不知火のメロー
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『七月のランデヴー』
監督:ジャック・ベッケル
ダニエル・ジェランの冒険が決まったときに仲間が逡巡するシーンが良い。スポ根的な、それでも俺たちは挑戦するみたいなノリに巻き込まれていく嫌さもあるのだが、ジェラン自身がその愚かさを自覚している感じがする。ラストは男女が再び結ばれるメロドラマを躍動感たっぷりに描きながらも、静かに首を振るジェランとクリスティーヌというもう1組のカップルを捉えた切り返しの切なさがしっかりある。
『木と市長と文化会館/または七つの偶然』
監督:エリック・ロメール
右派と左派に分かれるほうが自らの立場を示しやすいのは事実だが、その間にある妥協点を探すことも大事ではある。市長の唱える理論は机上の空論臭がかなりしており、それを論破する教師の娘のシーンが痛快。市長も一応相手の意見はちゃんと聞くので、悪い人ではないのだが。最後の記者への誘い方が滑らかすぎて笑った。歴史は理論立って起承転結がはっきりしているが、実際に時間が流れている間は偶発
『ショーイング・アップ』
監督:ケリー・ライカート
めちゃめちゃよかった。時間の流れ方が豊か。芸術学校の風景を淡々と、でも寄り添って映し出す。出口のマットがモフモフすぎるだろ、と思っていたらデカ犬だった。誰に対しても時間は常にゆったり流れていて、だからそれぞれの生活や仕事をよりダイレクトに感じることができる。この監督の描く時間には、こちらの好奇心を誘発する魅力もある。『オールド・ジョイ』の映画内で流れていた時間が、取り返
『エターナル・サンシャイン』
監督:ミシェル・ゴンドリー
バイト先の(好きな)人におすすめされたので見た。終わりがわかっていても、その細部を楽しむ、みたいなメッセージの映画ってどこかで見たことあるな。でも記憶が徐々に消されていく表現が面白かった。最後はむしろ車の中で和解してそのまま突っ走って欲しかった。2回も2人が一旦別れるのが無駄すぎる気がした。「忘却は前進である」という格言が違っているようで実は正しい。「忘却もまた前進で
『真夜中のカーボーイ』
監督:ジョン・シュレシンジャー
『オールド・ジョイ』や『ファースト・カウ』の元ネタのような映画。やっぱり泣いた。カウボーイはマチズモの象徴であり、その幻想を抱えたジョーがニューヨークに行く。しかし社会の抑圧が常にあり、その中でダスティン・ホフマンとの結びつきがある。最後のバス、果たして死者を終点まで乗せることは正解なのか、周りからの視線に晒されて居心地が悪そうなジョーの姿が辛い。カウボーイハット
『殺人地帯 U・S・A』
監督:サミュエル・フラー
単純な復讐劇の序盤が眠かったのに、後半につれてどんどん面白い。特にラストシークエンス、プールの格闘の斬新さからの移動ショットで父親が死んだ路地裏にたどり着くところが完璧。潰えたかに見えた主人公の復讐心がヒロインに受け継がれていく展開。序盤の金庫を見る視線はのちの金庫破りにつながっていた。ヒロインが言う、キスのときに死ぬみたいなセリフはまさにフラー節というか。