「コンサルタント」という言葉によって首を絞められている若手社員に伝えたい話
今の会社で働き始めて2年と半年が経った頃の話。
これまで8人いた社員が、一気に4人になった。それぞれやりたいことを見出して、私たちから離れていった。そして、それと同時に、私は社長の次に年長の社員となった。
社長と私の経験値と力量は雲泥の差。社長は今の事業を15年近く経験しており、まさに「コンサルタント」となっていた。一方私は、まだお客さんに見積を出して「新しいことをやっていきましょう!」みたいなことさえ話したことのない、ひよっこそのものだった。私以外に残ったメンバーは、2人いた。両方とも年下だった。
「年長さんらしくしないと」「そろそろ、コンサルタントとしてしっかりしないと」
この気持ちによって、楽しく仕事を進められているのに、同時に不安も醸成されていった。でも、仕事の期限は容赦なく迫っていた。
まさに当時の私は、猪突猛進で、暴走列車みたいな感じだった。
そんな時、ある社長さんとお話しすることがあった。取引先の社長で、1年目のころからお世話になっている。しかも、お会いした1か月前くらいまで、毎月のように会って、カフェでパソコンを向き合わせながら社長と(ほぼ喧嘩みたいな)会議をしていた。笑顔に嘘がなく、言葉一つ一つに力強さと優しさがこもっている方だ。
彼と打ち合わせをした後、ちょうど私は帰省を予定していた。そのため、社長が帰路で使う上越新幹線に私も乗って、帰りの1時間ほど話をしていた。その時、ついに本音が出てしまった。会社の状況、年長さんでいることのプレッシャー、社長と私の力量の違いに対する劣等感と焦り。抑えていた気持ちが溢れていた。社長はただ話を聞いているだけだった。
そんな時、社長から言われた言葉は今でも忘れられない。
「今、はたけやまさんが私のコンサルタントとして何かアドバイスしてきても、『経営をしたことのない若造が』と思って、仕事は一緒にしないと思うよ。今は、学ぶ時期なんだよ。はたけやまさんの会社の社員は、結果を追い求めすぎ!まだ社会人になって3年目くらいでしょ?今は修業期間なんだよ。30までは。修行するにあたって、”社長”といういいお手本がいるじゃない!今はその社長の話の聞き方は、話のまとめ方を学ぶ時期。だから焦る必要はないんだよ。学べるっていいことだよ!」
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私の状況に対して、「大変だね」と片してしまう人はたくさんいると思う。しかし、社長はそんな「若造」に対して真剣に向き合い、今の私の位置を正してくれた。背伸びはある程度必要だけど、背伸びをしすぎて自分の首を絞めてしまうのは違う。
コンサルタント
確かに、客観的な立場でアドバイスをするプロかもしれないけど、そんなコンサルタントも修業期間があってなれる。修業期間で「コンサルタントなんだ」という気持ちをいかに抑えて、「人から学ぶ」ことを怠らないかによって、コンサルタントになれるかが決まってくるような気がした。
そんな社長は、卵農家を経営している。おいしい卵をいつも棒業務スーパーで買って食べている。卵を食べるたびに社長の顔と言葉を思い出す。私は毎日卵を食べるため、毎日思い出して自分を律している。今はまだひよっこだけど、いつかはコンサルタントになって、社長に恩返しをしたいと思っている。
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