見出し画像

座長と専務/旅芝居・父と子

家を継ぐ、継がせる、という考え方はもう古いのかもしれない。
でも、旅芝居の世界では「ある」考え方だ。
家同様の「劇団」を継がせる。
息子に座を持たせたいがために旗揚げ(独立)をする座長も居る。
少ないことではない。
幾つか、いや、幾つも、見聞きし、目にしてきた。
かの劇団もそうだ。父が「息子のために」旗揚げをしたと聞く。

旗揚げ前の数年、父子でゲスト回りをしだした頃から話題を集めていた。
「若くて、かわいくて、〝出来る〟子が居る」
旗揚げ後もじわじわと確実に人気を集めている、激戦区と言われる関西でもだ。

で、今年17歳の誕生日公演を終えたばかりの頃、彼を観た。

頬っぺたぷっくり、若さキラキラ、まっすぐキラキラ。
「今」な魅力が舞台に余すところなく滲み出て、漏れ出している。
そんなあどけなさが自身の魅力だということに無自覚なようにさえ見えるキラキラさ、無敵だ。

その後、他劇団の記念公演にゲスト出演している彼も観た。
参加したのは若い役者ばかりだったのだが、17歳は、やはり、無敵だった。
舞踊ショーに彼が出てきた瞬間、
まだ歓声を禁じられている劇場で、それでも、皆が「わぁ」っと声を出す、
その「わぁ」が重なり、ひとつになり、出ていた。
隣り合った別の役者の応援にきたという初老のご婦人も大層ご満足の模様だった。
着物を作ってあげたりなどまでして応援している役者から「あの子も出るよ」と言われたらしい。
役者からも意識される17歳だ!


でもね。私の目が追ってしまうのは、彼の父。
記念公演のゲストには呼ばれていなかった。
それなのに「(あの人)実は頭部が……髪の毛が…」なんて、
役者たちにも息子にも弄られていた、彼の父だ。

旗揚げする何年も前から観ていた。
「座長」を任されていて、
でも「責任者であるTOP」ではなくNo.2とか3みたいなポジションの座長だった彼。
今は「No.1」、一応、でも、「息子がTOPになるまでは」の。
アクの強い芸風や個性の役者が多い中で、元々なのか、そんなポジションで来たからか、
どちらが先かはわからないけれど、主張型の芸ではない。
でも、歌、歌の後のトーク、立ち(男姿)、女形、
座員が少ないせいもあるし「座長」だから、すべてこなしていた。
全然湧かないけれど。皆、息子の出番、17歳のキラキラを待っている訳だけれど。

「明日の芝居は僕ね、格好いい役なんです。
ジーサンとか悪役ばっかりですからね、いつも。
明日はかっこいいです。観に来てください。観に来てくださいますか?」

(多くはない客席は静か)

「観にきてくださいますか?!」

(ぱら、ぱら、ぱら)

そうだよなあ。切ないけれど。

「息子のために」 旗揚げをした。
でも、数々の劇団を息子と共に渡り歩いてきて、
ずっと曲がりなりにも「座長」、今、自劇団の「座長」、
そんな誇りも実はあるんじゃないかなあ。
「どや!」じゃないけど、ちゃんと「どや!」、な。
うん、息子息子、いいでしょ? でも、俺、俺やで、な誇りも実は。実は、ちゃんと。ほんとは、常に、って。

そんなことを感じたのは、なんだか目が離せずに写真を撮っていたら、まあ、もぉ、え~ぇお顔が来たからかも。

若いだけが魅力じゃないんだ。
哀愁も色気、味、魅力。
個性さまざま、年齢体形見た目やり方、
役者百景、人生百景、
すべての役者が生きている。
旅芝居、旅役者の世界ってそんなところも大きな魅力で。
だから思う。
この父子、父子の劇団は、きっと、さらにもっと、人気になるはず。

ほろ苦、ふふふ。

と、共に、観る前も、観ている間も、ずっと頭にあったことがある。

「専務」

専務だったんだよね、息子くん。
お父ちゃんが座長を務めていた劇団で、「3歳の専務」。肩書が専務!
座長と総座長へのマイク運びがお仕事だった。
マジックで描いた(大人に描かれた)ちょび髭にスーツで。
当時の観劇メモノートには「しっかりしてはる」と書いていた(笑)
元専務で、今、若座長で、未来の座長。
と、ずっと座長で、今、守り、継がせるための、誇りをもった現座長。

父子って、父子だけどライバルで、ライバルだけれど父子。

イケイケぴちぴち若い息子と、
味と哀愁と「誇り」なお父ちゃんの、昨日今日、未来に向かう、この劇団。

若さと、哀愁、勢いと味。熱と誇りの、旅芝居。


(優木劇団、優木直弥若座長 と 優木誠座長。2022.4・15@十三・木川劇場)
(森川竜馬劇団三周年公演ゲスト、優木直弥若座長(優木劇団)2022・5・23@十三・木川劇場)
と、(専務直弥と優木誠座長、2007年~2008年の見海堂駿&座 笑泰夢、明生座やオーエス劇場にて)


■omake①■
木川劇場真横のたこ焼き屋が好き。上記の記念公演時に。

■omake②■
旅芝居の、父と子話。継ぐ、継がせるの話。
いっぱい書いてきたけれど幾つか。

おもちゃ劇団。今回の記事のひとつ前に書いた記事ですね。祖母、父、孫。

劇団寿。愉快なお父ちゃんと、ふたりの息子イケメンズ。 

市川千太郎劇団。いまどき息子と、完璧父。

鹿島順一劇団。もう居なくみられなくなったけれど。

と、めちゃめちゃ前のですが(笑)貼っておきたい。

樋口劇団。旅芝居、伝説の男と、平手造酒、父と、子。

満劇団。父と娘と孫。

まな美座。異端な師と、これからの若い男の子。 

森川劇団。の、芝居の話。
実は上に書いた記念公演でかかった芝居もこの外題この芝居でした。観続けてゆきたい芝居です。

なんかもっといろいろあるってか書いてきとるけど、キリがないのでこのへんで。また思い出したら貼るかもしれません。


◆◆
以下、各種SNSとプチ自己紹介など。遊びに来ていただいたり、ご縁がつながったりしたらとても嬉しい。お仕事のご連絡や、それ以外のご連絡もお待ちしています。

https://momohanabutai1122.seesaa.net/ ブログ「桃花舞台」

【Twitter】【Instagram】【読書感想用Instagram】

大阪の物書き、中村桃子と申します。
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。
いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。人間を、書く、書きたい。

ブログのトップページに簡単な経歴やこれまでの仕事など書いております。パソコンからみていただくと右上に連絡用のメールフォーム✉も設置しました。

現在、関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様にて女2人の酒場巡りを連載中。
最新話12回もアップされていますよー。

と、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章、も、ぼちぼちと。こっちも更新せなあかんなー。

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、
各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも(笑)やってました。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中(貴重映像ばかりです)。

……と、New。今年からはYouTube絡みのお仕事にもかかわっております(演劇系とかじゃないけど)。ふふふ。

仲良くしてくれたら、とても嬉しい。あなたとご縁がありますように。
お読みいただき本当にうれしい。今後ともどうぞよろしくお願いします。

楽しんでいただけましたら、お気持ちサポート(お気持ちチップ)、大変嬉しいです。 更なる原稿やお仕事の御依頼や、各種メッセージなども、ぜひぜひぜひ受付中です。 いつも読んで下さりありがとうございます。一人の物書きとして、日々思考し、綴ります。