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文章のために読み始めた小説なのに

文章が上手くなりたいなら、小説を読もう。そんな話をまたもや小耳にはさんだものだから、うっかり小説が読みたくなってしまった。

いやいや、小説はそういった気持ちで読むものじゃないとは思うし、小説を読んだからといって、必ず文章が上手くなるとも思えない。しかし私の心はすっかりと小説気分になっていて、それは単に小説が読みたい気持ちが後押しされただけなのかもしれない、なんてことを考えていた。

読んでいるのは、三浦しをんさんの『ののはな通信』

やる気のない本屋さんで、たまたま見かけて気になった一冊。売れ筋の本はあんまり置いていないのに、なぜかこの文庫だけは大量にあったもので、ついつい気になって手に取ってしまった。

往復書簡の話が大好きで、これはまさに私の大好物なものだったのだけど、あらすじを詳しく知ることも無く読み始めたものだから、物語の展開に驚いてしまった。そうか、そう来たか。

手紙だけのやり取りなのに、ののとはなの二人の思いがひしひしと伝わってくるようで、第一章から息苦しさを覚えてしまった。まだ第二章に入ったばかりで、これから先の展開はまったく読めないのだけど、この二人がどのように成長していくのかが気になって、夜更かしをしてでも読み進めたい気持ち。しかし年々、夜更かしができない体になっていて、これが人としての成長なのね、それを人は老化と呼ぶんだね、なんて思いながら本を閉じた。

残り半分。ゆっくりと焦らずに読み進めたい。そして、小説を読みたいと思ったのは文章が上手くなるためだという話は、すっかりと忘れ去られているのであった。そんなもんだ。

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