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スコーンについて語る【作り方編】

私のイギリス菓子、スコーンについてのリサーチの総決算として、まずは

「スコーンについて語る 歴史編」を書きました。

それから、
「スコーンについて語る 食べ方編」

そして、今回はその作り方を深堀していきたいと思います!

スコーンは、ラブインという方法でバターと粉類を合わせます。
小さく角切りにしたバターを粉の中に入れて、パン粉状になるまで手のひらですり合わせる方法です。フードプロセッサーで混ぜても同様の状態になります。

この作り方こそが、スコーンらしい形と食感を生み出してます。


ラブインで作る英国菓子

様々なイギリスのパイやお菓子が、ラブインして作られています。

やはり一番有名なのが、スコーン
そのほかに、クランブルやロックケーキ。→さくさく。ビスケットに近い。
北イングランド発祥のファット・ラスカル。→ビスケットとスコーンの中間。
アップルパイやレモン・メレンゲパイ→ザクっとした生地。
そして、コーニッシュ・サフランケーキやティーローフなどのローフケーキ。→パウンドケーキに比べて、パンよりの食感。

どのお菓子も、バターをクリーム状にして砂糖を合わせていくお菓子と比べるとサクッとした食感があります。

ラブインで作る理由

グルテンができないように材料を混ぜ合わせる。

細かく切ったバターを粉にまぶすことにより、水分が閉じ込められてバターが溶けにくくなります。粉に含まれるグルテンは、水と結合してこねることにより生まれるたんぱく質です。バターを粉にラブインした後に、卵や牛乳などの液体を加えたら、最小限にこねないように生地を混ぜ合わせて焼くことによって、グルテンの形成が少ないサクッとした食感が生まれます。また、ここからは私の想像ですが、バターの風味をよりダイレクトに味わえるお菓子に仕上がるのではないかと思います。

ラブインで作るには、固形油脂の割合が粉の50%以下である必要があります。

美味しいスコーンを作るコツ

バターを粉にラブインして、パン粉状に混ぜ合わせること。
液体を加えたら、グルテンがあまりできないようにざざざっと生地をひとまとめにして、2.5センチ程度の厚さにのばして型抜き。焼成。
たくさん作った経験上、最初に高温で焼いて膨らませてから、180度に温度を下げて焼くと美味しく焼きあがると思います。
作ったら、その日のうちに食べるのをお勧めします。

料理書から読み解くラブインの歴史

さぁ、ここからは私の好きな食物史です!
イギリスの料理書をみていくと、ラブインという方法はチューダー朝の料理書でペイストリー生地(パイやタルトの生地)を作るときに出てきます。

当時、料理書は宮廷料理人などごく一部の人が読むための記録のようなもので、細かな分量やレシピは書かれていません。特に、ペイストリー生地は、料理人が知っていて当たり前の作り方だったため、わざわざ分量が書き留めてないそうです。

いくつかの料理書にパイを作るための生地としてラブインという方法が登場します。この時代にケーキやパンの鉄製の型はなかったので、パイ生地というのは、中身を焼くための型として作られました。粉にラードやバター、そしてお湯を加えて作る『ホット・ウォーター・クラスト・ペイストリー』は、その最たるもので、かちんかちんに焼きあがる。丈夫なので型として再利用して、再びパイを焼き、その後は壊してシチューに入れて食べました。さらに残ったものは、貧しいものに施されたそうです。

中世の小麦粉は少し全粒粉いり。固いパイ生地は型の役目。

というぐらい、パイ生地というのは固いものでした。
そんな時代に作られた、ちょっと上品で食べられるパイ生地がラブインで作るショートクラスト・ペイストリーです。ショートというのは、さくさくしたという意味。ショートブレッドも同様の意味合いです。

ラブインして作ったショート・クラスト・ペイストリーは、パイの形に空焼きしてから、砂糖で煮詰めた果物を流し込んで再び焼きました。

イギリス料理の中で人気のパイいろいろ。『お菓子を習いに英国へ』より。


イギリスでパイと呼ばれる食べ物は、表面におおいがあるものを指しています。よって、アップルパイやフルーツパイには、ふたをのせて焼きました。

パイについての定義はこちらの本でも紹介してます。

そしてスコーンは生まれた。

ファーマーズマーケットにて。チーズ入りのスコーンも人気。

いま、私たちが親しんでいる丸くて高いスコーンがいつ、どのように生まれたのかは、またリサーチ中ではっきりわかっていません。
しかし、その原型はたぶんスコットランドで生まれ、鉄板で焼くパンケーキやパンの仲間の一つとして、スコーンとなり、今のような形になったと推測ができます。
「スコーンについて語る 歴史編」
でも、書いたとおり、
料理書にスコーンという名前でレシピが出てくるのが1900年ごろ。
1860年代からスコットランドやイングランドでも一般家庭用にベーキング・ソーダ(重曹、膨らし粉)が流通し始めて、お菓子やパンを簡単に膨らませて焼くことができるようになりました。さらに、ガスや電気が生まれ、家庭用のオーブンが広く設置されたこともスコーンのようなレシピが広まってきた一因なのではないか?と思っています。

ラブイン
膨らし粉
家庭用オーブン

この3要因がスコーンというお菓子を広めたように私は思っています。
みなさんは、どう思われますか?


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