さとう代謝

バイオテクノロジー系研究者

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最近の記事

国産の不活化ワクチンの治験データ

KMバイオロジクスが開発中の新型コロナウイルスワクチンの不活化ワクチンKD-414の第2/3相試験の査読前論文が公開された。(プレスリリースとして2022年7月6日に出されたものについての論文です。) Preliminary report: Safety and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine, KD-414, in healthy adult participants: a non-randomized

    • ボストン大学が致死率の高いオミクロン株を作り出したという噂

      今週、タブロイド紙のDaily Mailがボストン大学のとある研究を取り上げたことで、世界中の一部SNS界隈で「ボストン大学が新しい致死率の高い新型コロナウイルス株を開発した」という噂が話題になりましたが、ボストン大学はセンセーショナルに扱うために研究内容の一部を切り取った誤解を招く不正確な報道であると反論声明を出しています。 Daily Mailの記事 Boston University CREATES new Covid strain that has an 80% k

      • コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種の影響

        インフルエンザワクチン接種の季節が近づいてきたので、新型コロナウイルスワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種した場合の影響を考える材料となる研究を紹介。 (厚生労働省の審議会では同時接種による影響は無いと判断していますが、これは最後に記載します。) (査読前論文)Immunogenicity and safety of coadministration of COVID-19 and influenza vaccination among healthcare work

        • 新型コロナウイルスのスパイクタンパク質はヒト細胞の核内に入る

          新型コロナウイルスが出現してから3年近く経っても新しい&興味深い知見がまだ出てきている。 紹介する論文は査読前の段階のものであるが、 SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を作る遺伝子とスパイクタンパク質は一緒に、感染した細胞の核の中に移行する、という報告である。 (査読前)Nuclear translocation of spike mRNA and protein is a novel pathogenic feature of SARS-CoV-2. https://

        国産の不活化ワクチンの治験データ

          オミクロン株対応ワクチンはどれがいいのか

          ファイザーとモデルナの両社とも2種類のオミクロン株対応ワクチンの薬事承認申請を行ったので、検討材料の一つとして査読前の論文ですがモデルナ社のマウスでの実験を紹介します。(両社ともBA.5株対応ワクチンのヒトでの治験は進行中でまだ比較できないので) オミクロン株対応ワクチンとは、武漢株+オミクロンBA.1株の二価ワクチン、または、武漢株+オミクロンBA.4/BA.5株の二価ワクチン、の2種類のことです。(これまでは武漢株をベースにした一価ワクチン) (査読前論文)Bivale

          オミクロン株対応ワクチンはどれがいいのか

          新型コロナウイルスは変異するたびに弱毒化するのか(BA.4株、BA.5株について)

          【2022.07.15】BA.4株およびBA.5株についての研究データが更新されたので改訂しました。 2022年5月末現在、日本で流行している主要な変異株はオミクロン株のBA.1系統からBA.2系統へと変遷している。世界ではBA.2.12.1株やBA.4株、BA.5株の流行が拡大しており、日本でも市中感染でBA.2.12.1株やBA.5株が検出されたことから、今後、BA.2.12.1株やBA.4株、BA.5株の感染が広がることが予想される。 [2022.07.15改訂&追

          新型コロナウイルスは変異するたびに弱毒化するのか(BA.4株、BA.5株について)

          新型コロナウイルスの各社ワクチンの比較

          近日中に日本でもNovavaxの新型コロナウイルスワクチンが承認されそうという情報があるので、査読前の論文ではあるが一つ紹介する。 ModernaワクチンmRNA-1273、Pfizer/BioNTechワクチンBNT162b2、 Janssen (Johnson & Johnson) ワクチンAd26.COV2.S、NovavaxワクチンNVX-CoV2373によって誘導される免疫応答の違いを比較している。 つまり、mRNAベースワクチン、ウイルスベクターベースワクチン、組

          新型コロナウイルスの各社ワクチンの比較

          COVID-19発症に必要な新型コロナウイルス量

          イギリスで実施された、ヒトに新型コロナウイルスを故意に感染させる研究の第1弾の結果が公表された。 " Safety, tolerability and viral kinetics during SARS-CoV-2 human challenge in young adults " 実験のデザインは、今後のワクチンの効果試験や治療薬の効果試験などで感染者を用意する際などで、「重傷を引き起こさずに参加者の50%以上が感染するために必要なウイルス曝露量を調べる」ことが主な目的で

