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旅芝居・俗と色気/舞踊ショーのsceneから

旅芝居・大衆演劇の舞踊はあまりに様々で、
中には「色気そのもの」みたいな舞踊だって少なくない。
いかにもな歌の
(イケイケだったり逆にバラードだったり)
歌詞とメロディーにのせて派手な着物で
客席にウインクをしたり指をさしたり舌を出したり、という露骨なものもあって、
客席からは歓声があがる。
以前、「初」大衆演劇の方をお連れした際、彼はドン引きをしていた。
「酷いですね……」
そうなんです、酷いんです。でも、人気なんです。
そして、ある意味、旅芝居の代名詞的な舞踊と光景かも、と、私は真剣に思いもしている。
 
すべてではない。
ちゃんとした(という言葉は適切な表現かどうかはわからないが)舞踊もある。
踊りの先生から習ったもの、本格的な歌舞伎舞踊、日舞。
旅芝居の舞踊はジャンルで言うといわゆる「新舞踊」と言われるのだが、
旅役者、「役者」、つまり、芝居を演じる者たちだからこそ芝居心を生かし、
歌の世界が台詞のない芝居のように浮かび上がるようなものも多い。
私はそういう舞踊が一番好きだ。
とある老優によると古い古い時代には舞踊は
「芝居が出来ない役者の(稼ぐため・生きるための)救済策」でもあったらしい。
 
けれど、ただひたすらに「アッピール」(敢えて「ッ」を入れる。笑)の舞踊も少なくはなくて、
それらは他にはない不思議な舞踊と型として出来上がっている気もする。
嫌いだし、正直吐き気すらする時もあるが、興味深い。
だって、需要があるんだもの。
客席が異常なくらいに熱をおび、芝居小屋がアツくなるのだもの。
 
変な着物、変な着方、着崩し方に、装飾品。
ラメラメギラギラは当たり前オブ当たり前。
スケスケももう何も新しくない。
レース、スタッズ(金属の鋲)、ぬいぐるみ、クロムハーツ的な何かにスカル(髑髏)柄。革ジャン風、毛皮風(武藤敬司の入場ガウン的な)。
格闘技の入場の際の衣裳みたいなフード付の着物ももうお馴染みだ。
最初はフードをかぶったまま踊り、途中〝ばっ〟と脱ぐ。脱いだ瞬間、拍手! キャー!
鬘も、金髪鬘は当たり前、カラフル&レインボー、鳥のトサカみたいなものなど、ひと昔前のヴィジュアルバンドのようですらある。
(余談だが、ある役者が若き日に歌手デビューした際のレコードジャケットはヴィジュアル系風。
 「デビット・ボウイ? ジュリー?」と訊いたら「違う。ボーイ・ジョージ」と返事されて笑った)
近年の若い役者はK-POP人気に便乗し、歌もファッションも「逆輸入」していて、またしても「型」となり、「進化」は続いている。
 
客席におりてきたり、男女(女形)の相舞踊の際は「密着」をして見せつけたり、手招き、ウインク。
何だ君たちは、地方の派手な成人式か、異国の島での極楽鳥の舞なのか。
しかし意外なことに、若い客層だけへのアピールとサービスかと思いきや、
オバ様やマダムの方が熱狂していたりすることも少なくない。
ある劇団を集中してよく観ていた時期、
当時「超テッパン」だったEXILEの『Ti Amo』や『ふたつの唇』だのにキャーギャー言っていたのは、ちょっと上の世代の方々だった。
所属していた中年役者が「若さへの憧れだろ」と吐き捨てていたのも忘れられない。
 
ある意味、俗っぽいの一言なのかもしれない。
でもそれを否定することやばかにするのは違うと思うし、
なにより、客席が盛り上がる。皆いきいきとしたええ顔をしているんです。
だから舞台上の役者もめちゃくちゃいい表情をしているんです。
誰もが一度は通る道なんです役者も客も。
(たぶん。そんなことはないけれど)
若い役者のそれを毛嫌いしていた役者が、
J-POPじゃなく美空ひばりの『おまえに惚れた』とかで指さしていたのも見たし、
旅芝居ではどの時代でも〝ちょいワルオヤジソング〟みたいのが流行っていて、小田純平だの鳥羽一郎(の昭和歌謡カバーシリーズ「時代の歌」)だの、ムーディーな男歌で硬派なようでちょいワル気取りをするオジサン役者たちも少なくない。
オジサン世代だからこそ桑名正博だの世良公則だの桑田佳祐だので「格好いい」を体現しようとしているのもよく目にするし、結構な需要があることも知っている。どっちも一緒。
 
と、なんでいきなりこんな文が出てきたのかというと
今日、街中で『366日』を耳にしたからです。
HYではなく、カバーバージョンが流行っているらしい。
この歌もちょっと前の時代にめちゃくちゃ流行ったよ舞踊ショーで!
同じ歌手の『Song for…』『NAO』と共にいわゆる「匂わせ」ソングとして踊られていた。
客席にひしめく大勢の客の中で特定の客……
他より深く濃い近すぎる関係にある客に隠しメッセージとして届ける・受け取るという、ちょっとちょっとおいおいまあまあ、な感じで使われてたりをしていた。
誤解していただきたくないのだが私の意見ではない。
当時東西のファン仲間でよく話題になった。
カバーバージョンもまた舞台で使われて流行るのかなあ。遠い目になる。
 
ホストクラブの〝ラスソン〟(って言うんだよね?)でも定番の1曲だという
KinKi Kidsの『愛のかたまり』もいまだに旅芝居で踊られ、「スタンダード」となっている。
そうだよなあ、時代と年齢を考えると、いろいろ思うところがあるよなあ。
と、考えながらも、
〝クリスマスなんていらないくらい日々が愛のかたまり〟って、
まさに、日々が舞台、夢を見せて恋させてくれる(??)旅芝居・旅役者の舞台にぴったりだよなあ、なんて、ちょっと笑ったりもする。
 
個人的には好きじゃない。古典とか民謡とか歌舞伎舞踊とかを踊って欲しい。観られると本当に嬉しい。ちゃんと踊って欲しい。ちゃんとってなんだかわからないけれど。
でも芸術鑑賞会じゃないのだ、お堅い授業でもないのだ。どれか一方「だけ」じゃない、だからいいのだ。
「大衆」の、生きることそのことそのもの、さまざまな人間の、さまざますぎる、皆の舞台。だからいいのだ。
時代と共に、時代を取り込み、生きていくのだ。いろっぽいな。楽しいね。


10年前から同じようなことを言っている、全くもう(笑)


似たような話。

忘れられない『さよならエレジー』(菅田くんの)

HYと絢香と匂わせ。

本当はさびしいのかもしれない。皆。


以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
と、苦手なりにもSNSあれこれ紹介、連載などなどの紹介!!も。
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大阪の物書き、中村桃子と申します。 
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。

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