立て込んだ夜を明かした。

毎日マックポテト食べたいです