『ショーイング・アップ』

監督:ケリー・ライカート

めちゃめちゃよかった。時間の流れ方が豊か。芸術学校の風景を淡々と、でも寄り添って映し出す。出口のマットがモフモフすぎるだろ、と思っていたらデカ犬だった。誰に対しても時間は常にゆったり流れていて、だからそれぞれの生活や仕事をよりダイレクトに感じることができる。この監督の描く時間には、こちらの好奇心を誘発する魅力もある。『オールド・ジョイ』の映画内で流れていた時間が、取り返しのつかない何かを暗示していたように、この映画でも人々の間に流れる時間に常に惹かれる。最もグッときたのが、父親が個展を訪れるシーン。父親が出てくるのはここともう1シーンしかない。父親が彼女の作品を一つ一つじっくり見るシーンをしっかり撮っている。その時間から、映画で描かれていない親子関係、父のかつての芸術家としての生き方が浮かび上がってくる。離婚した母親と話すシーンも、ちょっとした会話で元夫婦であることがわかってしまう。最後は少し劇的なことが起こるが、それもまた日常に還元される。穴を掘っていた兄が鳥を空に放つのもハッピーエンドといえばそうなのかもしれない。パンの耳は残すタイプの人なんだな。ジョーと主人公がまさに鏡像関係、といった感じで、2人とも監督自身でもあるのかもしれない。最後はうまく付き合えるかどうか。

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