経済学の歴史(根井雅弘)(1)【またはいかにして私は読書を止め、教科書の紹介をするようになったか】(1/3)
実学本、来ました。
今回は教科書みたいな本を紹介させてください。
すでに読書の秋キャンペーンは終わってると思いますが。
これは教科書として。
紹介が長すぎるので分割していきます。気が狂いそう。
経済学わかんねー。
世間ではあーだこーだ言ってるけど、いったいどっちが正しいねん。
そこでマンキュー経済学に挑戦したけど、20ページで挫折中の私としては、どうにかしてもっとわかりやすい経済学の本がないかなー、と探しておりました。
そこで閃いたのです。
経済学の歴史とかってないのかな?
私は歴オタですし、そっちの方が読みやすいかも。
そして難解な学問も、時代背景の順番で追いかけていくと、意外とわかりやすかったりします。医学とか数学とかそうですよね。
なぜなら前代で解けなかった難問が、次の世代の課題になり解かれた結果、その次では問題の前提になっていくからです。
だから意味不明な前提をとりあえず覚えとけ!という現象が起こりません。
いわゆる前提とか公理とか定理とか定説とか、そもそも何故そんな前提が存在するのさ。
という前段階から説明してくれるので、
「ははあ、そういう時代があって、その上でこの前提が持ち込まれたんやね」
というのが理解できると、話は格段に分かりやすくなるのです。
そしてこの本は期待に背きませんでした。
きっと経済学部では教科書として使われているのかもしれませんが、独学の私には純粋に読書です。
では紹介していきましょう。
しかし全部述べていくと訳が分からなくなるので(本を買った方が早い)
結論だけ箇条書きにして解説していくようなスタイルで行きます。
(私の理解が甘くて説明が間違っていた場合はご容赦ください)
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作中では以下の経済学者がその時代とともに紹介されてます。
今日はここから↓
1、 ケネー フランス王国。 1760年ごろ。
2、 アダムスミス イギリス 1790年ごろ。
3、 リカード イギリス 1810年ごろ。
4、 ミル イギリス 1840年ごろ。
ここまで↑
5、 マルクス ドイツ、イギリス 1860年ごろ。
6、 メンガー ドイツ 1870年ごろ。
7、 ワルラス フランス 1870年ごろ。
8、 マーシャル イギリス 1890年ごろ。
9、 ケインズ イギリス 1930年ごろ。
10、シュンペーター ドイツ、アメリカ 1920年ごろ。
11、スラッファ イタリア、イギリス 1960年ごろ。
12、ガルブレイス アメリカ、 1970年ごろ。
丁寧に説明していくのは大変なので、各章で結論だけ簡単に述べていきます。
これは私が読んだうえでの結論なので、他の方が読めば違う結論になるかもしれないことをはじめに言っておきます。
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0:重商主義の時代
始まりに、まず前提としてコルベールをはじめとする重商主義政策がありました。
ここのところは書いてありませんが、後代の「経済学者」たちはみなその否定から始まるので、押さえておく必要があります。
重商主義とは、高そうなものを外国に売って、金を手に入れて、国家を豊かにしよう、という発想。
まともそうに見えますが、原材料である農業作物の価格を据え置いたことなどが理由で、経済の衰退を招いていました。
1:フランソワ・ケネー
最初の経済学者。経済表を作った人(詳しい説明は省きます)重農主義。
結論:農業が国家経済にとって最も大事である。
農業だけが富を再生産する。貿易は重要ではない。
(これは重商主義に対する批判です。現在では異論があるでしょうが、とりあえず続けましょう)
また経済表をいじると以下の結論が出てくるそうです。
結論:経済を良くしたいなら節約してはならない。生産部門への投資を増やせ。そうすれば拡大再生産によって富が増える。
とにかく節約すればいい、というのは悪手だ。
なぜならば、逆に生産部門への投資を減らせば収入が減るからだ。
そのように言ってます。現代においても通用しそうな発言です。
2:アダム・スミス
資本主義の祖。
現代経済学はすべてアダムスミスの亜流。
代表作は「国富論」
結論:富は消費財である。貴金属は富ではない。
その理由を簡潔に述べます。
貴金属は希少価値ゆえに価値が高いとされており、よく通貨につかわれます。
だが貴金属は消費することはできない。貯め込むだけです。
しかも貯め込めば貯め込むほど、希少性がなくなるので、価値が低下します。貴金属をたくさん集めるとインフレにより貴金属の価値が下がるのです。
対して、消費財は生産すれば、消費者との間で、市場価格が必ず成立するので、増えれば増えるほど社会全体の富が増加します。つまり富の指標となるのです。
(またしても現代からは異論がありますが、とりあえず先に進みましょう)
結論:あらゆる経済活動は、消費財を生産しそれを消費するところからはじまる。
結論:人々の善意にではなく人々の欲望に訴えよ。そうすれば最速で豊かな世界になる。
いわゆる自由放任の原則。言わずもがなですね。
需要と供給の原則により、自動的に経済の最適化が行われるので、基本放置がいちばん豊かになる、というものです。
誰かが権力の力で計画経済をやるとかはダメです。
