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ラストスパイ(著:ボブ・ライス)【読書紹介のためだけに永年潜み続ける。人呼んで草。忍ぶ者ども、その終わりを知らず】

どこかアメリカの田舎町。
少年はクラスメイトに揶揄されることに耐えられず、学校を逃げ出した。
街の外にいくと境界線があって、ロシア兵が少年を慰めてくれる。

そう、ここはソ連の真ん中に作られた“アメリカンタウン”
後にスリーパースパイとして送り込まれる子どもたちが、完璧なアメリカのミッドタウンでの生活を経験するために作られた“偽の”街なのだ。

大人になった彼らは、勇躍、敵地に送りこまれ、
その時が来るまで、長い潜伏生活を続ける。
計画通り、彼らのアイデンティティは完全にアメリカの若者のそれで、
ロシア要素は何もない。偽装は完璧のはずだった。

だがある日、祖国は崩壊した。

命令は来なくなったはずだった。

だが命令は来た。
それもおかしなことに、明らかにビジネス支援のためと思われる任務命令がやってくる。
主人公は(学校を逃げ出しかけた少年の成長した姿)
仲間の誰かが裏切り、組織を勝手に利用していると考える。

祖国が自分たちのことを忘れ去り、
誰も正体を知らない中で、
主人公の孤独な戦いがはじまる。

***
ボブ・ライスが冷戦終了した90年代初頭に出してきたスパイミステリ。
勝手にジョンルカレだと思ってましたが。
ボブライスでした。

マイナーな作品すぎて、検索してもほぼ何も出てこない。
ボブライスもようわからんけ。
なんだったらチャーハンの一種として出てきても気づかん。

でもワクワクしながら読んだんだけどな。
なんか、この孤独に戦わなければならない、誰も知らない、
誰にも助けを求められない、という設定が魅力的なんだ。

ロシア大使館に話を持ち込んでも、まったく信用されないし。
誰も引き継いでおらんのや。
といってアメリカ情報部に持ち込むわけにもいかない。
いや、そもそも信用してくれるかどうか。

主人公が子どものころから好きだった美少女は、大人になってやっぱり美女なんだけど、自分の疑念を信じてくれない。
それどころか敵に回ってしまう。(元クラスメイトなのだ)

一方、適当に付き合っていたアメリカ娘は、彼女なりに真摯に話を聞いてくれる。
「うそ、あなたって売国奴だったの?ローゼンバーグ夫妻とかハリーフィッシャーみたいな?」
「僕はロシア人なんだ」

図書館で借りた本なので、再読するわけにもいかず、
アメリカに潜り込んでいたソ連スパイは私が知っているだけの人物です。
ううん。
いや、まあ、面白かったから紹介するかやはり。

*****
ただ「スパニッシュプリズナー」みたいに、自分以外のすべてが偽の世界になって、自分の記憶すら怪しくなる、とまではいきませんでした。
そこはスリーパースパイとして訓練されています。
自分に嘘はつけないのが兵士です。現実を見失うことはないのだ。

やっぱりスリーパースパイ、アクション映画のヒーローとしても活躍できます。本来の仕事もそんな感じですしね。

世界はおしなべて平和な時代に向かいつつあった一方で、知られざる戦いがあったというのが、舞台を映えさせる良い雰囲気ですね。

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