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私が私を表現できるようになるまで

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怖くて自分を押し殺していた私が、表現を届けるようになるまでの葛藤と気づきの物語。
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#エッセイ

【ep.1】言えないのは、優しさか弱さか

【ep.1】言えないのは、優しさか弱さか

世界が怖かった。
ただ "ここにいる" というだけで責められているような気がして。

だから誰かにとって役に立つ存在になれるように
誰も傷つけず害にならない存在であれるように必死だった。

少しでも "ここにいていいんだ" と安心したかったから。



幼稚園生の頃、風邪を引いてお風呂に入れなかった次の日。父が気合いを入れて髪を洗ってくれた。

「どうだ?気持ちいいだろう?」と嬉しそうに聞く父に

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【ep.2】届けたかったノクターン

【ep.2】届けたかったノクターン

私は普段、あまり後悔することがない。
…というより、しないようにしている。

それはきっと、後悔してもどうしようもないことがあると、痛いくらい知っているからなのかもしれない。



私には、感じられる情報量が人より多い(のかも)。
表情の変化、声のトーン、助詞一つの使い方でさえも、その人の本音が見える気がして。

今より敏感だった子どもの頃は、自分が伝えるときもそういった "ノンバーバル" な伝

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【ep.3】地獄の日々に希望をくれたのは

【ep.3】地獄の日々に希望をくれたのは

中3の秋。母のお葬式で、同級生の女の子が手紙をくれた。

「私もお父さんを亡くして…でも、もえかちゃんはお母さんだからもっと悲しいよね」と綴られた温かい手紙。

嬉しかったのはもちろんだけど、私にはとても衝撃的だった。その子は本当に明るくていつも大きな声で笑う人で。そんな悲しみを背負っているなんて、全然気づかなかったから。

私も、あの子みたいにつらくても笑っている人になりたい。

その姿が無性に

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【ep.4】歌よ、導いて

【ep.4】歌よ、導いて

もう、なんかどうしようもなくて。
高3の12月。寒空の下、2階にある自分の部屋の窓を開けて、不安定な窓枠に腰掛けた。

そうすれば、この逃げ場のない苦しさも、消えたくて仕方ない気持ちも、怖さに負けてくれると思ったのに…。

このまま落ちてしまった方が、自由になれるんじゃないか。
清々しささえある、初めての感覚。

未練も怖さもスッとなくなって、「あぁこのまま終わるのかな」と思えてしまったあの夜。私

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