          COVID-19発症に必要な新型コロナウイルス量

          新型コロナウイルスワクチン接種3回目ブースター接種

          モデルナ製新型コロナウイルスmRNAワクチン(mRNA-1273)の3回目ブースター接種の経過観察を記録する。(1回目接種時の経過はコチラ、2回目接種時の経過はコチラ) 私の私の健康上の情報を再掲。BMIが22~23の普通体重、基礎疾患の自覚症状なし。アレルギーは花粉、ホコリとダニ、とある薬に対して発疹の既往歴あり。インフルエンザ不活化ワクチンの皮下接種に対する副反応は接種後2~3日は接種部位にごくわずかな違和感がある程度。 2回目接種から7カ月が経過していた。 交互接種

          新型コロナウイルスワクチン接種3回目ブースター接種

          3回目以降の新型コロナウイルスワクチン接種

          3回目以降のワクチン接種に関するデータが集まりだしているので情報をまとめる。(2022年2月時点の情報で、査読前の情報を含む) 3回目接種の有効性については日経サイエンスの記事がよくまとまっている。 ①3回目以降のワクチン接種によって誘導される抗体量 イスラエルでのmRNAワクチンの接種データから、時間経過とともに低下した抗受容体結合ドメインIgG抗体と中和抗体ともに4回目接種によって3回目接種後のピークレベルまで量が回復した。 (査読前論文)"4th Dose COVI

          3回目以降の新型コロナウイルスワクチン接種

          モデルナ製新型コロナウイルスワクチンmRNA-1273接種2回目

          モデルナ製新型コロナウイルスmRNAワクチン(mRNA-1273)を職域接種の2回目の経過観察を記録する。(1回目接種時の経過はコチラ) 私の私の健康上の情報を再掲。BMIが22~23の普通体重、基礎疾患の自覚症状なし。アレルギーは花粉、ホコリとダニ、とある薬に対して発疹の既往歴あり。インフルエンザ不活化ワクチンの皮下接種に対する副反応は接種後2~3日は接種部位にごくわずかな違和感がある程度。 接種当日。接種後の待機時間は、薬の発疹歴があっが、1回目接種時に体調変化がなか

          モデルナ製新型コロナウイルスワクチンmRNA-1273接種2回目

          デマ「CDCがPCR検査を廃止する」

          --------------------------------------------------------------------------------------(2021.08.07追記) CDCが今回問題になっているアナウンスについて情報を更新(2021.08.02)していました。"

          デマ「CDCがPCR検査を廃止する」

          モデルナ製新型コロナウイルスワクチンmRNA-1273接種1回目

          モデルナ製新型コロナウイルスmRNAワクチン(mRNA-1273)を職域接種で打ったので、接種1回目の経過観察を記録する。 ワクチン中のmRNAの構造に関してはBioNTech/ Pfizerの他記事が分かりやすいので、説明は省く(BioNTech/ PfizerとModernaのmRNA構造は5‘キャップ配列が異なるが主要配列は同一と言われている)。ワクチン中のmRNA量はModerna(0.1mg)がBioNTech/ Pfizer(0.03mg)よりも多く、Modern

          モデルナ製新型コロナウイルスワクチンmRNA-1273接種1回目

          不織布マスクの再使用

          不織布マスクを洗濯しての再使用も大丈夫なんでしょ、と言われて絶句したのでもうそんなことをしている人は少数派だとは思いながらも書いてみる。聞けば、マスク騒動の折に不織布マスクの再使用方法を紹介していた、と。あれは、あくまで緊急手段であり、マスクしないよりかはマシ程度のものを情報更新もせずにリテラシーの低いことと言ったら。 ①不織布マスクのメカニズム                     不織布マスクは細かな網目で異物の通過を阻止していると思っている人向けに基礎情報を。市販さ

          不織布マスクの再使用

          PCR検査のサイクル数(Ct)

          しばらくPCR検査に関するトンデモ論が鳴りを潜めていたと思っていましたが、今度はサイクル数(Ct)に関するデマが広がっているようです。よくもまぁ次から次へとデマを思いつくもんだと感心します。 目にしたデマは、                          ①日本のサイクル数は40~45と多いので、これを35に下げれば感染者はゼロになる                               ②サイクル数35以上で検査すると、偽陽性ばかりである。 どれも間違いです。

          PCR検査のサイクル数(Ct)

          新型コロナウイルス検査に必要なウイルス量

          新型コロナウイルスの検査でどのくらいのウイルス量を採取しないと陽性にならないかを大雑把に計算してみる。 まずは、ゴールドスタンダードのラボベースのreal time RT-PCR法で考える。手引きは国立感染症研究所の「2019-nCoV (新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」と「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」を用いる。RNA抽出キットはこのマニュアルでも使われるQiagen社のQIAamp Viral RNA Miniキットとする。

          新型コロナウイルス検査に必要なウイルス量