結論:価格は市場原理で決定される。
市場価格とは別に自然価格も考え付きました。その財の本当の価格です。
結論:自然価格
価格決定においてふたつの理論を提示。
投下労働価値説。
要するに労働力(賃金)が商品価格の基準になるという考えと。
支配労働価値説を提示。
要するに土地代(土地の購入及び維持の代金)が価格の基準になるという考え。
このふたつを考えました。
自由市場においては、市場価格は上記によって導き出された自然価格に近付いていきます。
結論:国家は必要である。国防、インフラ構築、司法、治安、多くの仕事は国家だけが行える。
アダムスミスは国家不要論者ではなかったですね。
3:デイヴィッド・リカード
古典派経済学の完成者。結論はたくさんあります。
結論:金本位制を守れ。
通貨価値を保証するには具体的な担保が必要だという論理です。
ケインズによって後に批判されます。
結論:貿易は善だ。
人口論で有名なマルサスが、穀物の最低価格を守れ(保護貿易)を言ったことに対する反論です。つまり自由貿易派です。結論としてはすでにケネーとは逆です。
マルサスは地主の利益を守れば有効需要が生まれるから、
リカードは食糧費が安くなれば賃金を節約して資本蓄積に向かわせるから、
というそれぞれの理由です。
次にリカードは、生産物から得られる利益は、地代、賃金、利潤、の三分野にどのように分配されるかを考えました。
結論:投下労働価値説を選択
リカードにおいては、労働力そのものが、その製品の価値になります。
労働力そのものは賃金とはまた別のものです。
ただしリカードのこの考え方は価値と自然価格を混同しているという批判があります。
結論:差額地代説
人口を養えるほどの食料を生産するときに、逆算して地代も決定される。
要点は、いちばん生産性のいい土地から使われるとこ。
なぜならコストが安いから。
生産性のいい土地がすべて使われ尽くして初めて、生産性の悪い土地も使われるようになる。
コストが高い土地は利益が少なく、コストの低い土地は利益が大きい。
いちばん生産性の悪い土地は地代もゼロであるからして、逆算して良い土地の地代も決まる。
これも後で批判されます。
結論:賃金の生存費説
賃金も自然賃金と呼ばれる価格に近付きます。
最低限の生きていける賃金はもらえないと、そもそも労働者は働けません。
(やはり現代社会では異論がありますが、先に進みましょう)
結論:収穫逓減の法則。頑張りすぎると逆に利益が薄くなっていく。
(リカードはあくまで農地使用を念頭においてますが)
なぜなら生産性の悪い土地まで使うようになるからです。
結論?:最終的には利潤は消滅する。
生産性の悪い土地まで使うようになった結果、ついには利益がゼロの地点に達します。
(現代の価値観からは突っ込みどころがあるかもしれませんが、とりあえず先に行きます)
次でミルが反論します。
リカードの分配の話は、現代人の私がみるとツッコミどころが多いように見えます。
結論:(セーの法則)生産したものは、どのみちどこかで売れる。
のちにケインズによって論破されるアレです。
しかし同時代ではマルサスに早くも論破されます。
いわく「供給が増えても必ずしも消費されない。消費できるだけのゆとりを持っている人々がどれだけいるかによって、消費は制限されるから」
マルサスの復讐です。(マルサスはケインズの先駆者とまで言われることがあります)
結論:利潤は賃金が低下する以外では発生しない。そして賃金は最低限必要な額より低下することはない。したがって外国産の安い食料を輸入すれば利潤が上がる。貿易は善だ。
重ねてリカードは自由貿易派です。
しかしこの結論からすぐ後にマルクスがでてきます。
結論:比較優位の原則。貿易は善だ。
ポルトガルのぶどう酒とイングランドの毛織物が出てくるアレです。
何度も言いますがリカードは自由貿易派です。
結論:税金は贅沢品と地代に課税しろ。それ以外の税は必ず経済の悪化をもたらす。
贅沢品はともかく地代に課税する理由は、
上述の生産性の悪い土地も使われだす、
という差額地代論の部分で作物価格が決定するので、
地代に税をかけても経済の悪化にはつながりにくい、
という論理です。
今から考えると???という論理が多そうに見えます。
いやあ、それにしても、後代の経済学者との絡みが多いこと。
そしてこの絡みがあるせいで、
歴史として見ることによる経済学の理解が早くなることの説明になります。
リカード理論の多くは後世の経済学者によって反論され改良されます。
しかしそれにはリカード理論を知らなくてはいけません。
4:ジョン・スチュアート・ミル
ミルの時代になると資本と労働の対立、つまり労働問題が発生してきます。
結論:最終的には利潤が消滅するはウソ。
腹を満たしたら、次は社会が豊かになる方向にシフトしていくだけ。
結論:原理主義的な資本主義は規制せよ。環境も守れ。労働者の福祉も考えろ。
ようやく労働者を守れとか、おかしな商売を規制するとかいう発想が出てきました。
結論:でも共産主義はなんか違う。
主流経済学と共産主義との対立が始まりました。
結論だけ言うとミルはこんだけですが、現代社会の原型が出来上がったのがこの辺りだと思います。ミルはどちらかというと民主主義の説明で出てくる人ですね。
今日はここまで・・・・大変だこれ
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