オミクロン株対応ワクチンはどれがいいのか

ファイザーとモデルナの両社とも2種類のオミクロン株対応ワクチンの薬事承認申請を行ったので、検討材料の一つとして査読前の論文ですがモデルナ社のマウスでの実験を紹介します。(両社ともBA.5株対応ワクチンのヒトでの治験は進行中でまだ比較できないので)
オミクロン株対応ワクチンとは、武漢株+オミクロンBA.1株の二価ワクチン、または、武漢株+オミクロンBA.4/BA.5株の二価ワクチン、の2種類のことです。(これまでは武漢株をベースにした一価ワクチン)

(査読前論文)Bivalent SARS-CoV-2 mRNA vaccines increase breadth of neutralization and protect against the BA.5 Omicron variant
気になったポイントを紹介すると、

ブースター接種(武漢株ベースの一価ワクチンを2回接種後に、各オミクロン対応の二価ワクチンを接種)の結果は、
・BA.1対応ワクチンを打つと、BA.1に対する中和抗体価は308、BA.5に対する中和抗体価は174
・BA.5対応ワクチンを打つと、BA.1に対する中和抗体価は186、BA.5に対する中和抗体価は267
ということで、数値を比較すると、BA.5対応ワクチンを打った方がBA.5株対策には良いように思われますが、

ブースター接種後にBA.5株を感染させた結果では、
・上気道や肺でのBA.5ウイルスRNAレベルは、BA.1対応ワクチンでもBA.5対応ワクチンでも同様に減少。
・サイトカインやケモカインといった炎症にかかわる免疫シグナル伝達分子も同様に低いか、検出されなかった。
つまり、BA.1対応ワクチンを打っても、BA.5感染による肺炎を抑える効果はBA.5対応ワクチンとあまり変わらない(BA.1対応ワクチンでもBA.5肺炎に対する効果がある)ことになりました。

これらのことから、私が当初予想していたよりもBA.5感染による重症化に対する有効性は2種類の間に差が小さいかもしれない、と感じました。

また、BA.2.75株(通称ケンタウロス株)に対する中和抗体もBA.1対応ワクチンでもBA.5対応ワクチンでも同程度誘導されていたので、今後BA.2.75株が流行したとしても2種類のワクチンの効果は同程度になるかもしれません。

以上が論文の内容です。あくまでマウスでの実験であり、必ずしもヒトでの結果と一致するかはまだ分かりませんが、これまでのワクチン研究でも同様に試験されてきたので、この報告もある程度信頼性はあると思います。

多価ワクチンは必ずしも一致していることが重要ではなく、
武漢株+ベータ株の二価ワクチンをブースター接種すると、ベータ株の後に登場したデルタ株やオミクロン株に対する中和抗体誘導が武漢株の一価ワクチンのブースター接種よりも大きかった、という報告(査読前)もあるように、オリジナルの武漢株と抗原性が離れた変異株が混じった多価ワクチンであることが重要で、が免疫の幅が広がることが期待されるようです。

ただ今後の変異株の抗原性のことを考えると、今のところBA.1系統の変異株で注意が必要と思われている変異株は知りませんが、BA.2.75系統やBA.5系統の変異株では注意が必要な変異株が報告されていますので、BA.5対応ワクチンの方が将来流行する変異株に対して抗原性がまだ近く、BA.1対応ワクチンよりか多少は効果的かもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?