防災士が考える災害対策① 家族会議をしよう
今回からは、具体的な防災対策について書いていきたいと思います。
前回の記事の通り、防災ではまず自助(自分で何とかする)が大切です。
基本的な考え方としては
自分が備えれば、余裕が生まれる。
→余裕があれば、周囲を助けることができる。
→それぞれが備えれば、互いに助け合うことができる。
→互いに助け合うことができれば、助かる確率も人数も増える。
という流れを作っていくことになります。
ただ、家族は特別な存在です。
家族を守ることは、自分を守ることと同格か、むしろ優先される方も多いのではないでしょうか。
そのような点から、自分でどのように備えるのかを書く前に、家族単位での対策について触れておきたいと思います。
なお、この家族単位の対策、もしご自分が一人暮らしであれば、自分自身でやっておけば「自助」の助けになります。ぜひ実践してみてください。
家族会議をしよう
家族会議で最終的に決めること、それは「災害時の家族ルール」です。
そのゴールに向けて話し合うべき項目を、いくつか挙げていきたいと思います。
①リスクの確認
(屋内外の安全箇所・危険箇所をチェック)
意外に、「危険箇所」のチェックに夢中になり、「安全箇所」のチェックが抜けてしまうことがあります。安全箇所のチェックをきちんとしましょう!
「安全箇所でない所は全て危険箇所」という発想でもいいくらいです。
まずは屋内です。
例えば、対地震の安全箇所は、
柱や壁が多く、物が少なく、狭い空間
が最も安全です。窓などで外へのアクセスがあればベスト。
トイレなどは、その条件を満たす可能性が高いですね。
なお、トイレを安全箇所に指定する場合、陶器やガラスの花瓶などはきちんと固定するか、撤去(プラスチックに変更でもOK)しましょう!
対土砂崩れであれば
上層階の、崖から離れた部屋
になります。
次に屋外について考えてみます。
まず検討するにあたって必要なものはハザードマップ(防災マップ)です。
下の地図は、東京都新宿区の洪水ハザードマップです(内閣府ホームページより)。
国土交通省ハザードマップポータルサイトから、多くのハザードマップは入手できます。
紙の地図を、地元の役所などで配布していたりもします。
このハザードマップでは、自分が住む地域にはどれくらいの災害リスクがあるのかが書かれています。
自分が住んでいる地域で発行されているハザードマップは全て入手し、目を通すことをお勧めします。
そして、できるだけ細かく道路が描かれた、自宅周辺の地図(半径1kmくらい)を用意してください。これはGoogleMapなどでもOKです。
自宅周辺の地図には、避難場所をまず書き込みましょう。
ところで、「避難場所」と「避難所」を混同している方はいらっしゃいませんか?両者は名前だけでなく、シンボルマークも違います。
さらに、広域避難場所
・津波避難場所
というマークもあります。
避難場所は、災害発生時に一時的に緊急避難して身の安全を確保する場所(滞在時間は24時間程度を想定)
避難所は、災害によって家が損壊するなど、元の住居での生活が困難になった住民に、一時的に生活の場を提供する施設
です。両者を兼ねている施設もありますが、混同しないようにしましょう。
災害発生時にはまず「避難場所」に逃げ、落ち着いたら「避難所」に移動というイメージです。
そして、避難場所がどこなのかがわかったら、地図を持ち、昼・夜それぞれ、実際に歩いて検証してみましょう。
実際に歩くとわかりますが、最短距離=安全なルートと限りませんし、最寄の避難場所=安全な避難先とも限りません。
例えば地震で考えた場合、ブロック塀は倒壊の危険性があります。
よって、両側がブロック塀に囲まれた狭い路地は危険であることがわかります。
また、階段も夜は危険です。地震発生時は停電している可能性があり、その場合足元がほとんど見えない状況になりかねません。
電線が密集して架かっている場所や高圧鉄塔の近くは、切れた電線に触れる可能性があるため、近づかない方が良いでしょう。
また、木造住宅が密集しているような場所は、火災発生時には逃げ場を失う危険があります。避難ルートとしてはお勧めできません。
このように危険度が高い場所を避けると、避難ルートはかなり絞られてくると思います。
ただし、全く危険がないルートはおそらくないと思うので、危険度が低い順にランク付けをして、複数のルートを確保しましょう。
また、向かうべき避難場所を、複数設定しておくこともお勧めします。
何らかの事情でその避難場所に向かえない(すべてのルートが火災や洪水で遮断されるなど)した場合に備えて、第2・第3の策を用意しておくことは大切なことです。
ちなみに、「古くからある宗教施設」も避難場所として使える可能性があります。
例えば神道は、ご神木や山を神と見なす自然信仰に近いので、たいてい古い神社は周囲から少し高いところにあります。また、地域によっては古墳の上に神社が建っていることもあります。
いずれにしても、古い神社は周囲から少し小高い場所にあり、周囲を木で囲まれているケースも多いことから、洪水や火災に比較的強い場所です。
同様に、古いお寺や教会も、小高い場所に作られ、木に囲まれていることが多く、災害に強いとされています。
昔は、宗教施設が避難場所にされていたことが多かったようです。
しかし、これは「必ず」ではありませんので、標高や周囲の様子を調べてから検討しましょう!
標高はこちらで施設名や住所を入力して簡単に調べることができます。
②災害時の対応・役割分担の確認
災害時、誰が何をするのか決めておくことは、対応力を高めます。
ただ、厳密に決めておくのではなく、目安としておくことも大切です。
(災害時はイレギュラーが起きやすいため)
まず、「火元や電気の対応を誰がするのか」。
これは、基本的にはその時家にいる人がやることになります。
ガスの元栓やブレーカーの位置を確認しておきましょう。
そして、「火災が発生した場合の対応をどうするか」。
初期消火にあたる人、通報する人を分ける必要があります。
初期消火は天井に火が回る前まで。時間にして2分ほどが勝負です。
天井に火が回ったら、自力消火は不可能です。速やかに避難しましょう。
基本的には腕力がある人が初期消火担当、それ以外の人が通報担当になると良いでしょう。
さらに、「高齢者など、自力での移動が難しい人の避難をどうするか」。
車いすなどでも行ける避難ルートの策定や、いざというときに助けてくれる人の確保などをしておきましょう。
③連絡手段の確認
災害用伝言ダイヤル(171)、災害用伝言版、SNSの活用が一般的です。
また、誰か遠くに住んでいる親戚に情報を集めるという方法もあります。
スマートフォンやSNSを普段使い慣れていない人がいるご家庭に有効です。
また、避難所で公衆電話しか使えない状況でも役立ちます。
いずれにしても、「情報がここにいけば(連絡すれば)わかる」という手段を複数確保しておくことが大切です。
このように、事前に何をどうするか決めておくことはとても大切です。
また、家庭や周囲の状況は少しずつ変わります。
1年に1度は再確認するための会議を持つようにしましょう。
次回は、耐震化・防災用品の備蓄などについて、具体的に取り上げていきたいと思います。
皆さんの災害対策への一助になれば幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!